幼児の収集癖は何が原因?どんな心理?親が知っておくべき4つの視点
幼児が収集癖で集める物は、セミの抜け殻やダンゴムシ、アメの袋など、大人のコレクションとは少し異なることも多く、親には理解のできないことも少なくありません。「またいらないもの集めて」「物を捨てられないで集めちゃうのはパパと同じ」と、幼児の収集癖を疎んじたり、この行動は発達に関わるのではと心配したりする親御さんもいるでしょう。
幼児の収集癖の原因とは一体、何なのでしょうか。巷で言われている幼児の収集癖の原因や心理について、4つの説から子どもの心の成長を理解する視点を見ていきましょう。
1人間の本能的な行動としての収集
幼児の収集癖の原因は、人間の本能であるという説があります。人間は昔、狩りをして食料を得て生活をし、次第にそれを蓄えることで生活の安定を図るようになりました。
幼児の収集癖は、そうした人間の営みの昔からの名残だとする説があります。つまり、集めて蓄えるという行為は、生存に必要な安心感や満足感を得るための、人間の根源的な本能の一つであると捉えられています。この本能が強く表れている幼児は、自然と収集行動に夢中になるのです。この説に基づけば、収集癖は健全な成長の過程で自然に見られる行動だと言えるでしょう。
2コミュニケーションツールとしての収集
幼児の収集癖は、集めたものを話題にし、子供同士のコミュニケーションツールとして活用したいという社会的な心理が原因となっていることがあります。
子供が好んでグッズを集めたがる戦隊ものを見せたくないと思う親もいますが、戦隊ものアイテムをはじめプラレールやトミカ、リカちゃんやシルバニアの道具などは、収集したコレクションだけでなく今後集めたい物についても、幼児同士の共通の話題の種となります。
これは玩具だけでなく、例えばセミの抜け殻など興味のある物や好きな物についても同じです。「○○公園にいっぱいあるよ。」「昨日は5つ見つけたよ。〇〇ちゃんは?」など、収集物を通じて情報交換をしたり、共通の体験を共有したりすることで、仲間との絆を深めているのです。収集を通じたコミュニケーションは、幼児期の社会性の発達において重要な役割を果たしています。
3自己の欲求を満たし成長を促すための収集
幼児の収集癖は、欲求を満たしてステップアップするための一つの手段であると捉えることもできます。アメリカの心理学者アブラハム・マズローが提唱した「マズローの5段階欲求説」では、低次の欲求が満たされて初めて、人はより高次の欲求を満たそうとします。
物を収集し、それを自分の支配下に置くという行為は、安心感を得たいという安全の欲求や、仲間との共有を通じた所属と愛の欲求に関わってくると考えられます。特に幼児は、自分だけの特別な物を所有することで、精神的な安定を得ます。収集物を並べたり分類したりする行動は、秩序を求める心の表れでもあります。
安定した土台を持つことで、友人や社会から受け入れられたいという「所属と愛の欲求」や、認められたいという「承認の欲求」、そして能力を発揮して成長したいという「自己実現欲求」といった高次の欲求を持つことができるのです。収集行為は、子供の心の成長を支える大切なステップの一つであると言えるでしょう。
この心理を上手に利用した玩具の例が仮面ライダーです。2011年に放送されていた仮面ライダーオーズはベルトに集めたメダルをさして変身するもので、メダル集めが男の子の収集心に火をつけ、爆発的ヒットに繋がりました。
4特定の強い関心やこだわりとしての収集
幼児の収集癖の原因の一つとして、特定の強い関心や感覚的なこだわりが挙げられることがあります。厚生労働省のe-ヘルスネットにも、発達に偏りなどの特性を抱える人の特徴として、特殊な物を集める収集癖やこだわり行動があることが示唆されています。
ただし、特定の関心に基づく収集癖として指摘されるのは、ゼリーの蓋、マスク、ラムネの包み紙、毛糸や折り紙の切れ端、切った爪やはがしたかさぶた、耳垢など、他の人には理解されにくい特殊な物の収集や、ミニカーなどをひたすら一列に並べ続けるといった強いこだわりを伴う場合です。これらは、感覚的な刺激へのこだわりや強い不安が原因で起こっていると考えられています。
「収集癖=発達の偏り」と決めつけないでください!
