夫が無職になったら~旦那への対応や妻が知るべき7つの手続き
ある日突然あなたの夫が無職になったら、あなたはどうしますか?
今の社会では女性も男性並みに働くチャンスがあるとはいえ、出産や育児などで専業主婦になったり、共働きでも家事や子育てで独身の頃の様には働けなかったりと、家計を夫の収入に頼っている家庭は多いです。ですから夫が無職になったら当面は貯金でしのげても、なかなか再就職先が決まらないなど、将来設計を見直さなければならない事態になることも。
そこで今回は、夫が突然無職になった際に心がけたい夫への対応、経済的なダメージを抑える7つの手続き、妊娠中の手当てへの手続き、子供の保育園や学費への対応について詳しくご紹介していきます。
夫が無職になったと知った時にすべき対応
夫が職を失ってしまった妻は驚くだけでなく先々のことを考えて不安になりますが、生きがいとしていた仕事を失い、男としてのプライドも一家の大黒柱という自信も打ち砕かれ、誰よりも苦悩や不安を抱え込んでいるのは夫本人です。
妻としては不安をグッと堪え、夫の気持ちに配慮しながら、夫が再び仕事について前を向いていけるようサポートしていきましょう。
1責めない
夫が無職になったことで不安になって夫を責めてしまうのは得策とはいえません。夫は自分が無職になったことを妻に伝える時、少なからず責められることや落胆させることに怯えていますし、妻や家族に申し訳ない気持ちで一杯なのです。
気持ちの弱くなっている時に信頼している妻に責められることで、夫は再就職へのやる気を失うほど追い詰められてしまう恐れがあります
人によっては「あんな会社辞めてやった!」などと大きなことを言うかもしれませんが、辞めざるを得ない状況に追い込まれた夫の気持ち、妻には話せない何らかの理由や苦痛があったことを理解し、無職になった夫を優しく受け止めてあげましょう。
2質問せず、労いの気持ちを伝える
夫が突然無職になったと知って戸惑わない妻はいないでしょう。思わず「どうして?なんで?何があったの?」と質問したくなると思いますが、これまで夫は様々なことを我慢しながら会社で働いてきたのです。まずはそうした苦労を妻として感謝し、夫が再び家族のために働く喜びを見出すことができるように「今までお疲れ様でした」と労いの気持ちを言葉にして伝えましょう。
突然職を失ったことで夫は精神的にドッと疲れが出ているはず。そんな時に仕事を失った理由を問い詰めるのは好ましくありません。
疲れている時に根掘り葉掘り質問されることで、ただでさえ家族に罪悪感を抱いている夫は「責められている!」と感じてしまうことがあります
3聞き役になる
突然慣れ親しんだ仕事を失ったことで、大きなストレスを抱え込んで再就職に向けて歩みだせない男性もいます。ストレスの軽減には自分の身に起きたことや気持ちを誰かに話すことが効果的ですので、夫が話せる状態であれば話しの聞き役になってあげましょう。夫も妻や家族は味方であることを実感できて、少し心が晴れるでしょう。
ただし、夫から無理に話しを引き出すことは厳禁です!夫の話を聞く時はあくまでも聞き役に徹し、妻としての意見やアドバイスはせずに夫の心を解きほぐすことを重点にしてあげましょう
4休ませる
夫や家計の状況にもよりますが、夫が気力を失っている時にすぐ求職活動をさせるのは得策とは言えません。夫をしばらく休ませ、自ら「無職は嫌だ」「再就職したい」と気力が回復するまで、家庭内で心を癒す時間を作ってあげることの大切さを心得ておきましょう。
責め立てて無理に求職活動をさせても、やる気を失った状態の人を採用する会社はなかなか見つからないため上手くいかず、逆にこじれて無職の時間が長引いてしまいやすくなります!
夫が休んでいる時間が長いと妻はイラつきますが、いずれにせよ再就職できないのであれば、初めから夫に英気を養ってもらうことに時間を費やした方がかえって再就職への近道。その間に経済的なダメージを最小限に抑える手続きを行うなど、夫を信じて冷静に対応しましょう。
5焦らせない
無職になった夫に求職活動を促す、夫の仕事を妻が代わりに探すといった夫を焦らせる行為は好ましくありません。それでなくても夫は「妻や子供に逃げられるのではないか」と内心焦って心苦しい思いをしているのですから、焦られせることによって誤った選択をしてしまいかねません。
焦って気に入らない職に就けたとしても、長続きせずにかえって失望が大きくなってしまいます!
