親のコンプレックスが悪影響になるとは限らない!付き合い方を知ろう
初めての子育てを経験する母親は、家族や子供、ママ友、義両親などとの付き合い方に悩む中でコンプレックス(劣等感)を抱きがち。抑圧された環境にいると、人は無意識にコンプレックス抱きやすくなります。
「自分だけが我慢すればいい問題」と心にフタをして誤魔化す人もいるでしょう。けれど強すぎるコンプレックスと上手く付き合えない親は、無自覚に子供への悪影響を与えることがあります。
親が抱えがちなコンプレックスの原因や悪影響、コンプレックスとの上手な付き合い方を知ることで、子供に負の遺産を背負わせないようにしましょう。
親が抱えがちなコンプレックスの6つの原因
子供が新生児のうちは、赤ちゃんと自分のみの小さな世界での育児。そのためコンプレックスを大きく刺激されない親が多いのですが、子供が成長するにしたがって親も活動の場が育児サークル・幼稚園・小学校などへと広がります。その結果ママ友に格差を感じ、コンプレックスを抱いてしまう人は決して少なくありません。
1自分や夫の最終学歴
学歴が全てではないと分かっていても、幼稚園や小学校のお受験、中学高校受験の話の時期になると、どうしても気になってしまうのが親の学歴。
そのため中卒や高卒のママの中には、大卒など高学歴のママ友やママ友の夫にコンプレックスを感じる人もいます。
子供のテストに一喜一憂し、子供の成績が悪いと自分の学歴のせいにしてしまうママも。
2自分や夫の職業
ママカーストの存在が注目された時期がありましたが、医者、弁護士、キャリア官僚などの高収入の職業の人(夫)に、憧れやコンプレックスを持つ親もいます。
その一方で、そう言った職業に夫や自分が就いている親の側からは、「妬みの対象になるので言えない」との声も。
社会的にイメージが悪い職業に付いている親の中には、「子供のことを考えると周囲には話せない」とコンプレックスに苦悩すること人もいます。
3離婚
平成27年の離婚件数は22万6215組。前年よりも増加していて、離婚は近年珍しくなくなってきました。(注1)
しかし子育てを一人ですることへの不安、子供が寂しい思いをするのではないかという心配や罪悪感から、既婚者のママ達にコンプレックスを感じてしまうシングルマザーもいるのです。
4未婚
アメリカなどの諸外国では未婚のシングルマザーに対してオープンな見方がされるようになってきました。ところが未婚のシングルマザーが増えているにもかかわらず、まだまだ閉鎖的な日本ではそのような状況でないのが現実。そのため、母親がコンプレックスを感じて周りの目が気になるとの声も聞かれます。
5自分や夫の容姿
オシャレなママ友を見て羨ましく感じる経験をしたママもいるでしょう。しかし、子育て中はそれだけではなくなることがあります。
「〇〇ちゃんのママは可愛い」なんて我が子に言われると、子供の他愛ない言葉でも「もっと目が大きかったら」「足が細くて長かったら」などと、これまであまり気にしなかった人でも、自分の容姿にコンプレックスを持ってしまいやすいのです。
6年齢の高さや低さ
初産の平均年齢が上昇し、ママの平均年齢は昔に比べてかなり高くなりました。とはいえ10代20代の若くて元気いっぱいのママを横目に体の疲れを感じているママからは、「羨ましくなる」との本音が漏れ聞こえることがあります。
その反面、若いママからは「ママが若いから、子供の躾ができないんだ」など、若さ故の苦い経験が辛いという声も。コンプレックスの内容こそ異なりますが、実はどちらの親も年齢で悩んでいるのです。
親のコンプレックスが無自覚に子供に与えてしまう5つの悪影響
「子供は親の背中を見て育つ」と言われていますが、コンプレックスも同じように親から子へと引き継がれてしまうことがあります。
コンプレックスが強いママやパパの場合、努力する前から「できないなら仕方がない」と諦める傾向があり、その結果、子供の自立の機会や将来の可能性を潰すこともあるので注意が必要です。
1勉強嫌いになる
親が子供の頃に学校の成績や学歴が悪く、勉強嫌いだったことにコンプレックスを持っていると、遺伝のせいにして「子供も努力しないし、しても伸びない頭の悪い子」と決めつけてしまうことがあります。
その結果、子供がちょっと絵本に興味を示さなかったり勉強がスムーズに進まなかったりするだけで、「頭が悪いのは私に似たんだから仕方ない」と、勉強を教えたり子供が勉強できる環境を与えたりするのをやめてしまい、家庭学習習慣が身につきにくくなってしまうのです。
勉強を強要し、勉強嫌いにすることも!
