STEM教育とは~今求められるのはどんな人材?世界と日本の取組み
「STEM教育」とは何か、あなたは知っていますか?
日本国内での知名度はまだ低いのですが、アメリカ、アジア、中東、ヨーロッパ諸国など、世界中で以前から注目され、国を挙げた一大プロジェクトとして取組んでいる国もある、次世代に求められる人材を育成する教育のことです。
今回はSTEM教育・STEAM教育とは何か、先駆者であるアメリカの取り組み、STEM教育に関する日本の小学校の今後、STEM教育に家庭で役立つ本やおもちゃについてご紹介します。
STEM教育とSTEAM教育
STEMとは英語で植物の茎や幹を意味する言葉ですが、教育で使われるSTEMとSTEAMは英単語の頭文字をとった略語です。読み方はSTEM(ステム)とSTEAM(スチーム)。
今注目される2つの教育の意味について、まずはしっかりと理解しておきましょう。
STEM教育とは
科学技術の土台となる理数系の科目に力を入れた教育のことです。
- Science(科学)
- Technology(技術)
- Engineering(工学)
- Mathematics(数学)
コンピュータ社会となり、人工知能やロボットを用いて働く現代。S・T・E・Mスキルを持つ人材が世界中で必要とされている反面、人材不足が課題となっています。
そこでアメリカをはじめとする諸外国が、STEM教育を国家規模で進めているのです。
STEAM教育とは
STEM教育にArt(芸術)がプラスされた教育のことです。
「Artの授業=図工(図画工作)や美術」と捉えるのが一般的ですが、STEAM教育のArtは創造性の意味合いも含まれています。
またArt(美術)は、描写一つをとっても数学で必要になる図形を読み解く能力や、理科で必要な観察能力の学びに役繋がります。
先駆者アメリカのSTEM教育への取り組み
アメリカなどの諸外国では、以前からSTEM教育の重要性が注目されています。残念ながら現段階で日本は世界に先駆けている状態とは言えません。
最先端をいくアメリカではどのようにSTEM教育に取り組み、現在どのような成果が上がっているのでしょう。
2011年からの国の最優先課題
STEM教育は2011年、オバマ前大統領が演説で最優先課題として取り上げたことで、アメリカ国内だけでなく世界中で注目をされるようになりました。
オバマ大統領が国を挙げてのSTEM教育を政策として打ち出した理由には、次のような3つの理由がその背景にあります。
- STEM関連の職業需要が高まる一方での人材不足
- 国際学力調査でのアメリカの順位低迷
- 女性やマイノリティー(白人以外)はSTEM関連の職業についていない
2020年目標達成に向けて官民が連携
アメリカ政府は国の課題を解決するために、STEM教育への5つの目標を掲げ、国と民間が連携し、国家戦略としてSTEAM教育が進められています。
アメリカのSTEM教育への5つの目標
- 2020年までに初等中等教育の優れたSTEM指導者を10万人養成し、現STEM教師を支援
- 高校卒業までにSTEM分野を経験した若者を、毎年50%増やす
- STEM分野の大学卒業生を、10年間で100万人増やす
- 10年間でSTEMに関わりのない層の学位取得者を増やし、女性のSTEM人材増加を推進する
- 大学生院にて基礎から応用までSTEMを学ぶ環境を提供し、社会で活躍できるようにする
STEM教育推進の成果
アメリカでは今現在も5つの目標達成に向けての取り組みが行われていますが、既にその成果は見え始めています。なぜなら調査の結果、アメリカの若者の意識が変わってきたことが分かったからです。
OECD(経済協力開発機構)加盟国を中心に行ったPISA(15歳児の学習到達度調査)では、2番目の目標となっている学力はまだ改善していません。
けれど科学の楽しさについて肯定的な回答が見られ、科学関連の職業への就職意欲が増加し、その数値はOECDの平均よりも高いという今後の調査結果が楽しみになる結果が出たのです。
日本のSTEM教育と小学校の今後
今のところ日本の小学校では、パソコンの基礎やパソコンを使った調べ学習など、主要教科の学習と共にリテラシー教育が行われ、STEM教育に繋がるプログラミング教育は中学2年生から、技術・家庭の授業に若干組み込まれています。
文部科学省は2020年度からの新学習指導要領導入を発表していますが、この中では現在中学生から行っているプログラミング教育を小学生から行うなど、小学生の段階からSTEM教育を国内で普及させる内容が盛り込まれています。
STEM教育の目的
国内の科学技術開発の向上、そして日本の子供たちに国際社会のリーダーとして活躍できる力を身につけさせることです
そのため新学習指導要領は、STEM教育だけでなく英語やアクティブラーニングにも力を入れ、国際社会で子供達が生き生きと活躍できるような教育を行っていく内容となっています。
家庭で行おう!STEM教育
