自由保育は自主性が育つけどトラブル多発!?メリット&デメリット
自由保育を行う保育園や幼稚園は、多様化する保護者のニーズを満たす存在として注目されています。
けれどその反面、自由保育について知らない、あるいはきちんと理解しないで入園させてしまうと、家庭と園の方針が合わずにニーズとのズレが生じて、イライラしたりプチッとキレてしまったりする保護者もいます。
そこで今回は、自由保育と一斉保育の意味、自由保育のメリットとデメリット、自由保育の代表モンテッソーリ教育、自由保育との親の係わり方についてお伝えします。ぜひ失敗しない園選びの参考にしてください。
自由保育と一斉保育の意味
保育園や幼稚園の保育形態には、自由保育と一斉保育の2種類があります。どちらも子供の自発性を引き出して育む取り組みが行われていますが、保育士の係わり方が大きく異なります。
また自由保育が売りであっても、一斉保育の時間をある程度設けている保育園や幼稚園が多いのが実情です。
自由保育とは?
子供が自由に考えて遊ぶ中で、保育士がねらいに向けて指導をする保育形態を「自由保育」と言います。保育士は子供達一人一人が自発的に、自由な発想で遊べるように環境を整える必要があります。
具体例としては、子供が工作を始めた場合、保育士は工作に必要な道具(段ボール、ペットボトル、のり、ハサミなど)を用意し、子供が悩みだしたらアドバイスをするのです。
保育士は子供を見守りつつも、遊びを通じて思考力を広げる補助をします。そうすることで子供は自主的に考え遊びを展開し、納得のいくまで集中して遊びに没頭できるのです。
ただし幼稚園の場合は文部科学省管轄の教育施設のため、幼稚園指導要領で示されているねらいを達成させるために、保育園よりも活動範囲が狭いことがあります。
例えば、
- 基本は自由遊びで、朝の会と帰りの会はある
- 基本は自由遊びで、週1回の一斉保育の時間を設けている
一斉保育(設定保育)とは?
保育士が子供の成長に合わせた指導方針を立て、それをもとに指導をする保育形態を「一斉保育」または「設定保育」と言います。
具体例としては、リトミックや英語などのカリキュラムを多く取り入れている幼稚園や小学校のように、保育士が指示を出して子供に行わせるのです。
保育士が環境や遊びを整えているため、子供はスムーズに遊びに入り、集団に合わせて行動することを学ぶことができるのです。
自由保育と一斉保育のどちらを採用している園も、基本的にねらいは同じ。そのため一斉保育の園でも、活動の中で自由保育を取り入れています。
例えば、
- 全員登園するまでは自由遊びで、その後は一斉保育
- 基本は一斉保育で、お昼ご飯後の一定時間だけ自由遊び
自由保育のメリット~6つの恵み~
子供の健やかな成長のために質の高い自由保育をすることで、得られることは多くあります。ただし、保育士は子供に充実した遊びをさせることや、没頭できる環境を整えることが必要不可欠になります。
1主体的に考え行動できるようになる
自由保育は、自発的な行動を促す保育です。ですから遊び一つをとっても「今日は何をして遊ぼう」「誰と遊ぼう」と、0から自分で考えて行動に移すことができるようになってきます。
つまり何をやるか決まっていない状態でも、大人から指示を出されなくても、自ら考えて行動する力が見につくのです。
2自主性が身に付く
自由保育の保育園や幼稚園では、子供達がそれぞれ自発的に自分の遊びを考え、保育士の見守りやリードのもとで遊びます。
例えば保育者が保育スペースを工作、読書、お絵かきなどと遊びごとに区切った園の場合、子供達は自分がその日何をして遊ぶのかを決め、そのコーナーに行って自由に遊び始めます。
そのため保育者の指示待ちをせずに自分の判断で、その日の自分に必要な遊び(やるべきこと)を決めて行動に移す「自主性」が身につくのです。
3コミュニケーション能力が向上する
自由保育では子供自身が各々遊びを生み出すため、お友達との関りも深く濃くなります。
例えば「鬼ごっこの鬼は誰がやる?」「鬼をどうやって決める?」など、すべて子供の話し合いの中で遊びが進んでいきます。そのためコミュニケーション能力を自然に身につけていけるのです。
4探求心が育つ
自由保育では疑問にとことん向き合う時間を設けているため、興味のあることを突き詰めることができます。
園庭に花を発見したら、子供の「この花の名前何?花びらは何枚あるの?」との声から、子供たちの花の観察会が始まります。保育者が子供の「なぜ?」「どうして?」「不思議?」を刺激する働きかけをしてくれるので、子供の探求心が育まれるのです。
5問題解決力が向上する
「自由」であることが基本なため、問題も多く発生します。保育士見守りの中、子供同士で話し合いを進めながら問題に向き合います。子供同士のけんかの場合も勿論ですが、子供が抱いた疑問に対してもどうしたらこの疑問が解決するのか子供にじっくり考えさせるのです。
最初は上手く問題解決できないため保育士の手助けを多く借りていても、年齢と共に成長し自ら解決していこうと行動するようになるのです。
6語彙力が高くなる
NHK「おかあさんといっしょ」の番組開発やベネッセの「こどもちゃれんじ」の監修にも携わった、育児のスペシャリストでもあり心理学者の内田伸子先生によると、子供の読み書きの力や語彙力の高さは保育の形態と相関関係があります。
