教育格差を乗り越えよう!お金がなくても今すぐ親ができる対策18
「勝ち組と負け組」「正規雇用と非正規雇用」など大人の世界で格差が叫ばれて久しいですが、世帯の所得や経済状況、親の学歴などの家庭環境によって子どもが学力への影響を受ける「教育格差」も、子育て世帯を襲う深刻な問題です。現在の日本では9年間は義務教育。子供達は誰でも平等に学校教育を受ける機会が与えられているはずなのに、なぜ格差が生まれるのでしょう?
今回は最近の社会問題ともいえる教育格差の実態や背景、子どもの学力向上に結びつく親の関わり方、そして格差を是正するために行っている国や学校の取り組みについてご紹介します。
お金を掛けなくても我が子の将来に良い影響を与えることはできますので、そうした機会を増やしていきましょう。
教育格差とは?その原因や背景
離婚率上昇や景気の低迷などの影響は、確実に子供達にも忍び寄っています。テレビCMからも「日本の子ども6人に一人は貧困」という情報が耳に入るようになりました。
2013年、文部科学省では全国学力テストと同時に「平成25年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)」を行い児童の家庭環境や保護者の意識を調査しましたが、その結果からも親の所得と子どもの学力(正答率)には明らかな相関関係があることがわかります。世帯収入が低い家庭ほど正答率が低いという傾向が見られたのです。(注1)
「親の所得が高ければ子どもを習い事や塾に行かせることができるし、逆にお金がなければ塾通いさせる余裕もないんだから当たり前でしょ」と思う人が多いでしょう。確かにそれも一理あるのですが、教育格差に拍車をかける原因は親の所得差だけではありません。
今の子供達が置かれている状況を親がしっかりと理解して対策をとらないと、教育格差がますます深刻になってしまうことを理解しておきましょう!
教育改革により広がる英語力等の学力差
近年の社会の変化にマッチした学校教育を行うために、2020年度から教育指導要領が改正されることは既にご存知の方が多いでしょう。
例えばアクティブラーニング導入やプログラミング教育、グローバル化に対応するための小学校からの英語の教科化などが行われるようになりますが、これだけ見ても新学習指導要領(注2)によって親世代が受けた教育からはかなりの変化です。
しかも新学習指導要領導入と時を同じくして大学入試も変わります。従来のセンター試験から「大学入学共通テスト(仮名)」へ、マークシートから記述式導入への変更が検討されていて、英語は民間の資格や検定試験が活用されることとなる方向で話し合われています。
これにより従来のセンター試験で「Reading読む」「Listening聞く」の2つの技能が問われていた状態から、「Speaking話す」「Writing書く」が加わり4つの技能が問われることとなるのです。
幼少期から英語教育を受けてきた子供達との学力差を、子供が学校教育と自力のみで補うのは困難。特に途中で新学習指導要領に変更になった子供達の中には、教科として小学校から英語教育を受けていない子供もいる訳ですから、受験までに新たな技能を高める時間が不足してしまうことも懸念されます。
地域間の格差
毎年新聞等で公立小学校全国学力テストの都道府県の順位や平均正答率が発表されますが、教育格差は同じ都道府県であれば同じように起こるわけではなく、地域によって異なることがわかっていて、次のよう地域では、子どもの学力が高い傾向が見られます。
同じように親の経済状況により通塾できない子どもでも、こうした地域に住んでいるか否かで学力に差が出るのです。(注1)
進学断念に繋がる重い学費負担
平成21年文部科学白書によると大学卒業までに各家庭が負担する平均的な教育費は、公立の幼稚園から高校まで在学し国立大学に進学の場合で約1,000万円、全て私立の場合で約2,300万円に上ります。しかも学費は上昇傾向。学費だけを見ても子育世帯の家計には大きな負担です。(注3)
そこに塾代がプラスされるとなると家庭の経済負担は相当なもの。
ところが文部科学省が平成19年に行った調査結果の報告を見てみると、小学生から塾通いする子供も決して少なくはなく、中学2年生になると50%、中学3年生は65.2%、その他通信添削や家庭教師を利用して中学生の4人に3人は何らかの学校外学習サポートを受けているのです。(注4)
家庭環境による教育格差
「平成25年度全国学力・学習状況調査(きめ細かい調査)」では、家庭の経済状況以外にも、子どもの教育を取り巻く環境について、保護者にアンケートを行っています。
そこから浮かび上がったのは、日頃の親の意識や保護者の最終学齢などの家庭環境も、子どもの学力に大きな影響を与えているという実態でした。(注1)
学力と密接に関係した保護者の関わり例
- 子どもが小さいころ、絵本の読み聞かせをした
- ニュースや新聞記事について子どもと話す
- 子どもが英語や外国の文化に触れるよう意識している など
家庭の経済状況が苦しければ子どもの教育を諦めなければならないのでしょうか?