子供のうちからSTEM教育やSTEAM教育を家庭で取り入れることは、子供の将来の選択肢を広げるのに役に立ちます。イギリスのSTEM研究の中でも「STEM技能を持った人材はSTEM関連職であろうとなかろうとどちらも選べるのに対し、STEM技能を持たない人はSTEM関連職を選べない」と提言されるほど。
教育熱心なご家庭では、自然にこうした取り組みをしている様子も見られますが、子供の能力を伸ばしたいと思いつつもどうすればよいのか分からないご家庭では、ぜひ次のような取り組みを行ってみましょう。
1休日は家族で科学館や外遊びに行く
科学館はSTEM教育に打って付けの場所です。子供の「どうして?」「なぜ?」沢山発掘できますので、休日のお出かけ先に迷ったら家族で出かけてみるとよいでしょう。
ただし、遊園地や美術館、近所の公園や裏山でもSTEM教育はできます。
外で多くの刺激を受けた子供達は、「なぜ木の葉は、季節で色が変わるものと変わらないものがあるの?」「このジェットコースターはどうやって動くの?」「この美術作品はどうやって作るの?」などの疑問を感じます。
その時、親は一緒に考え、答えにたどり着く手助けをしてあげること大切。こうした働きかけが家庭でのSTEM教育に繋がるのです。
2家族で図鑑や本を楽しもう
子供の探求心を満たす図鑑や本は、STEM教育やSTEAM教育に適した教材です。日頃から図書館を利用し、家族で図鑑を楽しむ習慣を持つとよいでしょう。
こども大百科 大図解
小学館
小学館
3600円 + 税
理系に強くなる104項目を収容しています。身近な物から、スカイツリーや電気自動車、回転ずしまで色々楽しめます。分解図や透視図のイラストで視覚から入れるので、子供でも分かりやすいです。
科学技術への興味や知識だけがSTEM教育に役立つわけではありません。理系の大人達が子供の頃夢中になった生物や昆虫などの知識も、現在最先端医のSTEAM分野に役立てられて研究及び実用化されています。図鑑や本を使って、子供の興味にとことん付き合ってあげましょう。
ほんとの大きさ動物園
監修:小宮輝之
学研
1500円 + 税
原寸大の動物が載っています。その為、大型の動物だと顔だけしか載っていません。しかしそれがまたユニークで楽しいです。端に可愛いイラストで動物の解説があります。その内容も面白いです。シリーズ化しており、子供が興味のある物を選べます。
はっけんずかん うみ 改訂版
監修:武田正倫 絵:西片拓史
学研
1980円 + 税
仕掛けが面白く、子供が興味を示してくれます。海の他にも「はじめて」シリーズがあり、子供が興味のあるものを選べます。大人も仕掛けをめくりたくなる本です。
3プログラミングおもちゃをプレゼント
プログラミングに親しみが湧くようなおもちゃとして、レゴなどのブロックはよく知られていますが、こちらでもSTEM教育に役立つ3つのおもちゃをご紹介します。プログラミングおもちゃには高額な商品が多いので、プレゼントにおすすめです。
3歳から遊べるおもちゃもありますので、早い時期からSTEM教育やSTEAM教育の教材として遊ばせてあげるとよいでしょう。思わず親の方が集中してしまうおもちゃもあります。
Code-a-pillar(コード・ア・ピラー)
Fisher-Price
6,900円+税
対象年齢は3歳から。可愛いイモムシのロボットが「前進」「左折」「右折」の指示パーツの体を組み替え目的地に向かわせる遊びです。
シンプルな構造ですが音も鳴り、ロボットの動きに合わせてピカピカ光り小さな子供は楽しそうです。知らず知らずの内にプログラミングの基礎的な考え方が身に付きます。
キュベット プレイセット
PRIMO
29,600円+税
対象年齢3歳~6歳。温かみのある木のコントロールパネルで木製ロボット(キュベット)を動かすことができます。
パソコンは勿論、インターネット環境も不要で字の読めない幼児でも分かりやすくプログラミングできる所が魅力です。お話に沿ってキュベットを動かせば、子供も大喜びです!
別売りのストーリーマップを使用すれば新しいストーリーも楽しめ、プログラミングの概念が自然に身に付きます。
https://www.primotoys.jp/shop/
EKV-120s kovスターターキット
ソニーSONY
36,880円+税
対象年齢8歳以上。玩具にしては値段が高いのですが、プログラミングに親しみやすく、プログラミング教室に通うよりも安価に家で体験できることを考えれば、価値はあります。
自分で作った可愛いパステルカラーのブロックのロボットがプログラミングで動く姿は大人も子供も夢中になってしまいます。
STEM教育に役立つ理系脳は幼児から育てよう
今回はプログラミングに関係する玩具ばかりを紹介しましたが、ブロックや将棋、パズルといった理系脳育成に役立つおもちゃも、家庭でのSTEM教育として取り入れたい遊びの一つです。
子供が理論的に考えて遊ぶ遊びを、STEM教育としてどんどん家庭で取り入れましょう。幼児期から遊びでSTEMに触れることで、大人になった時に苦手意識が発生しにくくなります。