放任主義の子育てとネグレクトはどこが違う?成功させる秘訣5つ
子供の育て方にはさまざまな考え方があり、「放任主義の子育て」を選択するパパやママも多くいます。周りからは「子供をほったらかしにしている」とネガティブな評価を受けることもある育児方法ですが、子供の自立心を養い、子供の可能性を広げられるメリットも秘めています。
ただし親の考え方や子供への対応が間違っていれば、ネグレクトに進展して子供の心身にダメージを与えてしまいかねない大きなリスクがあるという事実も否定できません。
今回は放任主義の子育てとネグレクトの違いを説明しながら、放任主義の子育てを成功させるポイントなどについてご紹介していきます。
放任主義の意味とは?ただのほったらかしではない!
「放任主義」という言葉の意味をただのほったらかしと勘違いしている人が多いのですが、辞書などで調べると次の3つの主義のことと定義されています。
1自由にやらせて干渉しない
生まれたばかりの子供は、「何をしていいのか」や「何をしてはいけないのか」という手段や方法を選ぶ判断能力を持ちません。
例えばお友達におもちゃを貸すか貸さないか、あるいは進学して勉強するか勉強しないかなどです。
こういった選択を子供が自由に行い親が干渉しないことは、「放任主義」の一つの形態です。私たちは人生を生きる上でさまざまな選択を迫られますが、子供は経験が足りずに結果の予測が出来ず、自分の将来を見越した判断ができないため、ある程度の年齢になるまで親が子供の替わりに選択を替わる必要があります。親が代行を務める期間が長ければ「過保護」、早い時期から子供に選択をゆだねると「放任」とみなされることが多いです。
2善悪を厳密に区別していない
人間の行動や道徳などの起源や意味などを研究する倫理学では、放任主義を「善」「悪」をはっきりと区別しない、寛大な捉え方としています。
有名なスコットランドの思想家アダム・スミスは、「各人が自由に経済活動を行うことで、計画的な統制を行うよりも調和がとれる」という自由放任主義を主張し、18~19世紀のイギリスで流行しました。
この、倫理学上の自由放任主義の考えを元に子育てを行う親や、モンテッソーリ教育の園に入園させる親も多いのですが、「子供の場合には問題となることも多い」といった意見もあり、賛否両論です。
3自主的な活動を大切にしている
自分らしく生きるためには、選ばなくてはいけないことがたくさんあります。「自分らしさ」を追求することは良いことですが、親はつい子供の自主的な選択に干渉をしてしまいがち。こういった干渉をせずに早いうちから子供に自主的な選択をゆだねることも、「放任主義」の一つの形態です。
例えば、多くの料理の中から食べたいものを選ばせる、自分の好みのファッションを自由に選ばせる、自分のなりたい職業を自由に選ばせるなどです。
子供は後先考えずに行動し、失敗をしてしまうリスクもありますが、自主的な活動は失敗から学ぶところは多くあります。早いうちから子供に自主的な活動をさせることは、一見「親の無責任」と捉えられがちなのですが、子供が責任感を持って自分自身を活かす実力を養うために、とても有効な手段でもあります。
ネグレクトの意味とは?放任主義と一緒にしないで
ネグレクトの意味は、社会的に保護が必要な乳幼児や高齢者などに対し、親などの保護者が養育義務を果たさずに放任することです。
放任主義の子育ては、子供自身が自ら学び経験し判断し身につけるというメリットがある反面、親の捉え方次第で手出し口出しをしないため、子供が健康や健全な生活環境を得られず、規範意識を身につけられない恐れがあるというデメリットがあります。
親の誤った捉え方でデメリットばかりが強くなると、子供は心身ともに健全な成長が出来ません。健康を害したり、お友達とトラブルが多く不登校になったりするなど、社会に順応できずに悩みを抱え込んでしまうことも…。放任主義の保護者は、「親が放任主義のつもりでネグレクトを行っていることも多い」という点を、こちらでご紹介する5種類のネグレクトの事例と共にしっかりと理解しておきましょう。
1一般的ネグレクト
2医療的ネグレクト
- 子供が高熱を出しても、必要な薬を飲まない
- 子供が感染症にかかっても、病院へ連れていかない
- 先天的な疾患があるのに、積極的な治療をしない など
3教育的ネグレクト
4情緒的ネグレクト
- 子供が話しかけても、返事や相手をしない
- 子供への情緒面のケアを行わない など
5保健ネグレクト
- 子供が必要な予防接種を受けない
- 定期的な健康診断を受けない など
これはどっち?放任主義orネグレクト
放任主義の子育ては親が子供の将来を考えてあえて選んでいますが、ネグレクトの場合は親が問題や病気を抱えていて子供より自分主体に考えて行っています。放任主義であってもネグレクトであっても、親の心が子供に向かい合っていないのは、子供の将来の人格形成において重大な悪影響をもたらします。放任主義とネグレクトをしっかり見分けましょう。
