出産費用を保険でカバー!3つの給付制度の申請方法と支給金額
出産費用のほか、産休や育休による収入の減少は、共働きの家庭にとって大変な経済的な負担になります。そこで知っておくと便利なのが、保険による給付金制度です。ここでは次の3つの給付金についてご紹介します。
・出産育児一時金(健康保険から支給)
・出産手当金(健康保険から支給)
・育児休業給付金(雇用保険から支給)
3つの制度は、それぞれ「出産」「産前・産後休暇」「育児休暇」の3つの時期に支給されることから、それぞれきちんと申請することで確実に家計の助けになるはずです。
「聞いたことはあるけど、どうやったらもらえるのか、よくわからない」という人も多いでしょう。ここからは、この3つの給付金についての、申請方法、支給額、給付条件などについて詳しくご紹介していきますので、分娩費用を心配している方は特にしっかりと理解してストレスを軽減しましょう。
これだけは知っておきたい健康保険と雇用保険について
健康保険から支給される「出産育児一時金」「出産手当金」と雇用保険から支給される「育児休業給付金」は、当然ながらそれぞれの保険に加入していなければ給付されません。保険と一言で言っても、いろいろあってよく分からないという方は多いはず。まずは、それぞれの給付金が支給される健康保険と雇用保険についてしっかり押えておきましょう。
健康保険とは?
健康保険は民間企業に勤める人(被保険者)とその家族(被扶養者)が加入している、けが・病気・出産などによる休業や突然の不幸に備える公的医療保険制度です。保険料は給料に応じて決まるほか、事業主と被保険者が折半で負担します。
それに対して間違いやすいのが国民健康保険です。健康保険と国民健康保険の違いは、自営業者や会社を退職した人が対象で、保険料は全額自己負担する必要があることです。また、「扶養する者」と「扶養される者」という概念がないため、「世帯」単位で加入や納付を行うことから、加入手続きや保険料の支払いはすべて世帯主が行うことになっています。
雇用保険とは?
雇用保険は聞き慣れなくても、「失業保険」なら知っているという人も多いでしょう。雇用保険とは、何らかの理由で働けなくなり失業状態となった場合に、再就職までの一定期間給付される労働保険の一つです。失業以外に、育児休業を取得した場合にも給付の対象となります。
産前・産後休業(産休)中の「出産手当金」「出産育児一時金」は健康保険から、育児休業(育休)中の「育児休業給付金」は雇用保険から支給されます。
出産時に支給される「出産育児一時金」とは
「出産育児一時金」とは、出産にかかる費用の軽減のために、被保険者または被扶養者が出産した際に支払われる給付金です。双子や三つ子などの多胎児を出産した際は、人数分だけ支給されます。
1支給の対象
- 健康保険の被保険者(加入している方)または被扶養者(被保険者の家族)
- 妊娠4ヶ月以後に出産された方
2支給額の算出方法
1人の赤ちゃんにつき42万円が支給されます。ただし、産科医療補償制度に加入されていない医療機関等で出産された場合は40.4万円となります。
3支給期間
出産育児一時金は分娩が行われた病院に出産時に直接支給されることがほとんどです。分娩費用が支給額より安い場合は出産時に差額が支給されますし、不足する場合は逆に病院から退院時に差額が請求されます。
4申請方法と用意する書類
出産育児一時金の受給するためには3通りの方法があります。支払方法によって請求の仕方が違うので、詳しく見ていきましょう。
直接支払制度
直接支払制度とは、健康保険から直接、医療機関(病院・診療所・助産所など)に支払われる方法です。
健康保険から病院に直接支払ってくれるので、出産にかかった費用が42万以上だった場合、差額を支払うだけで済みますし、42万円以下の場合は、後日差額が返還されるという仕組みになっているので、出産の際にまとまったお金を用意しておく必要がありません。
直接支払制度の申請手順
1.出産予定日の前までに、医療機関に直接支払制度の利用の申出を行います
2.出産後、医療機関から明細書が交付されます
3.医療機関から健康保険に費用が請求されます
4.健康保険から医療機関に出産育児一時金が支払われます
※出産費用が42万円未満の場合
5.「出産育児一時金差額申請書」に必要事項を記入し、健康保険に申請します
6.健康保険から差額分が支払われます
※出産費用が42万円を超えた場合
5.医療機関から差額分の費用が請求されます
6.医療機関に差額を支払います
直接支払制度の利用を希望する場合は、直接支払制度を実施しているかどうか出産予定の医療機関に確認をしておきましょう。また、直接支払制度を利用する場合は、出産予定の医療機関に被保険者証を提示して、退院するまでに「直接支払制度の利用に合意する文書」の内容に同意する必要があります。
※こちらのページから出産育児一時金差額申請書を印刷することができます。
受取代理制度
受取代理制度とは、事務的負担が大きい直接支払制度の導入が難しい、小規模な医療機関で出産した場合に適用される支払いの方法です。基本的に支払方法は直接支払制度と違いはありませんが、申請の手順が異なります。
受取代理制度の申請手順
1.「出産育児一時金等支給申請書(受取代理用)」に必要事項を記入します
2.医療機関に申請書の受取代理人の欄への記入を依頼します
3.出産予定日の2か月前を過ぎたら、健康保険に申請書を提出します
4.健康保険から医療機関に「受取代理申請受付通知書」が送付されます
5.出産後、医療機関から健康保険に「費用請求報告書」が送付されます
6.健康保険から医療機関に出産育児一時金が支払われます
※出産費用が42万円未満の場合
7.健康保険に差額支給の申請を行います
8.健康保険から差額分が支払われます
※出産費用が42万円を超えた場合
