グリットとは?子供の「やり抜く力」を家庭で高める8つの方法
親になれば誰もが「子供には成功して、幸せな人生を歩んでほしい」と願いますよね。成功のかたちは、お金や安定した仕事、円満な家庭、好きな道での活躍など人それぞれ。だからこそ、早期教育に力を入れる家庭もあれば、習い事に打ち込ませる家庭もあり、親はそれぞれのやり方で子供を導いています。
そんな子供の幸せを願うパパ・ママに知ってほしいのが、テレビ番組などでも取り上げられ話題になった「グリット」という考え方です。この記事では、グリットの意味、家庭でできる簡易セルフチェックのやり方、そして子供のグリットを高める8つの方法を、親子で取り組める形でわかりやすく紹介します。
先にお伝えしておくと、グリットは生まれつきの才能ではなく、関わり方しだいで育てていける力です。今「うちの子は続ける力が弱いかも」と感じている人も、どうか気負わずに読み進めてくださいね。
グリット(やり抜く力)とはどんな意味?
「グリット(Grit)」とは、気骨・根性・ガッツを意味する英語で、立てた目標に向かって長期間あきらめずに取り組む情熱と粘り強さを表す言葉です。アメリカ・ペンシルベニア大学の心理学者アンジェラ・リー・ダックワース氏が、長く活躍する人に共通する資質として提唱したことで、教育や仕事の分野で広く注目されるようになりました。
ダックワース氏は、コンサルティングの世界から教師に転身した経験から、「IQが高い子が必ず良い成績を取るとは限らず、IQがそれほど高くなくても、ねばり強く取り組む子が優秀な成果を上げることがある」と気づいたといいます。そこから研究を重ね、たどり着いたのが「才能やIQだけで成果が決まるのではなく、やり抜く力が大きく影響する」という考え方です。
「十で神童、十五で才子、二十過ぎればただの人」ということわざがあるように、もって生まれた能力が高くても、それだけで道が開けるわけではありません。大切なのは、興味を情熱に育て、困難があっても努力を続けられるかどうか。グリットは、その“続ける力”を言葉にしたものだと考えると分かりやすいですね。
家庭で意識したいのは、「あの子は才能があるから」と決めつけないこと。才能の有無で線を引くより、努力を続けられる環境をどう整えるかに目を向けることが、グリットを育てる第一歩になります。
子供のグリットを簡易チェックしてみよう
グリットは目に見えませんが、ダックワース氏は質問への回答からその傾向を数値化する尺度を考案しています。アメリカの高校生を対象にした調査では、グリットの傾向が高い生徒ほど卒業まで続けられた割合が高かったと報告されています。粘り強さが、長く続けるうえで関係していることをうかがわせる結果です。
ここで紹介するのは、その考え方をもとにした家庭向けの簡易セルフチェックです。あくまで今の傾向を親子で振り返るための“きっかけ”であり、将来を予測したり、子供の優劣を決めたりするものではありません。その前提で、気軽に試してみましょう。
用意するもの
12の質問それぞれに、当てはまる番号をメモしていき、最後に合計して計算します。次の3つを用意しましょう。
- メモ用紙
- 鉛筆またはペン
- 電卓(必要な人のみ)
簡易チェックのやり方
まず、次の12の質問が、下の【回答】のどれに当てはまるかを考えて、番号をメモしていきましょう。
【回答】
- そうではない
- ややそうではない
- どちらともいえる
- ややそうである
- そうである
グリット簡易チェック12の質問
- 何を始めても、途中で投げ出さない
- 働きもの(がんばりや)である
- 目標達成のために挫折やスランプを乗り越えた経験がある
- 結果がなかなか出なかったり挫折したりしても、やる気を失わない
- 何年もかけて目標を達成した経験がある
- 一生懸命、役割や勉強に取り組む
- 興味のあることが年々大きく変わらない
- 新しい課題やアイデアが現れても、それまでのものへの興味をなくすことは少ない
- しばらく取り組んだ課題に、すぐ飽きてしまうことは少ない
- 何ヶ月も一つの課題に集中して取り組むのが得意だ
- 自分で決めた目標を、途中で別のものに変えることは少ない
- 追求したくなる興味が、数ヶ月ごとに変わることは少ない
すべて答えたら、選んだ番号を合計し、「合計÷12」を計算してみましょう(小数点第2位まで)。これがおおよその目安の数値です。回答は子供自身が答えても、親が客観的に見て答えてもかまいません。どちらか一方が正解というわけではないからです。