また、家族が焦らせてしまことで夫の気力が萎えるだけでなく、面接などでも良い結果を出すことが難しい状態となってしまうことも珍しくありません。面接の失敗は夫を傷つけ、大事な再就職へのやる気を損なわせてしまいますので、妻としては焦らずに夫が自力で回復するのを見守ってあげましょう。
6バリバリ働く夫のイメージを壊さない
男性の中には強そうに見えても挫折や失敗に弱く、一度自信を失うとなかなか回復できない繊細なメンタルの持ち主がいます。ですから、夫が無職になった時だからこそ、社会でバリバリ働く立派な男性のイメージを崩さないように配慮して接しましょう。
夫が無職になったことで「社会から脱落した」という悪いイメージを持ってしまうと、その通りの人間になろうとする心理が働いてしまうことがあります!
一人で家計を支えることになった妻が仕事から帰った時に、夫がゴロゴロしている姿を目にすると腹立たしくなるのですが、「夫はバリバリ働く男性」というイメージを崩さないように、失業中もこれまで通りの態度で接することが大切です。
夫が無職になった妻が知るべき手続き7つ
夫が無職になった場合、期限までにしないと損をしてしまう手続きや、お金をもらえる手続きが発生します。無職になると精神的なダメージにより手続きが漏れて損をする恐れもありますので、妻は手続きへの知識を持って夫の様子を見守り、間に合わなくなる前に必要に応じて夫をサポートしましょう。
1健康保険
健康保険はすべての人が加入を義務付けられているものですが、これまで夫が働く職場の健康保険に家族が入っていた場合には、次の3つの手続きから自分の家庭にとってお得な手続きを選んで行う必要があります。
あなたの家はどれがお得?3つの健康保険
- 夫のこれまでの健康保険の任意継続
- 国民健康保険への加入
- 妻の職場の健康保険への異動
共働きの場合
夫や子供を扶養にする3の妻の職場の健康保険への異動が一番お得です。保険料は増えませんし、手続きも妻が会社で行うだけですのでスピーディーに行えます。
ただし夫を扶養にする場合は、同居する夫が失業してからの年収見込み額が130万円未満で妻の年収の半分未満であることや、別居する夫の収入が妻からの仕送り未満などの条件があります(※状況によっては夫の収入が妻の収入の半分以上でも扶養となるケースがあります)。
雇用保険基本手当(失業給付金)や健康保険の傷病手当金も夫の収入に含まれますが日額3,611円以下であることや、夫の月収が108,333円以下であることも条件となっていますので注意しましょう。
扶養する人数が多い場合
1の夫のこれまでの健康保険への任意継続がお得です。元の保険の任意継続では扶養家族の保険料がかからないため、子供がいる場合は特にお得です。
手続きはお住まいの自治体にある「全国健康保険協会(協会けんぽ)」で行えますが、これまで使っていた健康保険への加入期間が2ヶ月以上であり、かつ退職日から20日以内に書類を提出しないと受け付けてもらえず、退職後2年間しか継続できませんので注意しましょう。
扶養家族がいない場合
2の国民健康保険と1の任意継続のどちらかを保険料によって選ぶようにしましょう。国民健康保険に加入する場合の手続きはお住まいの市区町村役場で行いますが、そちらで保険料の計算も行ってくれます。
どちらか迷う場合
とりあえずこれまでの夫の健康保険への任意継続にしておきましょう。国民健康保険へはいつでも切り替えできますが、夫のこれまでの健康保険に任意継続ができる期間は退職から20日以内と短く、一度国民健康保険に切り替えると夫の保険の任意継続ができなくなるためです。
2国民年金や厚生年金
20歳以上60歳未満の日本人は全て国民年金か厚生年金のどちらかに加入するのが義務であり、退職後は厚生年金を脱退するため、夫の年金を国民年金の「第1号被保険者」、または妻の厚生年金の「第3号被保険者」とする変更手続きが必要です。
妻の年収が130万円以下で夫が扶養していた場合は、妻の年金への手続きも必要となります。
ただし、夫が無職になってしまった場合は毎月の支払いが厳しい状況になることもあり、そういった場合には保険料の免除や納付猶予を受けることができます。まずはお住いの市町村役場にて手続きや相談をし、できるだけ保険料を無理なく収めることができる方法を考えていきましょう。
妻が専業主婦など年収130万円以下の場合
厚生年金に加入している時、自動的に夫は国民年金の「第2号被保険者」、妻は「第3号被保険者」となり国民年金にも保険料が支払われてきました。ところが夫は無職になったことで厚生年金を脱退しますので国民年金の「第2号被保険者」から「第1号被保険者」へ、妻は第3号被保険者から第1号被保険者へと変更手続きを行わねばなりません。
ですから、これまでは夫の給料明細でのみお目にかかっていた「年金」ですが、夫が再就職するまでは毎月夫婦で支払わなければなりません。国民年金第1号被保険者の1ヶ月当たりの保険料は16,490円(平成29年時点)、夫婦2人で32,980円となります。口座振替が一番お得です。
世帯主が失業中の家庭にとってはかなりの負担額ですが、この手続きを忘れて2年以上経ってしまうと後から保険料を納付することができない「未納期間」が発生し、将来的に年金額が減る、年金が受給できなくなるなどの金銭トラブルが発生します。平成23年に厚生労働省が行った調査では、全国の47.5万人がこうした年金への影響があるという結果が出ました。
妻も必ず手続きしましょう!