子供の読み書き計算や語彙は大人に一方的に教えてもらうものではなく、子供が自主的に興味を持ち学ぶ意味を理解した方が吸収率は高いとされています。そのため自由保育や家庭での共有型しつけを受けた子供の方が、語彙力が高くなると言われているのです。
自由保育のデメリット~心配される弊害~
自由保育の保育園や幼稚園の場合、周りの大人(特に保育士)が係わり方を間違えると、「自由」が「放置」となってしまうことがあります。そのため園選びの際にしっかりと見て選ばないと、保育の質に弊害が生じることもあるのです。
子供同士のトラブルが起きやすい
自由な行動や遊びが主なため、コニュニケーションやルールを守ることにおいて未熟な子供同士のトラブルは避けられません。みんなと上手に遊べない子供が出てしまったり、いつもおもちゃの取り合いになってしまったりといった様々な問題が起こります。
トラブルは子供にとって成長のチャンスにもなりますが、多発するトラブルに保育士が上手く対応できないと保育の質が下がってしまう恐れも。また解決がうまくできないと、逆に子供のストレスになりマイナスになることもあります。
子供はぶつかり合うことで成長できます。悲しみや痛みを経験することで相手の悲しみや痛みに寄り添える思いやりを育み、社会を生き抜くのに必要な強さや理不尽への耐性を身に着けることができるのです。
ただし子供の不満や落ち込みを軽くあしらうのはNG!親は子供の気持ちに寄り添い、状況に応じて園に相談し、園と家庭が協力して対応する姿勢が大切になります。
園や保育士によっては放任になる
きちんとした自由保育をするには、保育士の人数やスキルが必要になります。教室内で遊びたい子もいれば、お遊戯室で遊びたい子や園庭で遊びたい子もいるなど園児の興味は異なるため、園児の人数が多過ぎたり、活動範囲が広すぎたり、保育士のスキルが不足したりすると、目が行き届かなくなるため自由ではなく放任になってしまう恐れがあるのです。
残念ながら園によっては自由保育に適切な環境が用意できない、あるいは保育士のスキル不足により放任になってしまうケースもあります。そのため園の方針に賛同できて入園させたのに、入園後「方針に乗っ取って保育をしていなかった」となることも。こうした失敗をしないためにも、園選びに際にしっかりと見極めることが大切です。
保育園や幼稚園選びの際は、園児と保育士の人数、保育士の目が行き届く範囲で自由保育を行えているか、保育士などの目が足りているかなどを親の目で確認することが大切!ホームページやネットの口コミだけで判断せず、親子で見学して自分の子供と家庭の方針に合う園かをチェックしたり、在園児の先輩ママに聞いたりして情報を様々な方面から収集しましょう。
小学校入学後に戸惑う
幼稚園や保育園で納得いくまで問題点と向き合い、のびのび学び考えていた園児。しかし小学校に入学した途端に一斉保育に切り替わることで、時間から時間で区切られる学習になるため驚いてしまいます。
自由保育の保育園や幼稚園に通わせている子供の場合、そうしたデメリットを回避するために小学校入学前に習い事をさせるなどして、一斉保育に慣れさせる対策をしているご家庭もあります。
小学校入学後の決められた時間、決められた学習内容に子供が戸惑ってしまわないように、入学前から少しずつ同世代や年上の子供達と集団生活をする機会を増やしてあげるとよいでしょう。
自由保育の代表!モンテッソーリ教育
モンテッソーリ教育とは、イタリアの医師マリア・モンテッソーリにより生み出された教育法。子供の自発的な行動を重視している縦割り自由保育です。
子供達の発達のために必要とする活動に対して、大人が環境を整えるなどして援助します。子供は大人に見守られながら「やってみよう」「もっと頑張ろう」と意欲的、かつ自主的に成長していきます。
モンテッソーリ教育は集団生活を重視する日本の教育とは異なり、子供の自主創成を重んじます。その代表例が異年齢の子と学ぶ縦割りクラスや教育活動です。この教育活動は「お仕事」と呼ばれ、日常生活の練習、感覚教育、言語教育、算数教育、文化教育の5つで構成されていて、モンテッソーリ教育の特徴的な取り組みと言えます。
自由保育への親のかかわり方
自由保育の園に抵抗がある、あるいは興味があるのに入園させられなかったというご家庭では、モンテッソーリ教具を手作りするなどして、家庭内に自由保育の活動の一部を取り入れてもよいでしょう。
自由保育の保育園や幼稚園に入園させた場合、親はもし園に不満があっても、園の敵ではなく協力者となる姿勢が大切です!
保護者の中には自由保育や園の実情についてよく知らずに子供を入園させてしまい、入園後に園に不満をぶつけてトラブルになるケースもあります。けれど信頼している親と信頼すべき保育者がトラブルになれば、戸惑い傷つくのは毎日園に通っている子供なのです。
転園させない限りは子供が通い続ける園なのですから、どちらに非があるかではなく、保育の質を上げることが重要。どんなに腹が立っても「北風と太陽」の童話を思い出して冷静になり、子供の信頼を損なわない行動をとりましょう。
間違っても「保育料払ってるんだから!」などと上から目線にならないように。子供の目線や人格形成の大切な時期であることを気にして下さい。
園や先生のミスを攻撃するのではなく、たとえば家庭での様子などの情報提供、感謝や労い、相談、保護者会への参加や母の会の役員を引き受けるなどの協力をするといった、子供への保育の質が上がるような関わり方を心掛けましょう。