確かに学力に対する影響は大きいのですが、親の所得だけで全てが決まるわけではありません。不利な環境に置かれても、それを克服している子どもは大勢いるのです。
お金がなくてもできる!親の教育格差対策
世帯収入が低いにも関わらず学力が高い子どもの親には次のような特徴が見ら、これらは全てお金がなくてもできる親の考え方や働きかけ。もちろん教育格差への対策にもなります。あなたはいくつできていますか?
あなたのYesの数は個です。
チェックの数が10個未満
まずは生活習慣を見直すところから1つずつ取り組む数を増やしていきましょう。中でも早寝早起き朝ごはんはとても重要。子供の日中の脳の活動や食欲、やる気に大きく影響します。基礎学力を高めるには授業中の集中力がとても大切なのです。
塾で勉強しなくても、これまで成績が悪くても、今から授業中に集中力を高めて覚えてくれればよいのです。こうしたサポートに力を入れて、将来自主的に勉強する意欲を育みましょう。
チェックの数が10個以上
共働きのご家庭では嫌でも子供に規則正しい生活を求めなければならないため該当するチェック項目が多い傾向がありますが、親子で出掛ける機会や子供の話を聞く機会などが不足してしまう傾向があります。
親が規則正しい生活や社会への興味関心をしっかり持っていても、子供の情緒が安定しないと学力に影響を及ばしますので、学校からのお便りをしっかりと読み、できるだけ学校行事に参加し、日頃から子供の話を「聞く」ように心掛けるとよいでしょう。
また一緒に過ごす時間は少なくても密度を濃くするよう努め、毎日の読み聞かせなど少しでも親の愛情に満たされる時間を作ってあげる、休日はたまに図書館や博物館等に家族で出かけるなど、子供が様々な物事や働くことに興味を広げられるように夫婦で意識し、子供の心を育てることを心掛けるとよいでしょう。
高学歴を望む親は要注意!
現役東大生に聞くと「子供の頃、親に勉強しなさいと言われたことがない」という回答が多く聞かれます。子供の意思を無視して勉強などを押し付けると子供のグリットを下げてしまう恐れがありますので、子供が自主的にやりたくなる関わりを意識しましょう。
教育格差への国や自治体の取り組み
教育格差の是正は、国にとっても早急に解決しなければならない問題です。均等であるべき教育の機会が奪われ、次世代を担う子どもたちの潜在能力や可能性が発揮できないことは、国の発展や未来にとってもマイナスだからです。国や自治体はどのような対策を行っているのでしょう。
就学支援
就学援助の充実や高等教育の無償化など、家庭の教育費の負担を減らすための施策です。義務教育段階では公立の授業料や教科書が無償となっていますが、実際にはそれ以外にも学用品や遠足・修学旅行費用、給食費など、多くの費用がかかっていて、公立小学校で年間約10万円、公立中学校で年間約17万円となっています。(注3)
就学援助制度とは市町村などの自治体がそうした費用の負担を就学困難な家庭に対して援助するものです。
また2014年4月から新制度となった高校授業料無償化も高等学校に就学するための支援金を支給するもので、家庭の経済的負担を軽くし、教育の機会均等を図っています。
奨学金
経済的な理由で進学を断念せざるを得ない優秀な学生の進学を支援するのが奨学金です。公的機関の日本学生支援機構が最もよく知られていますが、地方自治体や民間にも奨学金制度はあります。
日本学生支援機構には「貸与型一種」「貸与型二種」の2種類があり、「貸与型一種」は成績がズバ抜けて優れた学生が無利子で奨学金を借りられ、「貸与型二種」は低金利で奨学金が借りられます。ただし貸与型はどちらもいずれ返還しなければならず、就職後の生活が困難になるという問題もあるのです。
そこで2017年から日本学生支援機構による「給付型奨学金」が導入され、一定の基準を下回る世帯収入の学生が審査に通れば、返済不要の奨学金を借りられるようになりました。
教育格差は社会全体の課題
教育における格差は社会・経済の格差でもあります。一億総中流社会と呼ばれた時代と比べ、現代は格差が緩やかに進行していますが、教育を受ける権利・機会が誰にとっても均等にある社会こそが、これからの日本社会に望まれる姿です。
同時に家計に余裕のない家庭であっても、親が子どもの教育環境に関心を持ち、日頃から生活習慣を整え、読書や自主的な学習につながる環境を与えることで、金銭的な余裕がなくても学力を伸ばしていくことはできます。
親子で取り組むだけでなく、学校や地域と連携し、自治体の支援策も上手に活用するという視点を持って教育格差を乗り越えていきましょう。
参考文献