諦めてしまう親とは逆に、子供を優秀に育てることで親のコンプレックスを解消しようとする人もいます。子供が幼いころから早期教育や高学歴高収入に強くこだわり、勉強を強要してしまうことも。
その結果、子供の自ら進んで学ぶ意志が育たず、勉強嫌いの子へと育ったり、成長と共に親子関係が悪化してしまったりすることがあります。
2健康面や発達面の問題を抱えやすい
コンプレックスにより人と付き合うことに苦手意識を感じているママやパパは、公園などの社交場に外出する機会が少なくなる傾向があります。
その結果、子供同士で遊ぶ機会が減って人間関係を築く練習が不足するのでは?と心配する親は多いのですが、本当に心配なのは外出の機会が減ることで起こりやすくなる、くる病などの健康面の問題。
また運動や五感への刺激が必要な幼児期に外出が極端に少ないと、ストレスが溜まり脳や体への刺激も少なくなってしまいます。そのため外遊びを十分にしている子供よりも、五感や筋肉が発達しにくくなってしまうのです。
3親と同じように容姿へのコンプレックスを抱える
容姿へのコンプレックスがある親の場合、自分の嫌いなパーツが子供に似たことで、子供に直接可愛くないと伝える、あるいは罪悪感で悲しそうに見つめてしまうといった言動をとってしまい、子供の心に傷つけるケースがあります。
また容姿以外にコンプレックスがある親も、無意識に子供の存在で自分のコンプレックスを解消しようとしている場合は、子供の容姿に過敏に反応し、子供が不細工だと感じることで愛せなくなるなど、子供を傷つけることがあるのです。
4運動神経が悪いと思い込む
ママやパパが運動へのコンプレックスがある場合、親が運動嫌いだと子供に対してもアクティブに遊ばせようとしなくなり、その結果他の子供より体の使い方が苦手になる傾向があります。
さらに「運動神経が悪いから、何をさせてもどんくさい」などと言葉で伝えてしまう親の場合、子供の心が傷つくだけでなく、自己イメージが悪くなるため子供にマイナスの効果を及ぼしてしまいます。
5自信がない子供に育つ
コンプレックスを持つ親の多くは、完ぺきではない自分を受け入れることができない傾向があります。その姿を見て育ち、親から褒められることも少なかった子供は、当然「完ぺきでいないとダメなんだ」と無意識に感じてしまい、自信を持ちにくくなってしまいます。
つまり親のコンプレックスを引き継ぐ負の連鎖が起こってしまうのです。
そもそもコンプレックスって何?
コンプレックスと言えば、「劣等感」を思い浮べる人が多いでしょう。劣等感とは他者と比較して自分が劣っていると感じる心理。一般的に日本では、コンプレックスと劣等感が同じ意味で使用されています。
ところが海外では、劣等感を含む大きな意味合いで使われているのです。そもそもコンプレックスとは精神分析の概念。一言でいえば心のしこり。強いこだわりを持つ物や事柄に対しての心理です。
コンプレックスの具体な例
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エディプスコンプレックス
幼児期の子供(主に男の子)が異性の親に愛着を持つことで、無意識に同性の親を憎んだり恐れたりする心理 -
エレクトラコンプレックス
女の子が父親に愛着を持つことで、母親に反発する心理 -
インフェリオリティーコンプレックス
劣等感。劣等コンプレックス。
私達日本人が通常使っているコンプレックスという言葉は、心理学三大巨頭の一人アルフレッド・アドラーが提唱した「劣等コンプレックス」という負の心理にあたります。
ちなみに劣等感という言葉は、劣等コンプレックスから和製英語のように使用されるようになったとも言われています。
コンプレックスと上手に付き合う方法
心理学者アドラーは、劣等感とはマイナス面を克服して成長するためのエネルギーであり、人間は完ぺきではないので劣等感は誰にでもあると考えていました。とても前向きなエネルギーなので、否定することはないと捉えていたのです。ところが実際は、劣等感により後ろ向きの気持ちになっている人が大勢います。
アドラーはその苦しみが劣等感から目を逸らして行動しようとしない、劣等コンプレックスや優越コンプレックスによるものだと説いています。
劣等コンプレックスと優越コンプレックス
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劣等コンプレックスとは?
