子供の貧困と家庭教育に関する記事

『子供の貧困が加速する原因&スクールカーストへの家庭教育』

子供の貧困の原因や身近な子供の貧困サインを、体験談を交えてご紹介します!他人事と思っていると危険ですよ。

マーミーTOP  >  夫婦・家族  >  子供の貧困が加速する原因&スクールカーストへの家庭教育

子供の貧困は他人事?クラスに急増する原因&親がすべき家庭教育

最近ニュースでは、「子供の貧困」の話題が取り上げられることが多くなっていますよね。日本では今、子供の7人に1人が貧困に苦しんでいて、食事も満足に取れず、経済的な理由から希望する教育を受けることをあきらめる決断を迫られていると指摘されています。

子供の貧困は、私たちのこれからの社会にどのような問題点を投げかけているのでしょうか?同じ子供を持つ親として、子供の貧困とどう向き合い、自分の子供にどのような家庭教育をおこなうべきなのでしょうか?自分の子供が他人を見下すスクールカーストの加害者にならない子育て、貧困から脱却するための近道、子供の貧困トラブルへの親の対応などを一緒に考えていきましょう。

子供の貧困とは?日本で何が起きている?

日本では、厳密な「貧困」の定義はありませんが、厚生労働省の「国民生活基礎調査」と総務省の「全国消費実態調査」を使って算出している「相対的貧困率」というものを一つの目安として、格差について話し合われています。

貧困となる人は…

世帯収入から家族一人一人の所得を算出し、国の平均以下であった人です!子供の貧困は、17歳以下の子供が扶養されている世帯の所得を元にして、計算されています。具体的には、年間一人当たり122万円以下の収入の家庭です。2人世帯で244万円、4人世帯で488万円以下の年収の場合は貧困家庭となり、子供の貧困問題を抱えています。

子供の貧困が特に深刻なのは、親が一人の家庭です。2014年の調査結果では54.6%でしたので、離婚や死別などで父親や母親がシングルになった家庭は、およそ半数が子供の貧困問題に悩まされています。そう考えると、気づいていないだけで、貧困家庭は実に多いのですね。

日本の子供の貧困率の高さは、ユニセフの発表「レポートカード14」で37か国中23位、格差の大きさは41か国中10位と、世界的に見ても多くの日本人の予想をはるかに超えています。

子供の貧困が招く社会的な問題は?

調査結果からわかる通り、日本のひとり親世帯の子供の2人に1人は平均年収が半分以下の、貧しい状態で暮らしています。その結果、満足に食事をとることもできず、給食費を滞納する、制服や学用品が買えないなどの学業に支障が出ている子も多いです。

「なんで給食費を払わない人がいるんだろう。そういう家庭の子には食べさせなければいいのに!」という保護者もいるそうですが、事故や病死で突然世帯主を亡くしてしまう家庭もあり、払いたくても払えないのです。けっして他人事では済まされない問題ではないでしょうか?

また、日本の憲法では、誰でも教育を受ける権利を保障していますが、現実的には子供の貧困で教育を受ける機会が与えられない、学力が低下して上の学校に進学ができないなどの教育格差がすでに生まれ始めています。

子供の貧困が社会環境や経済成長を悪化!

少年院における新規収容者の3人に1人は貧困家庭に育った少年だという統計結果も出ていて、子供の貧困は社会全体の環境を悪化させかねない要因となり、教育格差が生じることで、優秀な働き手が減少し、社会全体の経済成長にストップをかけるリスクとなることが懸念されているのです。

子供の貧困は、父親と母親がそろっていて、一家が暮らすだけの十分な収入がある家庭から見れば、それほど重要な問題だと捉えにくいですよね。けれど、巡り巡って自分自身や子供達の未来に暗雲が立ち込める、深刻な社会問題の一つなのです。当事者家庭の親や、行政だけが考えるのではなく、社会全体の一人一人が、真剣に向き合っていかねばなりません。

子供のクラスにも急増!身近な子供の貧困とサイン

貧困と聞くと、ボロボロの衣服や、ガリガリに痩せ細った体などのイメージがありますが、周りを見渡してみても、そんな様子の子供は見かけませんよね。日本の子供の貧困はあまり人目につきにくく、それ故に表面化しにくいといった傾向があるようです。

周りにわかりにくいからこそ、一人で悩み、自暴自棄になってしまうなど、子供の貧困はぎりぎりの状態にまで追い込まれやすい危険性を持っているわけですが、苦しむ子供たちは何らかのSOSサインを出しています。身近な貧困のサインを見分けるポイントについて、実際の体験談から学んでいきましょう。

TAKAKO
36歳

おさがりは悪いことじゃないと思うけど…

小学生4年生と1年生の子供と一緒に、県営の集合住宅に住んでいます。同じような家族構成や子供がいる世帯が多いのですが、家の隣の棟に住むシングルマザーの世帯にうちと同じ小学1年生と3歳児の兄弟がいるのですが、やっぱり家計が苦しいらしくて、周りでも気にして「おさがり使わない?」と声をかけたりしています。
子供の服は着る期間が短いので、キレイなままおさがりできるものも多いので、相手のお母さんも「いつもありがとう」と言ってくれるのですが、靴にかかれた名前をペンで消して書き換えてあったりすると、やっぱり子供同士のなかには「お前のじゃないんだろ」なんて言う子もいるようです。