夫が無職になったら、妻もすぐに市区町村役場の年金窓口に行って変更届を提出し、未納期間を作らないように注意しましょう。手続きの際は、年金手帳か基礎年金番号通知書を忘れずに持参してください。
もし既に2年以上未納になってしまった場合も、平成30年3月までは特例措置で過去10年分までさかのぼって保険料を納付できますので、窓口で相談するとよいでしょう。
妻自身が厚生年金に加入している場合
夫が無職になった場合、妻の扶養とすることで妻が加入する会社の厚生年金から第3号被保険者とすることができます。
ただし、申請期間は夫が扶養となる条件に一致してから5日以内と短いため、すぐに妻の会社の総務部に相談し、必要な書類を提出しましょう。
3夫の雇用保険基本手当(失業給付金)
日本では突然会社が倒産した場合や失業した場合に備えて、雇用保険基本手当、いわゆる失業給付金を保証しています。夫が無職になった時にとても頼りになるお金です。
ただし誰もが失業給付金を受け取れるわけではなく、退職手当をもらえるため雇用保険に加入していない公務員は対象外ですし、離職前の2年間で12ヶ月以上その会社に勤めていなければ対象外となるなどの条件があります。
他にも、積極的に就職する意思がある、就職できる環境や健康状態である、積極的に職を探している状態などを示すために、ハローワークに夫本人がいかなければなりません。
また手続きをしてから受給資格の審査を経てお金が口座に振り込まれるまでには最低でも7日間の待機期間が必要となり、離職理由によっては給付制限をうけることもありますので、貯蓄が少ない場合はできるだけ早めの手続きが必要です。
4配偶者控除
共働き夫婦で妻が住民税や所得税を支払っている場合、子供を妻の扶養に入れ、夫も条件が合えば扶養に入れておきましょう。無職になった夫の年間の合計所得が38万円以下の場合、妻が配偶者控除を受けることができ、妻の税金負担を軽くすることができます。
税金は必ず納める必要があり結構な費用がかかるものですので、住民税や所得税についてはお住いの市区町村役場で相談してみましょう。
5妻の会社の勤務形態変更
妻が働いていて給与所得があり、夫が無職の状態がしばらく続くようであれば、妻の会社の勤務時間を伸ばして家計を支えるという検討も必要です。家事や育児のために妻が時短勤務の場合は通常勤務に勤務形態を変更するなど、少しでも収入を増やし、夫と協力して家庭を守りましょう。
6生命保険
万が一のために入っている生命保険などは、毎月の支払もバカになりません。仕事上の付き合いなどで加入しているムダな生命保険は解約するなど、夫が無職でも支払いに過剰な負担がかからないような保険の見直しをしましょう。
夫が定職についているときに会社の団体扱いで加入していた生命保険も、退職したことで団体扱いとならなくなるため保険料が増える可能性がありますので注意が必要です。
7労働問題への相談
もし夫が無職になった理由がパワハラ、不当解雇、賃金引下げ、配置転換等、賃金の未払いに応じないなどの労働上の問題である場合、市区町村役場の総合労働相談コーナーに無料で相談できます。
お近くの労働基準監督署でも同様の相談を受け付けていて、仕事や職場の人間関係のために夫がうつ病などの心の不調や体の不調を訴え、それがきっかけで退職を余儀なくされた場合などの相談にものってくれます。
問題があれば企業への指導を行ってくれますので、勇気を出して相談してみましょう。
出産前に夫が無職になった時の妻の心得
赤ちゃんができて仕事を辞めた途端に夫が無職になるという事態に直面したら、「分娩費用は用意できる?」「赤ちゃんを育てられるの!?」と不安になってしまいますが、妊娠中は健診に対して助成金が出ますし、保険等の手続きをしっかり行えば出産育児一時金を受けることもできますので、贅沢は禁物ですが必要以上に不安に思う必要はありません。
ただし夫が無職になってからすべき手続きを行っていないと、給付金はおろか健康保険が使えないなどで損をすることもありますので、各種手続きは速やかに、かつ着実に進めるようにしましょう。
出産前に夫が無職になることは悪いことばかりではなく、夫婦共同で育児ができるなどのメリットもあります。
育児を通して夫の心がリフレッシュできれば失業のショックから立ち直りやすく、再就職への意欲を盛り立てる可能性もありますので、ストレスで赤ちゃんや母体に負担をかけないように心掛け、前向きに捉えて落ち着いてすべきことをこなすことが大切です。
夫が無職だと子供が保育園に通えなくなる?