Q1発熱してグッタリしているが病院に連れて行かない
これはネグレクトに該当します。子供が高熱を出してぐったりしている状況は、明らかな病気を示しています。早急に医師の診断を受けて治療を開始しなくては、子供の命にかかわりますから、きちんとした治療をして子供の命を守る責任と義務が親にはあります。
長年の親としての経験で「これぐらいであれば問題はない」という判断ができる時もありますが、自分で判断が出来ない、いつもと違って不安がある、周囲から通院すべきだとアドバイスを受けたなどの場合は、一度病院に電話をして受診の相談をし、指示を受けて行動をするなど、親の責任を果たす必要があります。
他にも、湿疹が全身に広がっている、かゆみで体を掻くため血だらけ、痛みでうずくまっている、学校の定期健診で病気の疑いを指摘されたなど、健康とは言えない状況の場合は、病院につれて行かなければなりません。
Q2子供が寂しがって問題を起こすのに話しをしない
これはネグレクトに該当します。親の愛情は子供の成長にとって必要不可欠で、子供の情緒的な発達をサポートすることは親の義務の一つです。子供が親の愛情を求めて、親の気を引こうと学校で物を壊す、お友達に乱暴をするなどの問題を起こしている場合には、子供の心に明らかな情緒面の障害がでています。
親が「自分で解決する力を身に着けてもらいたい」と考えて放置しているのだとしても、育児義務を果たしているとはいえません。子供の心には深い傷が残り、人格形成に悪影響を及ぼす恐れがあります。
Q3問題行動があり学校を休ませ部屋に閉じ込めて反省させる
これはネグレクトに該当します。子供への躾にはさまざまな考え方があり、各家庭の躾の良し悪しは線引きが難しいのですが、子供には教育を受ける権利と、意志に反して身体を拘束されないという、人間として生きる権利があります。
子供がした悪いことを戒めようと子供に罰を与えるにしても、こういった基本的な権利を侵害してしまうことは、子供を人間ではなく親の所有物とみなす行為であり、親としての最大の育児義務の放棄にあたります。
他にも、正当な理由なしに親の都合で自由な外出を禁止する、行動を規制するなどもネグレクトに当たります。
Q4お風呂に入らない子をそのままにして皮膚病になった
これはネグレクトに該当します。子供は自分の身体を衛生的に保つことができませんので、子供を定期的に風呂に入れて身体を清潔に保ってあげることは親の義務の一つ。体を清潔に保てなければ、子供の身体が皮膚炎にかかったり、最悪の場合は感染症などにかかったりして、心身に重大なダメージを与えかねません。
子供の自立心を養うことは大事ですが、子供の身体に危険が及ぶことに関しては、子供が自分でできるようになる年齢に達するまで、親が面倒を見て子供を守っていく必要があります。
Q5塾には入れるが成績に関しては何も言わない
これはネグレクトとはいえず、放任主義に該当します。子供には教育を受ける権利がありますから、親として子供を塾に入れて勉強する環境を整えてあげることは素晴らしいことです。ここで「良い成績を出しなさい」と発破をかけてやりたい気持ちはわかりますが、発破をかけることで子供の心がプレッシャーに押しつぶされ、やる気を奪ってしまうことも良くあります。
こういった事態を避けるために、親があえて成績について評価しないことは、子供の自主的な成長を見守っている態度であって、義務を放棄しているとはいえません。
放任主義はほったらかしやネグレクトではない!
「放任主義」と聞くと、「子供をほったらかしにしている」「親としての義務を放棄している」とマイナスイメージを持たれがちですが、放任主義は決して親の育児義務や責任を果たさないのではなく、子供をサポートしながら、子供自身の判断能力やスキルを体得させようとする育児方法です。
有名大学の学生には放任主義の親に育てられた子が多い
面白いことに、一流と呼ばれる大学で学ぶ学生の9割は、放任主義の親に育てられたと回答しているというアンケート結果があります。東大生に聞いても「勉強しろと言われたことがない」という学生が多いことは、よく知られている話ですね。
親になると子供の将来を心配するあまり、親は過保護になってしまいがちですね。ところが、必要以上に子供の勉強に口出しをする教育パパ・教育ママの家庭で育った子供が不登校や引きこもりになるトラブルは多く、逆に放任主義の親に育てられたことで、自分の好きな職に就くために有利な一流大学への切符を手にしている子供は多いのです。
放任主義で育てられた子供は心から親に感謝する傾向がある
また、こういった放任主義の家庭で育った子供の多くは、「教育などの必要な面でお金や労を惜しまず、協力をしてくれた親に感謝をしている」と答えていて、放任主義は子供の心にも良い影響を与えていることがわかっています。「腕白でもいい、たくましく育って欲しい」という昔のキャッチコピーがありましたが、これはまさに放任主義の子育てそのもの!
