グルメの国イタリアの赤ちゃんはどんな離乳食を食べているの!?
世界に誇る奥深い食文化を持つイタリアの離乳食は、公の健康保険補助制度による家庭医(ファミリードクター)の小児科の医師によって指導を受けて進めるのが一般的。ところが近年あるイタリア人エンジニアによって提唱された「自然離乳」がマスコミ等に取り上げられるようになり、少しずつ広まって来ています。
そこで今回は、イタリアの従来の一般的な離乳食とイタリアの自然離乳食事情について、イタリアでの育児を控えたママやイタリアの離乳食に興味があるママに向けてご紹介していきます。
イタリアの離乳食と小児科医
イタリアの小児科医は、自分が受け持つ乳児の保護者に対し月齢毎に与えて良い食材や回数・与え方などのアドバイスをし、赤ちゃんの成長を毎月の健診を通してチェックし、もしも成長が著しく無い場合は親に問題点の改善を促したり、必要に応じてサプリメントや医薬品の処方を行ったりします。
そして食材は、一種類ずつ約一週間様子を見て肌に湿疹などのトラブルが起こらないか、あるいは嘔吐や下痢などの消化器系統の問題をたやすく起さないかどうか確認しながら新しい食材を試して、徐々に種類を増やしていくのです。
イタリアの離乳食はいつから?
イタリアでは赤ちゃんが生後5ヶ月前後になると、かかりつけの小児科医から離乳食のいろはについて簡単な指導を受けるようになり、まずは与えて良い食材や作り方、与え方についてレシピをもらいます。
イタリア保健省はイタリアのマンマに向けて離乳食導入の意義について次のように紹介しています。(注1)
イタリア保健省による離乳食導入の意義
- 生後6ヶ月を過ぎる頃になると乳児は母乳だけでは必要な栄養素を満足させることができなくなります。
- その位の月齢になると乳児は心理面・運動面・消化などの観点から母乳とは異なる栄養素を摂取する準備ができています。
- スプーンを受け付けて、密度の高い食品を飲み込める様になるので乳児用ビスケットや果物・野菜スープなどの固形あるいは半固形物の離乳食を始めらるようになります。
- 離乳食は赤ちゃんにとって必要な栄養素を母乳とは違った形で摂取するもの。
- 離乳期は嗅覚や味覚面での新しい経験を重ね、スプーンを口に受け入れる行為を習得するための大切な、そしてセンシティヴな時期。
基本的にイタリアの離乳食は、炭水化物・蛋白質・脂質・野菜などの食品群を一緒にした「一皿」タイプです(果物は別皿の場合が多い)。
イタリアでは乳幼児専用の食品加工メーカーがあって、厳しい保健省の基準と指導の下、各栄養群の食材を製造加工しているので(例えば、お米を粉にしたもの、赤ちゃん用の小さいパスタ、各種肉類のペースト、潰した果物の瓶詰など)、安心して購入・簡単に利用できます。
もちろん家庭に食品加工用の道具がある人や材料作りから自分で手作りしたい人は、それらを利用して生肉などをミンチ、ペースト状にして手作りしています。
イタリアでの離乳食の食材の進め方
かかりつけの小児科医から指導を受けた後は、いよいよ離乳食開始です。オリーブオイルやウサギ肉を与えるなど日本の離乳食の進め方とは脂質や肉類、乳製品の与え方などが異なります。
野菜類
野菜はミネラルやビタミン、繊維を含んでいるのでスープにして(初物でないものを)与えます。
卵、トマト、柑橘類などアレルギーを引き起こす可能性のあるものについては、赤ちゃんの成長と共に緩和される事があるので月齢が進んでから食べさせます。
炭水化物類
最初は消化が良いお米(米粉)から始めます。そしてグルテンを含まないトウモロコシ粉やタピオカ粉も与えます。
その後、グルテンを含む小麦・大麦・カラス麦類を与えていきます。
イタリアでは乳児にも赤ちゃん用の細かいパスタを与える習慣があります。赤ちゃんの体がグルテンを消化できる準備ができていればという条件付きですが、近年は小麦アレルギーのある子供も増えているため小児科医に相談しながら進めましょう。
赤ちゃん用のお米は調理済みのものが粉状で赤ちゃん専用に市販されていますが、無添加物で産地が分かっている原料を使用しているので安心して利用できます。
脂質
ビタミンEやオレイン酸を含むエキストラバージンオイルを熱を加えずに生で使用します。