3を真ん中の目安と考えると、我が子が今どんな傾向にあるかが見えてきます。ただ、ここで大事なのは「すごい」「ダメ」と評価することではありません。12の質問を通して、やり抜く人に共通する姿勢を親子で具体的に知り、これからの関わりのヒントにすることが目的です。数値が低くても落ち込む必要はまったくありません。グリットは、ここから育てていけるのですから。
子供のグリットを高める8つの方法
簡易チェックの数値が思ったより低くて、少しショックを受けたパパ・ママもいるかもしれません。でも安心してください。グリットは生まれつきの才能ではなく、日々の経験を通して後天的に育てられる力だといわれています。早いうちから良い関わりを重ねることで、少しずつ伸ばしていけるのです。
そして子供がもっとも影響を受けるのは、身近で信頼している親の姿です。次の8つを意識して、親子で一緒にグリットを育てていきましょう。
1親がグロース・マインドセットを意識する
子供にやり抜く力を身につけてほしいなら、まずは親自身が「グロース・マインドセット」という考え方を意識して接することが出発点になります。これは心理学者キャロル・ドゥエック氏が提唱した考え方として知られています。
グロース・マインドセットとは
能力は生まれつきで固定されたものではなく、挑戦や失敗を重ね、そこから学んで工夫を続けることで伸ばせる、という考え方です。
私たちはうまくいかないと、つい「もともと向いていない」「自分のせいじゃない」と言い訳をして、問題から逃げたくなります。これは、能力は変わらないと思い込み、努力を無駄に感じ、批判を避けてしまう「フィックスト・マインドセット(固定的な考え方)」に近い状態です。反対にグロース・マインドセットでは、課題を受け止め、壁があっても続け、批判からも学び、他人の成功を刺激に変えていきます。
| 場面 | フィックスト・マインドセット | グロース・マインドセット |
|---|---|---|
| 難しい課題 | 避けようとする | 受け入れて挑戦する |
| うまくいかないとき | すぐに諦める | やり方を変えて続ける |
| 努力について | 努力しても無駄と考える | 努力を成長の糧と考える |
| 他人の成功 | 脅威に感じる | 学びの対象にする |
親が「やればできるようになる」という姿勢で日々を過ごしていると、子供への声かけも自然と変わっていきます。完璧な親を演じる必要はありません。まずは自分自身が、うまくいかない出来事に対して「どうしたらできるか」と口に出してみるところから始めてみましょう。その背中こそが、子供への何よりのお手本になります。
2子供の夢を頭ごなしに否定しない
子供が初めて夢を打ち明ける相手は、たいてい親です。その夢を真っ先に否定してしまうと、子供は希望を持つことも、努力を始めることもためらってしまいます。「どうせ無理」という言葉は、子供に「自分はできない人間だ」という思い込みを植えつけかねません。
親が言いがちな“夢をしぼませる”セリフ
- 医者になるにはお金がかかるから、うちでは無理よ
- 小説家なんて、なれっこない
- 海外の大学なんて心配で行かせられない
- 画家で食べていけるのは一握りの人だけ
子供は、親から繰り返し言われた言葉を「それが自分だ」と受け止め、そのイメージどおりに振る舞うようになりやすい、と心理学の分野でも指摘されています(自分にレッテルを貼ってしまう、という考え方です)。だからこそ、同じ言葉でも“しぼませる方向”ではなく“応援する方向”に言い換えたいものです。
| しぼませる言葉 | 応援する言い換え例 |
|---|---|
| 医者なんて無理 | どうしたらなれるか、一緒に調べてみようか |
| 小説家なんてなれっこない | どんなお話を書いてみたいの? |
| 海外なんて心配 | 行くために今からできることは何だろうね |
親が無理だと思っていた夢を、努力で実現した人は世の中にたくさんいます。子供の未来は誰にも決められません。否定の言葉をのみ込んで、まずは「いいね、どうやったらできるかな」と一緒に考える側に回ってみましょう。
3学歴や知性への見方を見直す
親はつい、次のような学歴・知性重視の価値観を子供に伝えてしまいがちです。
- 立派な人になるために、良い成績をとりなさい