同じ集合住宅ということで、自分が着ていた服を見て「これあたしの服だったんだよ!」と言い出す子もいて、お母さんも子供もチョット肩身が狭い思いをしているみたいです。相手の子供にしても悪気があるわけじゃないみたいだけど、おさがりを指摘される子供の気持ちを考えると、かわいそうな気がしますね。

Y・高木
39歳

子供のせいじゃない

ウチの小学5年生の娘のクラスであったことです。クラスでよく忘れ物をする子がいて、鉛筆箱を持ってこないとか、音楽の授業でリコーダーを持ってこないということがしょっちゅうあって、先生からも度々注意を受けていました。私も娘から「○○ちゃん、いつも授業やる気ないんだよ」と聞いていて、あんまり学校生活になじめないのかなと思っていたのですが、実はおうちの家計が厳しくて、学用品を買えなかったのを「忘れた」とごまかしていたんだそうです。

そのお宅は、お父さんが病気で入院してしまい、お母さんが小さい子を保育園に預けられずに、仕事ができない状況なのだそうですが、先生に注意されてもごまかしていた子供さんの気持ちを考えると、誤解していて申し訳なかった気持ちでいっぱいです。

和子
48歳

貧しくからこそ学ぶ価値があるのでは

家の近くに、子供が7人いる世帯があります。その家の一番年長の子は、うちの長男と同い年の高校1年生で、小さい頃が同じクラスだったこともあって仲良かったのですが、息子に聞いたら、その子は県内でもあまりレベルの高くない工業高校に合格したものの、1ヶ月くらいで学校に行かなくなってしまったそうです。

小さい頃は割と頭の良い子だったと思うのですが、お父さんが「うちは子沢山だから貧乏だ。学校に出すお金はない」とその子に言い続けていて、その子自身が次第に勉強する気や進学する気がなくなってしまったようです。息子はなんだか気が合わなくなって、付き合いが疎遠になってしまったそうなのですが、たまにその家の前を通りかかると、下の弟たちを外で遊ばせてあげていて、特に体の具合が悪い様な様子はなく、不登校になるような感じは見られません。学校に通いたくないのではなくて、お父さんや家計を気にして行かないのではいかと心配です。

子供の貧困が差別や校内カーストを生むこともあります

親の経済的な理由からくる子供の貧困は、子供本人が教育格差に苦しむだけでなく、周りの子供達をも巻き込んで、子供達同士のなかでさまざまな差別や嫌がらせ、スクールカーストなどの、深刻なトラブルを引き起こしています。

私たち人間は集団生活をする生き物ですから、恥ずかしいことではありますが、自分と違うものや同じ行動をとらないものを排除する傾向があります。払うべき給食費を払えない子や、学用品がなく授業に参加できない子がいても、大人であれば理性で事情を理解して、相手を受け入れることもできるのですが、精神的に未熟で社会経験の乏しい子供はそうはいきません。

そのため、貧困のために自分達とおなじ行動がとれない相手に対して、

  • お風呂にはいっていない子に「汚い」といって、手をつなぐのを嫌がる
  • 「掃除をして金を稼げ」といって、掃除や仕事を押しつける
  • 学用品を持っていないことを理由に、授業中に無視をする
  • 勉強ができないことをからかう

などの心無い行動をとることもありますし、幼稚園や小学校の子供達ですら、意味のないカースト制を作り出してしまったという状況も報告されているのです。

みじんこ
40歳

小学校でカーストあるよ!と言う娘にビックリ

ある日、いつものように学校の様子をペラペラしゃべる小6の娘が、「あいつキモイ」と突然クラスの男の子のことを悪く言い出しました。「どうしたの?」と聞くと「だって臭いんだもん!フケもスゴイし…。絶対お風呂入ってないよ」とのこと。「それ本人に言ったの?みんなからかうの?」「本人には言わないけど、裏でね」「お家の人は何も言わないのかなぁ?」「だってお祖母ちゃんと住んでて、お母さんは遠くに働きに行ってるらしいよ。あいつ3軍だし」とのこと…。ビックリしました。

「もしかしてスクールカーストあるの?」と聞くと、「当たり前じゃん」と言い、まさか小学生にスクールカーストがあるなんて知らなかったのでビックリしました。しかも、子供の貧困でランク付けされるなんて…。親として悲しくなりましたが、きちんと向き合って話をしたら、理解してくれました。

当たり前のことですが、子供同士の交流の場でスクールカーストなどの差別や嫌がらせが横行することは、子供達の心の成長にとって悪影響しか及ぼしません

子供同士の差別や嫌がらせは、貧困にあえぐ子供たちの心を深く傷つけるだけでなく、「自分には価値がない」というネガティブな考えに追い込み、子供自身が貧困から脱却しようという意欲を奪ってしまいます。さらに周りの子供達に対しては、間違った優越感や価値観を植え付けてしまい、将来的に正しい人間関係を構築できなくなってしまうというリスクがあるのです。

みんな一緒に考えよう!子供の貧困の原因は?