発達に極端な偏りがない幼児にも、収集癖は自然に起こる行動です。ですから収集癖のみで根拠なく「発達に問題を抱えているのでは?」と心配する必要はありません。急な変更でパニックになりやすい、人と目を合わせられないなどの気になる特徴や、幼稚園や保育園など集団生活での度重なるトラブルがなければ、子供の強い好奇心の表れとして、収集癖を温かく見守りましょう。
乳幼児健診での指摘もなく、集団生活で目立ったトラブルがない幼児のママからも、「ゴミ箱から物を持ってきて収集するので困る」といった声は聞かれますし、カード集めや人形集めをする幼児は沢山います。昔から木の枝や石集め、落ち葉収集、牛乳キャップやビールの王冠をする子供は沢山いましたし、旦那さんの理解できない物を収集する趣味にイライラする主婦も少なくありませんので、収集癖だけで幼児が発達に問題を抱えていると決めつけないようにしましょう。
幼児の収集癖は男の子に多い?男女の集め方に見られる性差
幼児の収集癖は、男の子に多いと感じている親御さんは少なくないでしょう。これは、狩猟をしていたのは男性であるため、男の子の方が収集する本能が強く残っていて、収集癖がある子が多いという進化心理学的な説に基づいています。
ただし、女の子でも公園での石集めや葉っぱ拾い、海での貝拾いなど、コレクションとして物を拾って持ち帰るのを見たことがある親御さんも少なくないでしょう。一見同じ「収集」ですが、実は男女では収集に対する心理的な感じ方が違うのです。
男の子の場合、収集する行為そのもの(集めた量や種類、コンプリート)に喜びや満足感を得るのに対し、女の子の場合は収集した物そのものに価値(綺麗さ、可愛さ、物語性)を見出している傾向があります。
石集めの場合、男の子は公園から持ち帰ったという事実や数で本能が満たされるのに対し、女の子は石の中でも綺麗や素敵だと感じるものを手に入れたことに喜びを感じ、綺麗なコレクションにするケースが多いです。女の子は集めたものをディスプレイしたり、それを使ってごっこ遊びを発展させたりといった、創造的な活用に喜びを見出す傾向があります。
このように同じ幼児の収集癖でも男の子と女の子では性差があり、持ち帰った後の行動や満足感を得る対象が異なってくるのです。この違いを理解することは、子どもの興味を尊重し、伸ばす上で非常に重要になります。
幼児の収集癖は悪い癖?好奇心と学習への効果的な活用術
幼児の収集癖をマイナスだと捉えている親御さんは、その特性を否定せずに子供の学習や知育に活用することをおすすめします。
否定すると子供の自己肯定感が低くなったり反抗したりする恐れがありますが、長所とみなして活用すれば学習に大いに役立ってくれるので、子育てがよりスムーズになります。収集癖は、知的好奇心の強さと集中力の高さの表れでもあるのです。
集中力や継続力を育む見守り役として活用する
幼児期は大人に比べて集中力が不足していて、年齢+1分とも言われていますが、幼児が収集したコレクションに「見守ってもらう」という設定をすれば、やる気がアップして集中力を持続しやすくなります。
例えば、お絵描きをする際途中で投げ出してしまう幼児の場合、椅子の横にコレクションの車を並べて「車さんが見ているから頑張って完成させようね。」などとモチベーションを上げてみましょう。この方法は、継続力を鍛えることにも繋がります。
収集物を数えながら並べて数字の概念を教える
幼児が収集癖で集める物は、かなりの数がありますので、数を教える学習に使うとよいでしょう。公園から持ち帰ったコレクションを玄関で数えながら並べ、写真に撮ってあげるのもいいでしょう。この行動は、整理整頓の習慣を身につけるきっかけにもなります。
木の枝や石など種類の違うコレクションがある場合は、分別しながら数え、「石と枝どっちがいっぱいある?」などと聞けば、幼児の収集癖のお蔭でお金をかけずによい知育ができ、数の概念や比較といった論理的な思考を養うことができます。
収集癖を刺激するシールを使って継続力を鍛える
幼児の収集癖を刺激するキャラクターなどのシールを、目標をクリアする度に貼ってあげれば、継続力を鍛えることができます。これは、目標達成意欲を刺激する手法として有効です。
例えば、帰ってから手洗いうがいができたらシールを貼れるとなれば、幼児のコンプリート欲が刺激され、進んで手洗いうがいをしたくなりますので、ゆくゆくはこれをひらがな学習などにも使うことができます。ただし、学習に使う際は、注意が必要です。
知的好奇心を育てるために、ドリルを1枚やったらシールをあげるなどではなく、時間までに自分で席に座れたらなど学習習慣に対して与えるようにしましょう。勉強は報酬目的でするものではなく、自ら知りたいという欲求から行うべきだからです。