言葉が与えるマイナス面にこだわるだけでなく、放任教育が子供にもたらすメリットも充分考えて、子供の育て方を見直していけるといいですね。
放任主義の子育てを成功させる5つの秘訣と親の特徴
子供の実力を伸ばす放任主義の親は、どのような教育を行っているのでしょう?5つの秘訣と親の特徴をご紹介します。
1親の背で学ぶことの楽しさを教える
放任主義といえども、子供を導く最低限の指導は必要です。放任主義の子育てを選ぶ親は、自分も教育程度、労働意欲が高く、子供に上手に学習することや労働の楽しさを教えることができるといった人が多いです。そのため、子供も早いうちに高い学習意識を持ち、大きな親のサポートがなくても、自発的に進んで勉強をすすめていく力が身につきます。
2勉強へのお金の出し惜しみをしない
放任主義の子育てを選ぶ親は、教育環境の大切さに重点を置いているため塾や習い事など子供の教育に関してはお金を惜しまないといった特徴があります。子供に対する信用度も高いので、ときに教育費用などの大きなお金を子供にゆだねてしまうこともあるため、周りから見れば「子供にお金を渡して、放っておいている」という誤解を受けることも多いようです。
3本人に決めさせる
放任主義の育児方法を選ぶ親は、子供の自主性や主体性を尊重します。そのため、自分たちは最小限のサポートとお金を出すだけにとどめて、子供が自分で決めさせます。勉強方法や進路を決めさせるだけでなく、今日学校に行くか、行かないかを子供に決めさせるケースもあるので、「子供の生活をきちんと管理していない」という悪口をいわれることも多いようです。
4無理にやらせずに必要性を考えさせる
子供は自分の楽しいことを優先させて勉強をおろそかしてしまいがちなので、親はつい「勉強をしなさい!」と繰り返してしまいがちですが、放任主義の子育てを選ぶ親は子供に勉強などを無理強いすることはありません。
たとえ全く勉強をしないでテストで0点をとるなどの失敗をしてしまっても、それも子供にとっての良い経験だと捉えます。そういった親に育てられると子供は自分で勉強の必要性を考えるようになり、自ら机に向かうことができるようになります。
5子供の話をしっかり聞く
放任主義の子育てを選ぶ親は、決して子供に向き合わない親ではありません。それどころか、少ない親の介入で最大限のサポートをするために、子供の事はとても注意深く見ていますし、子供の話をしっかり聞いています。そのため子供は愛情をしっかり受け止めながら自主性や主体性を伸ばすことができるので、成長しても親に対する愛情や信頼を失わずに、自分が家族を作ることにも積極的に取り組めるようになります
ネグレストやほったらかしの親の特徴
放任主義の子育てを選ぶ親は基本的に子供の将来を最優先に考えますが、ネグレクトにエスカレートしがちな親が優先させるのは自分自身、親の都合です。そのため、次のような特徴があります。
- 子供に無関心
- 自分の楽しみを優先してしまう
- 必要以上に子供にお金をかける必要はないと考える
- 子供は自分のいうことを聞いていればいいと思っている
- 自分が好きなときには、子供をかまい、連れ歩きたい
- 自分が必要と思わなければ、子供に話しかけることはしない
放任主義の子育てだって楽ではない!
放任主義の子育ては、あまり子供に干渉する必要がないので、一見親として楽なように見えてしまいますが、そんなことはありません!子供の力を信じることには多大な自制心が必要ですし、子供を最小限のサポートで導くために、自分自身もさまざまな知識やスキルを身に着けて実践的に効率よく子供に教えなくてはならず、とても大変です。
子供に自由に選択権を与えるためには、他の家庭より早い時期に子供と冷静に話し合いをしていくことが必要ですから、親には忍耐力も必要ですし、子供の失敗を見て心を痛めるリスクも高いので、放任主義の子育てのメリットに惹かれて試したものの、途中で挫折してしまうという親御さんも多いようですよ。
子育ての方法は親の考えにもよりますし、子供の性格にとっても向き不向きがありますから、全ての子供に放任主義の子育てが向くわけではありません。放任主義を選ぶにしろ、そうでないにしろ、大事なのは子供を愛して、親がしっかりと子供と向き合っていくこと。子供の可能性を信じて、子供の才能を最大限に引き出していけるようにサポートできるといいですね。