他の種子から精製されたオイルやグレードの低いオリーブオイルは製造中に化学処理が施されていたりするため使いません。
肉類
何でも構いませんが、うさぎ肉は安心して与えられます。凍結乾燥(フリーズドライ)したものは消化が良いので離乳初期に使います。生の肉を使用する際は、脂身を除き茹でるか蒸すかした後、ミキサーかホモジナイザーでペーストにします。
市販されている瓶詰めは、鶏・七面鳥・豚・子牛・牛・兎・生ハム・子羊など種類が豊富です。
チーズ類
2年以上寝かしたパルメザンチーズが消化がよく、タンパク質のほかカルシウムを豊富に含んでいます。
また市販の赤ちゃん用の瓶詰めチーズは脂質が少なく、化学添加物やポリリン酸を含まず味も控え目なので安心です。
逆に赤ちゃん用でないとろけるタイプのチーズはポリリン酸を含み、消化管からのカルシウムの吸収を妨げるためお奨めしません。
果物
旬で良く熟した有機栽培か天然のものをミキサーかホモジナイザーでペースト状にするか、擦り下ろしたものを砂糖やレモンを加えずに食事の前後に与えます。もし赤ちゃんが気に入れば、好きなだけ与えてもいいでしょう。
瓶詰めのものは無添加。衛生面で安心ですが、砂糖が添加されています。果物ジュースやネクター果汁は果実だけでなく水と砂糖を含んでいるので、虫歯の原因にもなります。与える場合はおやつとして食事の時間からずらして与えましょう。
基本のイタリアン離乳食のレシピ
生後5ヶ月位から始める最初の離乳食の基本の作り方です。イタリアの離乳食では、この作り方が全てのベースになっていて、月齢が増えるに従って加えられる食材の種類と量が増えていきます。
少しずつ他の野菜を試していきますが、トマトは時としてアレルギー源になるのと、豆類は繊維が多くなるので除きます。塩は使いません。
離乳食用野菜スープのレシピ
完成した離乳食用野菜スープは冷蔵庫で1-2日保存可。冷凍保存も可能で栄養価は変わりません。多めに作っておいて小分けにして冷凍庫に保存しておきましょう。使う時に必要な分を解凍して使うようにすると手間が省けてお手軽です。
離乳食用野菜スープの材料
- じゃがいも 1-2個
- にんじん 1-2個
- ズッキーニ 1本
- ラットューガ(サラダ菜などのレタス類) 1枚
- 水 1リットル
- 材料を適当に切り、1リットルの水に入れて水量が半分になるまで茹でます(圧力鍋を使用すれば半分量の水を加えれば良く、20分でできます)。
- スープを濾します。
基本の離乳食のレシピ
一番最初に離乳食を作る時は、野菜スープは濾して野菜とスープに分け、スープのみを使います。徐々に、いんげん、ほうれん草、ねぎなどを加えてもよいでしょう。離乳食の味や色に変化をつけるために1種類の野菜のみを使用して(にんじんのみ、ズッキーニのみなど)スープを作り、それで離乳食を作ったりもします。
基本のイタリアの離乳食の材料
- 野菜スープ 180g
- 乳児用米粉 大さじ3
- オイル 小さじ1
- パルメザンチーズ 小さじ1
- 予め作った野菜スープを温め、そこに乳児用米粉(調理済みです)を加えます。
- パルメザンチーズ、オリーブオイルを加えて出来上がり。
離乳初期:4ヶ月~6ヶ月の進め方
食材の進め方や基本の離乳食レシピが分かったところで、もう少し詳しく離乳食段階ごとの進め方を見ていきましょう。
離乳食開始1ヶ月目
離乳食開始1週間後から、10gのフリーズドライした市販の乳児用肉粉を使用します。子羊肉が消化が良いので、まずはこのフリーズドライから始めると良いでしょう。
2週間後から、60gの肉のペーストを上記の基本の離乳食に加えて様子を見ます。
3週間後から、野菜はスープだけでなく茹でた野菜を潰してピューレにして加えて様子を見ます。
4週間後からは、1日のうち2-3回の授乳と(スープ量で)180g-250gの離乳食とを組み合わせていきます。
離乳食開始1ヶ月目以降
回数を昼と夜と2回にし、夜は昼同様のメニューから蛋白質の肉を除いて与えます(肉は1日1回)。果物は、1/2のりんご、あるいは、なしを擦り下ろして砂糖を加えずに与えます。