知的好奇心を育てたい場合、幼児期は自ら「知りたい」という欲を高めるのが最も効果的です。幼児の収集癖を刺激する物でつると、勉強への興味が育ちにくく、いずれ物欲が満たされた時に勉強嫌いになる恐れがあるからです。内発的な動機づけを大切にしましょう。
幼児はどんなものを集めたがる?子供の収集癖を刺激する物
幼児が収集する物は時代を反映していて、例えばおじいちゃんおばあちゃん世代は面子(めんこ)やビー玉、バッチ、切手、牛乳ビンのふたやビールの王冠などを集めていたのに対し、パパママ世代はキン消し、チョロQ、アニメのキャラクターカード、ミニ四駆などを集めていた人が多いでしょう。
ちなみに現代の幼児は、男の子ならトミカ(ミニカー)やプラレール(レールや電車)、女の子ならリカちゃんやシルバニアなどの人形の服や小物といった玩具から、石や枝、花、本人たちは工作した芸術作品のつもりの丸めただけの折り紙など、大人が価値に疑問を抱くものを集めていることもしばしばあります。自然物や日常の小さな破片にも価値を見出すのが、幼児期の収集癖の特徴です。
トミカは毎月新しい車が売り出されるため男の子だけでなくパパの収集心もくすぐりますし、シルバニアはママの時代は木製の家や家具だったのに、今はプラスチック製で現代風にアレンジしているため、お洒落な女の子のコレクション心を掴むのです。
幼児に火をつけるヒットおもちゃの要素は「収集・育成・対戦・交換」
幼児の収集癖を刺激するおもちゃのポイントは、「収集、育成、対戦、交換」の4つができる物と言われています。これは幼児期のみならず、ゲームをする小学生にも言える普遍的な魅力です。
代表例はポケモンです。ポケモンはまさにこの4つを柱として作られたゲーム。世界中に愛され、ゲームからアニメに広がり、現在ではハリウッドで実写版の映画が撮影され話題となるほど高い人気を誇っています。
男の子の場合は、戦隊ヒーローや仮面ライダー、ウルトラマンのカードゲームも、子供の収集心に火をつけます。休日にパパと家電量販店などで夢中になってゲーム機で対戦したり、カードを持って並んだりする幼児や小学生を目にしたことがある人も多いでしょう。
男の子の収集癖を刺激するプラレールの魅力
男の子の収集癖を刺激する玩具の代表格であるプラレール。毎年全国でプラレール博が開催され、入場に長蛇の列になることもある、子供たちが愛してやまないプラレールには、幼児の収集心を刺激する奥深い魅力があるのです。
車体の魅力!カッコ良さ+動きやライトなどの仕掛け
プラレール好きの男の子といっても、新幹線好きなのか、普通列車好きなのか、あるいは特急好きなのかなど好みは様々です。幼児が感じる列車の魅力は様々でしょうが、それを自分で手軽に走らせられるのですから、プラレールに夢中になるのは自然なことです。
けれどプラレールのさらなる魅力は、本物の列車の魅力だけに甘んじて作られていないところです。コネクション部分は幼児でも連結したり外したりしやすい工夫が施され、車体が低く車輪が4つという構造で脱線しにくいので、幼児が一人で自由に遊びやすいのです。
さらに種類によってはライトが光り、煙を出しながら電池で走るという動きの変化も、幼児の心をくすぐります。しかもパパがNゲージやプラレール好きな子の場合、Nゲージは高価で触らせてもらえなくても、プラレールなら自分専用の物をプレゼントしてもらいやすく、物欲も満たされます。
線路の魅力!自由自在に組み立てられるブロック遊びの要素
プラレールの魅力の一つは、幼児の遊びに特化して開発された線路です。一番小さなカーブの線路を繋げてサークルにする場合、テーブルの上で遊べるサイズとなっているため、住宅事情に関係なく省スペースで遊べます。
しかもブロックなどを自由に組み立てて頭の中のイメージを具現化したい幼児のニーズ通り、自分好みの線路を永遠に伸ばし続けられるのもプラレールの線路の魅力。これは創造力と空間認識能力を育む要素でもあります。
最初はシンプルな丸の線路しか作れなくても、子供の成長と技術もレベルアップします。その結果、よりすごい線路を作るために、もっと線路が欲しくなるのです。上手に線路を作り終えた時の子供の満足そうな顔は、見ていて大人まで嬉しくなってしまいます。
情景部品の魅力!立体建設やリアル感を楽しめる
プラレールが幼児の収集癖を刺激する理由には、トンネルや駅、陸橋などの情景部品の魅力も一役買っています。線路に踏み切りや駅、跳ね橋や鉄橋などのパーツを取り付ければ、立派な街を自分で作ることができるため、幼児の遊びが広がります。
さらにトンネルを取り付ければ一旦視界から消え、駅ならば停まるなど動きに変化を加えられ、ブロック橋脚を使えば2階3階建ての線路にするなど立体建築も楽しめます。これは、論理的な思考や問題解決能力を養う機会にもなります。