子供の貧困の原因は、ズバリ親が充分な収入を得られないことです。こういうと「じゃあ、それは各家庭の親は働かないからいけないのだ」と自己責任論で考えてしまう人も多いのですが、問題の本質はそうではありません。2014年度の貧困率の調査の分析では、OECD諸国の場合は親が仕事を得て働くようになれば貧困率が下がるのに対し、日本の場合は親が仕事を得ても、貧困の度合いは変わらないという結果が出ています。

日本の一人親世帯の子供達は、どんなに親が働いても、貧困から抜け出すことができないということなのです!

親が働いて豊かになれないのであれば、子供の貧困は親の怠慢だけが原因ではありません。それでは、子供を養育できないのに離婚をしたこと、子供を産んだことが貧困の問題だと感じる人もいるかもしれません。しかし、子供は私たちの社会を支える大事な働き手で、産み増やすことができなければ社会全体が衰退してしまいます。

シングル世帯になる理由にはさまざまな理由がありますが、いま社会では暴力やモラハラを受けて家族関係が維持できない世帯が増えていて、離婚は親の身勝手な行動ではなく、子供を守るために必要な判断だったと認められるケースも増えています。死別であれ、離別であれ、シングル世帯になる可能性は、どの家庭でも可能性のあることです。

私たち人間の社会は、強い者と弱い者が協力をし合い、お互いに支えあっていく社会です。子供の貧困を生み出す一人親世帯の貧困に対しても、社会全体でフォローをしていけるように体制を考えていく必要があるのではないでしょうか。

子供を貧困から脱却させる近道は?

子供を貧困から脱却させる近道は、家計の収入を増やすために子供を早いうちから働かせることではなく、きちんとした教育を受けさせることです。

一般的に貧困家庭の子供は集中して勉強をする環境になく、その結果勉強が出来なくなって落ちこぼれ、進学して教育を受ける機会を失ってしまいがちです。その結果満足感や自己肯定感を得ることができなくなり、労働に対しても意欲を持てず、収入に結びつけることができないばかりか、社会的弱者として犯罪に走るリスクも高くなってしまいます。

若いうちに教育を受けることは、豊かな人間性を育てて知識を増やし、就業の機会と労働に対する意欲を与えてくれます。貧困と教育の問題は密接に連携していて、貧困の問題を家庭の自己責任で考えてしまうと子供の教育をおろそかにせざるを得ないことが多いので、これには社会全体のフォローが必要です。

子供の貧困を知った時!親が子供に教えるべきこと

世界大戦が終結し、戦後の復旧から高度経済成長期を経て豊かになった日本では、大人でもいざ自分がその問題に直面しないと「貧困」というものをリアルに感じ取れることはできませんし、純真な子供たちならなおさらです。ですが、日本では長く不況がつづいていて、貧困率は年々上昇しています。

今は生活に困ってはいなくても、病気や事故、進学や自宅の購入などの影響で家計が困窮する可能性はどの世帯にでもあることです。まだ小さくて理解できないと考えるのではなく、親として子供の貧困という社会問題があることは、知識として子供に教えていきましょう。最近は子供の貧困を取り上げたドラマなども放映されていますので、子供と一緒にそういったものを参考にして、話をするのもいいですね。

自分の子供に、経済的な問題を理由とした差別をさせないことも大事です。これは、自分の子供の豊かな人間性を育てるためにも、とても大切なことです。

子供の貧困への家庭教育

  • 子供には「経済的な問題を理由にした差別はいけないことだ」ということを教えましょう
  • 貧困をテーマにしたドラマなどを参考に、子供と一緒に家庭内で話し合いましょう

子供の貧困によるトラブル勃発!そのとき親はどうすべき?

体験談でもご紹介した通り、子供の会話の中から、子供の貧困サインは発見されるケースも増えています。もし子供の言葉の中で、お友達の様子やクラスの様子が気になったら、情報は学校の先生方と共有しましょう。貧困に苦しむ子供を適切にケアするだけでなく、差別などに走りがちな子供たちの心を早いうちにケアするためにも大事なことです。

子供の貧困に対する支援は、一家庭ではなかなか手を出せるような問題はありませんが、経済的な問題を理由としたトラブルが子供同士の中で起きている場合には、トラブルを大きくしないことが大事です。子供の貧困に関する問題はいま社会全体でフォローする体制を整え始めていて、それぞれの学校を拠点として家庭への福祉支援を広げていくスクールソーシャルワーカーの導入が始まっています。そういった専門機関の助力を借りて、トラブルの解消を目指していけるといいですね。

子どもの貧困の問題は、家計を担う親の収入が増えて生活が安定しなければ根本的な解決はできません。親に対する支援も始まっていますが、貧困が解消するまではまだまだ長い時間がかかることでしょう。問題が解決するまでの間、貧困に苦しむ子供が無用の差別や被害を受けることがないよう、家庭でも意識をちょっと変えて、子供の貧困に関するニュースなどに注目してみてはいかがでしょうか。

おすすめの記事