それまで夫婦共働きで生活をしていた場合、夫が失業したことで保育園への届け出も必要になってきます。保育園は「親の就業など家庭で子供を保育ができない」ということが入園の条件になりますので、親の失業・転職の届け出には厳しいです。子供のお世話になる保育園に迷惑をかけないように早めにどんな届出が必要かを園に確認し、確実に手続きをとっていきましょう。
園によって扱いに差がありますが、夫の失業が長引いたことで「ご主人が子供を家庭で保育できる」と判断されてしまうと、子供の退園を促されるというケースもありますので、夫が心身の病気で就業ができない、求職活動をしているけれども定職につけないといった面を見せる必要がありますので、早いうちに現状を園に相談をして、理解を求めておくといいでしょう。
- 自治体によって違いがあるため、まずは保育園の園長に相談する
- そのまま続けられるケースもあれば、保育料や保育時間は不利だが一時保育扱いとなって続けられるケースもある
- 妻がフルタイム勤務で夫はうつ病など病で就業が困難な場合、継続できることがある
保育園との違いによるストレスに注意!
夫が無職になったことで保育園を退園して幼稚園に転園する場合、子供は環境の変化に強いストレスを感じます。そうでなくても子供は親の気持ちを察しやすいので、理由は分からずとも親の落ち込みを感じ取っている可能性があります。ケロッとしているように見えても実はストレスを溜めていることがありますので、子供が安心して健やかに暮らせるように、ママは笑顔と円満な家庭環境を心掛けましょう。
夫が無職で子供の学費が心配…
近年、親の失業などで子供が希望の学校へ進学ができなかったり、必要な学用品を揃えられず不登校になったりする子供の貧困が社会問題になっていて、日本は6人に1人の子供が貧困です。
子供がいる家庭で夫が無職になった場合、親にとって何より不安なのは子供の学費や教育費の捻出でしょう。
子供の貧困への日本政府の対応
学校教育法第19条には、「市町村が経済的理由で就学困難な学齢期児童を援助しなければならない」という内容が記されていますので、日本政府は親の収入だけでは厳しい家庭の子供への就学をサポートするために、学校の授業料免除や奨学金制度の拡充を押し進め、文房具などの学用品にかかる費用を負担する就学援助制度を設けています。
また私立の場合、成績優秀者であれば学校独自の奨学金を受けられる学校もあります。
子供に教育を受けさせることは、将来子供を豊かに生活させるための投資です。できるだけ子供が勉強するチャンスを潰さないよう、速やかに学校に相談し、必要に応じて生活保護や民間の就学支援も活用していきましょう。
離婚は感情的に決めず冷静に判断しよう
夫が無職になり生活が大きく変わってしまうと「離婚」の二文字が頭をよぎることもありますが、夫の失業だけで離婚に踏み切るのは早計です。金の切れ目が縁の切れ目とばかりにそれまでの夫婦生活を捨ててしまうのか、子供から父親を奪ってしまうのか、離婚のリスクを十分に検討して、時間をかけて考えていきましょう。
離婚したい理由は夫が無職だからなのか、それとも元々モラハラ等の問題があって失業をきっかけに離婚をしたいのか、よく考える必要があります。
失業のショックと再就職の難しさから夫が落ち込んでいる時こそ妻のサポートが必要です。お金の不安だけで離婚を考えているのであれば、結婚生活をあきらめる前に自分に何ができるのかを考えて、不安なときこそ前向きに夫婦で手を取り合っていきましょう。