7.医療機関から差額分の費用が請求されます
8.医療機関に差額を支払います
※こちらのページから出産育児一時金等支給申請書(受取代理用)を印刷することができます。
直接支払制度を希望しない場合
健康保険から医療機関に出産育児一時金の支払いを希望しない場合は、健康保険から直接支給を受けることができます。
最近では、クレジットカードで支払いができる病院も増えているので、ポイントを溜めたいという方にはこちらお方法がおすすめです。この場合、医療機関への出産費用を自分で支払うことから、出産時にまとまったお金を用意しておく必要があるためご注意ください。
直接支給を受ける際の申請手続
1.「出産育児一時金支給申請書」に必要事項を作成しておきます 2.医療機関から直接支払制度を利用していないことを証明する書類を交付してもらいます 3.出産後、申請書の証明欄に医師・助産師または市区町村長に記入を依頼します 4.書類を添付して申請書を提出します 5.指定の口座に出産育児一時金が振り込まれます
※こちらのページから出産育児一時金支給申請書を印刷することができます。
産休中に支給される「出産手当金」とは
出産のために仕事を休むと、その間は給料の支払いが受けられません。「出産手当金」とは、事業主から報酬を受けられない期間に経済的な負担を軽減することで、被保険者や被扶養者が安心して出産するために支給される給付金です。
産休後、仕事に復帰する予定のママが対象で、正社員だけでなくても、健康保険に加入していればパートやアルバイトでも支給されます。
1支給の対象
- 女性の被保険者の方
- 基本的に継続給付の要件を満たしている方を除き、任意継続被保険者の方は対象外となります
2支給額の算出方法
出産手当金は、1日あたり標準報酬日額の3分の2に対応する金額が支給されます。
標準報酬日額とは
月給を30日で割った金額で、月額の報酬である「標準報酬月額」を元に算出されます。一般的に標準報酬月額は、4月~6月の平均額とされています。
標準報酬月額が18万円の場合、1日あたりの出産手当金は次のように算出されます。
(180,000円÷30日) × 2/3 = 4,000円
休んだ日数が98日の場合、休業した期間の出産手当金として以下の金額が支給されます。
4,000円 × 98日 = 392,000円
また、会社を休んだ期間に事業主から給与が支払われる場合は、給与の額を控除した金額が出産手当金として支給されます。
3支給期間
出産日以前の42日(多胎児の場合は98日)から、出産の翌日以降の56日目までの最大98日間に、会社を休んだ期間が対象となります。また、実際の出産が予定日以降になった場合、出産予定日を出産日として計算します。
4申請方法と用意する書類
出産手当金の申請方法
- 「健康保険出産手当金支給申請書」の1~2ページに必要事項を記入します
- 申請書の3ページに事業主の証明の記入を依頼します
- 申請書2ページに医療機関の証明の記入を依頼します
- 申請書に賃金台帳とタイムカードのコピーを添付して提出します
- 申請から2週間~2ヶ月後に指定の口座に出産手当金が振り込まれます
※こちらのページから健康保険出産手当金支給申請書を印刷することができます。
育休中に支給される「育児休業給付金」とは
「育児休業給付金」とは、育児休業中の経済的支援のために雇用保険から支給される給付金です。子供の1歳の誕生日以降の雇用が見込まれる方に対して、子供が1歳になるまでの間の休業を希望する期間に支給されます。
1支給の対象
- 雇用保険に加入している方
- 休業前の2年のうち11日以上働いた月が12か月以上ある方
- 休業中に月給の8割以上の給料をもらっていない方
- 育児休業開始から子供が1歳に達する前日までの間、就業日数が10日以下の方
契約社員の場合は、同じ事業主の下で1年以上継続して働いていることが支給条件となります。
また、育児休業給付金は、男女問わず給付の対象となることから、パパも育児休業給付金を受け取ることができます!最近はイクメンが増えており、簡単に取得できるよう取り組んでいる会社も多くなっています。
2支給額の算出方法
育児休業給付金は、育児休業開始から180日は平均月給(育児休業前の6ヶ月の賃金の平均)の67%、それ以降は50%が支給されます。
平均月給が20万円の場合、育児休業給付金は次のように算出されます。
育児休暇の開始から180日以内に支給される月額
200,000円 × 0.67 = 134,000円 …(A)
育児休暇の開始から181日以降に支給される月額
200,000円 × 0.5 = 100,000円 …(B)
育児休業の前半の支給額
(A)134,000円 × 6ヶ月 = 804,000円
育児休業の後半の支給額
(B)100,000円 × 4ヶ月 = 400,000円
育児休暇開始から子供が1歳に達する日の前日までに支払われる合計金額
804,000円 + 400,000円 = 1,204,000円
支給される月額には、育児休業の前半は285,621円、後半は213,150円の上限が定められています。
3支給期間
育児休業給付金は赤ちゃんが1歳になる誕生日の前日まで支給されます。さらに、「パパママ育休プラス」を取得した場合は1歳2ヶ月まで、保育園に入れない等の特殊な事情がある場合は1歳6か月まで延長が可能です。
また、育児休業中は、会社を通じて申請をすることで社会保険料が免除になります。とってもお得なので、しっかり確認をして忘れずに申請を行いましょう。
申請方法と用意する書類
育児休業給付金は、基本的に被保険者を雇用している事業主が手続きを行います。育児休暇の取得1ヶ月前には勤務先に申請しておくとよいでしょう。また、産休と続けて育休を取得する場合は、産休に入る前に対応しておく必要があります。