- 良い大学に入れば、稼げる仕事に就ける
- しっかり勉強して資格を取れば、お金に不自由しない
もちろん学びは大切ですが、学歴や成績だけで将来が決まるわけではない、という見方が近年は広がっています。高い学歴があっても希望どおりの道に進めるとは限らず、粘り強さや人と協力する力といった、テストでは測れない力(非認知能力)が重視されるようになってきたからです。
親が成績やランクにこだわりすぎると、子供は「やりたいこと」を見失ったり、「成績が悪い自分はダメだ」と必要のない挫折感を抱えたりしがちです。それはやり抜く力の芽を摘んでしまいます。点数そのものより、「どこをどう工夫したか」という過程に目を向ける声かけへ、少しずつ切り替えていきましょう。
4共感力を育む
人は一人だけで大きな目標を成し遂げることはできません。長く努力を続けるうえでも、周囲と支え合う力は欠かせず、やり抜く力とあわせて「共感力」が注目されています。
共感力とは
相手の立場で物事を考えて気持ちを汲み取り、「この人なら分かってくれる」と信頼される力のことです。
共感力が高い人は、相手の視点に立てるため、批判も素直に受け止めて失敗から学べます。さらに周囲を勇気づけられるので、困ったときに力を貸してくれる協力者にも恵まれやすくなります。共感力もまた生まれつきではなく、身近な大人の関わりの中で子供が育てていくもの。まずは親が、子供の気持ちに「そうだったんだね」と耳を傾けるところから始めましょう。
5反対語に言いかえる“オポジットゲーム”をする
困難に直面したとき、見方を切り替えられると気持ちが折れにくくなります。そこでおすすめなのが、ネガティブな言葉を前向きな言葉に言いかえてみる“オポジットゲーム(反対語ゲーム)”です。遊び感覚で、今日から食卓や移動時間に取り入れられます。
| つい出てしまう言葉 | 前向きな言いかえ |
|---|---|
| 難しくて困る | やりがいがあって面白い |
| 失敗してしまった | やり直すチャンスができた |
| もういやだ | あと少しだけやってみよう |
| できない | まだできていないだけ |
反対の発想を口にする練習を重ねておくと、高い壁にぶつかったときにも自然と気持ちを切り替えやすくなります。親が先に楽しそうに言いかえてみせると、子供もまねして乗ってきます。勝ち負けにこだわらず、笑いながら続けるのがコツです。
6子供の失敗を笑わない
まだやり抜く力が育っている途中の子供にとって、失敗を笑われる経験は大きなダメージになります。強い恥ずかしさや劣等感を抱くと、夢や目標に挑戦する気力そのものを失ってしまいかねません。
子供にとって親は特別な存在です。だからこそ、何気ない一言やからかいが、心に深い傷を残すこともあります。「外でがんばってきたことを、家で打ち砕いていないかな」とときどき振り返ってみてください。失敗したときこそ、笑うのではなく「挑戦したことがすごいね」と挑んだ勇気をねぎらう。その積み重ねが、もう一度立ち上がる力を育てます。
7努力を認めてモチベーションを高める
夢の実現は、子供にとって遠い先の話です。何年もやり抜く気力を保つには、近くで支える存在が欠かせません。もっとも効果的なのは、親が子供をしっかり認め、積極的にほめることです。
このとき意識したいのは、点数や順位といった結果より、「最後まで取り組んだね」「工夫してたね」と努力の過程をほめること。結果だけを評価されると、子供は失敗を恐れて挑戦を避けるようになりがちです。過程に目を向けてもらえた子は、「もっとがんばろう」という気持ちを長く保てます。良いところを見つけて、具体的に言葉にして伝えていきましょう。
8いろいろなことに挑戦させる
やり抜く力は、夢中になれる対象に出会い、挑戦し、ときに失敗し、そこから学んで続ける——という経験の積み重ねで育ちます。「まだ早い」「危ないから」と、命に関わるわけでもないことまで親が先回りして制限してしまうと、子供は挑戦も失敗も、それを乗り越える経験も積めなくなってしまいます。
親にとっては不安な失敗も、子供にとっては成長のチャンスです。失敗が予想できても、まずは挑戦を見守りましょう。そしてうまくいかなかったときには、挑んだ勇気と、そこから学べたことをきちんと認める。安全だけは確保したうえで、思い切って任せてみることが、やり抜く力を育てます。
子供のグリットに関するよくある質問
グリット(やり抜く力)とは何ですか?