また、昼(あるいは)夜に与える離乳食以外は、母乳か人工乳180-250ml量を1回に与えましょう。人工乳を与えている場合は、離乳食前に与えていたものよりも栄養分が少なく調整されているミルクを使います。
離乳中期:7ヶ月~9ヶ月の進め方
離乳食に慣れてきた中期。イタリアでは次のような離乳食の進め方をしていきます。
生後7ヶ月目
野菜スープの量を200g-250g、野菜のピューレをスプーン3杯、タンパク質はペースト状の瓶詰めで80g、生肉量で40gに増やします。
おやつにはミルク180g-250g、あるいはヨーグルト(プレーンか果実入り)125g与えます。
7ヶ月のお昼のメニューに与えられる食品
- 1/2卵黄
- 肉か魚 赤ちゃん用の瓶詰めで60g-80g
- スプーン2-3杯の茹でてペースト状にした豆類
- スプーン2-3杯の野菜のピューレ
8ヶ月~9ヶ月目
量については7ヶ月同様ですが、加えられる食品が増えていきます。また、夜の離乳食で基本の離乳食にハム(生でない)20g~30gを、パルメザンチーズ(擦り下ろしたものスプーン1杯)の代わりに与えられます。
果物は、季節のものをミキサーなどで砕いて与えます。1日に1-2個位です。
10ヶ月目以降の食事
10ヶ月以降の離乳食は基本的に7ヶ月目のものと内容的には変わりません。赤ちゃんがもっと食べたがる仕草を見せたら、離乳食量を増やして対応していきます。
10ヶ月目
ドロドロ状のものを与える機会を減らしてミキサーで軽く砕いたものか、フォークの裏で潰したもの、あるいはハムやチーズなどは細かく切ったものを与えるようにします。
また、パンやビスケット、果物などの食材を細かく切って与えながら、噛んだり舐めたり吸ったりさせて噛み砕く練習をしていきます。しかし、食事中は大き目の食材が口の中に入らない様に注意が必要です。
11~12ヶ月目
ドロドロ状のものではなく、汁気の無いものや、小さく切ったものを与え始めます。また、家族と同じ物を食べさせたりできるようになります。
茹でたり蒸したりしたもの、汁気のあるものをオーブンで焼いたものなど、少ない調味料を使って調理したものなら試すことが可能です。また、生ものでも多少熱を通したものならば与えても構いません。
ただ、もし赤ちゃんが新しい食べ物を拒否したら無理強いはしないようにしましょう。普段の離乳食を食べていれば栄養的には不足ないので心配ありません。
自然離乳~Autosvezzamento
イタリアでは「Autosvezzamento(自然離乳、自己離乳)」という離乳方法が近年流行しています。イギリスにも離乳食を作らないベビー・レッド・ウィーニングという離乳方法がありますが、同じ離乳方法です。
自然離乳とは「母乳やミルクを主な栄養源としている赤ちゃんが、大人の食べ物に興味を示す生後6ヶ月位から始める赤ちゃんの自然な欲求に従った離乳の方法」と考えられ、生後半年以降の赤ちゃんの食事に固形物を取り入れるための新たな方法を指します。
自然離乳では、赤ちゃんに食べ物を残したり拒否する事に対するストレスを与えないようにしながら、少しずつゆっくりと、固形物を導入していきます。両親と一緒に、テーブルに並んだ食べ物を味見させながら、赤ちゃんが自分の好みや選択に任せて大人の食べているものを摂ることを学ばせるのです。
しかしながら、イタリアでは自然離乳について次のような指摘もあります。
- 科学的な裏づけがまだ不十分であること。
- 親の食習慣や食に対する考えに従って子供を導くのは子供の健やかな成長に結びつくのか懸念があること。
- 従来の離乳食が赤ちゃんの成長に必要な栄養素や問題点に関する様々な研究の結果生まれたものであることを尊重するべきではないかという意見があること。
イタリアの離乳食は手軽で安心♪
イタリアの離乳食はワンパターンですが、信頼のおける市販の赤ちゃん用食材を利用すれば毎日の離乳食も手軽に、メニューに悩むことなく、栄養的に心配ないものが作れるように配慮されています。これもひとえに小児科の医師達やその他多くのマンマ達の知恵と経験の賜物なのかもしれません。
ここで紹介したものはほんの基本ですが、もしご興味があれば、イタリアンの離乳食も取り入れて、是非、オリジナルのマンマの味を見つけて下さい♪