ネガティブ思考になり、嫉妬・悪口・反社会的行動などの攻撃をしたり、不幸アピールをしたりして劣等感から目を逸らそうとする歪んだ心 -
優越コンプレックスとは?
自慢ばかりすることで、自分を大きく見せて劣等感から目を逸らそうとする歪んだ心
劣等コンプレックスや優越コンプレックスといったコンプレックスから解放されるために、まずは意識改革から始めることが大切です。不完全な自分を認めることが最初のポイントになります。
次にコンプレックスの原因となった劣等感を解消できるように、行動することが大切なのです。
例えば、勉強ができないなら子供に代わりにやらせるのではなく、自分自身が子供と一緒に一から勉強すればいいのです。人に見下されるのが嫌でコンプレックスがあるのであれば、見下されると感じなくなるような資格を取得するなど、具体的に行動すればいい。コンプレックスと上手に付き合う方法を、アドラーはこのように提唱したのです。
親のコンプレックスによる子供への悪影響を回避する5つの方法
テレビやネット、書籍には「高学歴の親の子は成績が良い」などの該当しない親にとってはネガティブになってしまう情報が溢れています。そのため子供への悪影響を気にしつつも、どうしていいかわからずに不安になってしまう親は大勢いるのです。
親のコンプレックスによる子供への悪影響を回避したいアナタ。まずは気にしすぎないことから始めて見ましょう。
1子供にマイナスなことばかり伝えない
「ママ(あるいはパパ)ができないから、あなたができなくても仕方がないのよ。」と何でも伝えていると、子供のやる気を削いでしまいます。これでは努力する前から成功の芽を摘んでいるようなもの。
子供の能力は遺伝+環境で作られます!決めつけてマイナスの言葉を投げつけたり、頭ごなしに否定したりしないようにしましょう。
2子供に過度な期待をかけない
少しでも良い人生を歩めるようにと、子供に期待をかけすぎる親は少なくありません。子供はそんな親の期待に応えたいと思う反面、負担に感じて苦しくなることもあります。
頑張っている子に必要以上に「がんばって」と伝えると、アンダーマイニング効果によりマイナスになる場合があります。期待しても必要以上に子供に感じさせないようにすることが大切です。
3子供でコンプレックスを解消しない
「自分ができながったから、子供にはできるようになって欲しい」と願う親は少なくありません。自分で叶えられなかったことを子供に叶えてもらえれば、確かにあなたのコンプレックスは解消されると感じるかもしれません。しかしあなたの子供の人生は、あなたのものではないのです。
4子供を比較しない
「お兄ちゃんはできたのに」「〇〇ちゃんは上手なのに、うちの子は…」などとすぐに比較したくなる親は少なくありません。しかし子供の成長スピードは様々。できない子は大器晩成型なのかもしれません。
「十で神童、十五で天才、二十歳過ぎれば只の人」とのことわざがあるように、早くできてもその後の努力を怠ると普通の人になるともいわれています。大切なのは今できなくても子供を焦らせず、その子のペースに合わせてサポートし続け成長をさせてあげることなのです。
5子供の気持ちを大切にする
「子供がやりたい」と思った気持ちを大切にしてあげましょう。「ママ(パパ)ができなかったのにできるわけがない」と最初から決めつけないことが重要です。
子供と親は別の人生を歩みます。当たり前のことですが再度心に刻み子供の気持ちをできるかぎり尊重してあげましょう。
6劣等感と向き合う過程を話す
子供が劣等感を抱いて頼ってきた時は、「パパも苦労したけど頑張って乗り超えよ」「ママも今、向き合って努力している最中なのよ」と、親が劣等感と向き合う過程を子供に伝えてみるとよいでしょう。
劣等感を子供に話すことに否定的な考えを持つ大人も少なくありませんが、ママやパパが身をもって苦労した経験だからこそ子供には生きた教訓になるのです。