グリットとは、立てた目標に向かって長期間あきらめずに取り組む「情熱」と「粘り強さ」を表す言葉です。心理学者アンジェラ・ダックワース氏が提唱し、教育や仕事の分野で注目されています。一時的にがんばる力ではなく、マラソンのように長く努力を続けられる力を指す点が特徴です。才能やIQだけでは測れない、続ける力に光を当てた考え方だと理解するとよいでしょう。
グリットは生まれつきで決まりますか?
いいえ。グリットは生まれ持った才能ではなく、日々の経験や環境によって後天的に伸ばせる力だといわれています。小さな成功体験を積み、努力の過程を認めてもらいながら新しい挑戦を続けることで、少しずつ育っていきます。親が「やればできるようになる」という姿勢を見せることも、子供のグリットを育てる大きな後押しになります。
簡易チェックの数値が低いと、将来うまくいかないのですか?
そうではありません。今回の簡易チェックは、あくまで現在の傾向を親子で振り返るためのきっかけであり、将来を予測したり、子供の優劣を決めたりするものではありません。数値はこれからの関わりで変わっていきます。低い結果に落ち込むより、「どこを一緒に育てていこうか」と前向きにとらえることをおすすめします。
グリットは何歳ごろから育てられますか?
明確な年齢の決まりはありませんが、子供が興味を持って何かに取り組み始めた時期から、家庭での関わりで少しずつ育てていけます。年齢が小さいうちは「夢中になれるものに出会わせる」「挑戦を見守る」ことが中心になり、成長とともに「自分で目標を決めて続ける」経験へと広げていくとよいでしょう。発達には個人差があるので、よその子と比べて焦る必要はありません。
親が一番気をつけたいことは何ですか?
結果だけで評価しないことです。点数や順位ばかりをほめたり叱ったりすると、子供は失敗を恐れて挑戦を避けるようになりがちです。「最後まで取り組んだ」「工夫した」という努力の過程に目を向けて声をかけることが、やり抜く力を長く保つ支えになります。あわせて、子供の夢や挑戦を頭ごなしに否定しないことも大切です。
まとめ
社会は大きく変化し、決められたレールを歩むだけでは、多様な価値観の中で自分らしく生きるのが難しい時代になりました。だからこそ、興味を情熱に育て、困難があっても続けられる「やり抜く力」が、これからを生きる子供にとって心強い財産になります。
うれしいのは、グリットが生まれつきの才能ではなく、家庭での関わりしだいで育てていける力だということです。親がグロース・マインドセットを意識し、夢を応援し、努力の過程を認め、挑戦を見守る。その一つひとつの積み重ねが、子供の中に「自分はやればできる」という芯を育てていきます。
今日からできることを、どれか一つ選んで始めてみてください。完璧でなくて大丈夫です。親自身が楽しみながら学び続ける姿を見せることが、子供にとって最高のお手本になります。親子で一緒に、やり抜く力を少しずつ育てていきましょう。