少し高いレベルが必要だけれど努力すれば手が届く遊びに、幼児は夢中になる傾向がありますので、プラレールには幼児がハマりやすい収集欲と達成感を満たす魅力が満載なのです。
女の子の収集癖を刺激するおもちゃの魅力
女の子の収集癖が刺激されるおもちゃと言えば、シルバニアファミリー、ポポちゃん、リカちゃん、レゴフレンズ、プリキュアグッズなどがメジャーですが、それぞれ次のような魅力があります。
シルバニアファミリーの魅力!家具が豊富でイメージを具現化しやすい
シルバニアファミリーは人形の可愛さだけでなく、家具の種類の豊富さも女の子を引き付ける魅力と言えるでしょう。理想の家を手軽に具現化でき、飾ればオシャレなインテリアにもなるのですから、イメージを具現化したい女の子が夢中になるのもうなずけます。集めることで物語の世界観を作り出せるのが大きな魅力です。
ポポちゃんやメルちゃんの魅力!お世話ごっこをリアルに楽しめる
ポポちゃんやメルちゃんはお人形が可愛いだけでなく、女の子がしたいお世話に必要な付属品があるのも大きな魅力でしょう。1歳ごろから徐々に見立て遊びを始め、3歳前後から色々なごっこ遊びをドンドン花咲かせる幼児。女の子は特にママの真似をしたがる傾向がありますのでお世話ごっこを好みます。
髪を切ったり、結んだり、おむつ替えをしたり、ミルクを飲ませたりと、他の人形ではしにくいリアルなお世話がポポちゃんやメルちゃんでは楽しめますが、人形用の洋服や聴診器、注射や買い物カゴなど家にある物では代用しにくい付属品が売られているのを知れば、ごっこ遊び全盛期の女の子の幼児が収集したくなるのも当然でしょう。コレクションがごっこ遊びの幅を広げるのです。
リカちゃんやバービーの魅力!自分がしたいお洒落を楽しめる
女の子に限らず女性はファッションに敏感で、男性から見ると収集癖と思えるほど洋服や靴、バッグを集める人も少なくありませんが、幼児の頃から女の子にはファッションへの興味や収集癖が見られます。
バービーやリカちゃんは豊富なラインナップで、女の子の収集欲を刺激しますが、人形だけでなく洋服や靴、バッグなどを集められるだけでなく、家や車、ボート、自転車、店舗などの商品を集めることで、お人形ごっこが楽しめるのも大きな魅力。ただし女の子ならどんなお人形や付属品でも欲しがるわけではなく、自分のセンスに合う可愛いと思うものだけ欲しがります。
レゴフレンズの魅力!お兄ちゃんのように街を作れる
女の子でも上の子が男の子の場合は兄の影響を受け、シルバニアファミリーで室内や庭などを自由に作ったり、レゴフレンズで街を作ったりすることに興味を持つことがよくあります。レゴフレンズはそんな女の子の収集癖を刺激する魅力にあふれています。次から次へと女の子が欲しくなる街のパーツが発売されるため、集めて組み立てることでオシャレな街並みを具現化し、お人形ごっこを楽しむことができるのです。
子育て4コマ漫画:気になる幼児の収集癖!よく考えると大人も?
幼児の頃から見えはじめる収集癖は、永岡さくら(SAKU)さんの子育て4コマ漫画のように大人になっても残ることが多いです。大学生へのある調査でも、収集行動の性差など、興味深い特徴が見られました。
収集癖は美術専攻の大学生に多い!?
埼玉大学の池内慈朗教授が行った80人の大学生を対象としたミニチュア(鉄道模型やドールハウスなど)の嗜好についてのアンケートでは、過半数以上に強いミニチュア嗜好があり、美術専攻の大学生は特にこの傾向が強く、収集癖も併せて持っている傾向がありました。このことから、芸術的な感性と収集への意欲には関連性があることが示唆されます。
ただしコレクションの内容は、カエルや鳥など生物系、空想ヒーローものなど幅は広く、統一性はありませんでした。
男性は遊戯性やコレクション性!女性は消耗品を収集したがる
埼玉県の私大生を対象とした収集物についてのアンケートの結果、男女ともに漫画を含む書籍を集めている人が多く、それ以外では男性はゲームカードなどの玩具、女性は文具(レターセットやペン、シール)や生活用品などの消耗品を収集している傾向があったそうです。この結果は、幼児期の収集の傾向が大人になっても継続している可能性を示しています。
幼児の収集癖に「なんでこんなゴミばかり」と思っているママさんパパさん、収集癖など子供の性格は親の影響を受けていると感じる家庭も多く、収集癖のある幼児は人にはわからない魅力を発見でき、何かに夢中になれるという素晴らしい能力を持った子供です。
その才能を否定せず受け止めて活かし、集めた物をコレクションとして保管する方法を教えたり、学習などに役立てる方法を教えたりしてあげましょう。収集癖は、子供の成長における大切な原動力となるのです。