イタリア人の結婚観と現状に関する記事

『イタリア人の結婚観~失敗はご法度!?離婚率が最も低い理由』

イタリアは欧州でも先進7カ国の中でも離婚率が低い国。陽気で社交的、そして恋愛上手な彼らの結婚に対する本音、結婚観とは一体どのようなものでしょうか?イタリア在住、イタリア人との結婚生活20年の筆者が現状も併せてご紹介します。

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離婚率が最も低いイタリア人の結婚観~末永く夫婦円満でいる秘訣

人付き合いや恋愛にかけては天才的とも形容できるイタリア人。恋愛や結婚に関しても華やかなイメージがありますが、実はこれがいざ「結婚」となると慎重な人達で、離婚率は世界主要7カ国内で最も低いのです。一体イタリア人はどのような結婚観を持っているのでしょうか?

今回は夫婦関係に悩む日本人主婦にも学ぶところの多いイタリア人の本音と建前、イタリアの結婚や離婚の現状、そして結婚観について迫ってみたいと思います。

イタリア人の結婚平均年齢

イタリア国家統計局(Istat)が2016年に発表した婚姻に関する報告書によると、前年の2015年のイタリア人の平均初婚年齢は、男性は35歳、女性で32歳でした。

2001年のイタリア人の平均初婚年齢は、男性30.7歳、女性は28.8歳だったので、過去15年間で男女共4~5歳ほど晩婚化していることが分かります。

イタリア人と聞くと、明るくて陽気で楽天的で情熱的。要領が良くて、マイペースだけれども何だか憎めない…というようなキャラを思い浮かべるかもしれません。楽しいことが大好きで、友達とパーティを企画しては誰かが連れてきた初対面の人とも一緒に盛り上がれる社交性を持ち合わせています。

また人を褒めるのも失敗した時のフォローも上手いものです。彼らにもし気になる人ができたら、大抵の場合、即行動。自分の気持ちに正直で分かり易い人達だから、一生懸命気持ちを伝えてくるでしょう。

ただしプロポーズとなると話は別。中には10年後の自分達を何度もシミュレーションして、相手が本当に自分にふさわしいパートナーかどうか吟味する人もいるほどです。

イタリアで晩婚化が進む理由

イタリアで、近年、晩婚化が進んでいる理由は幾つかあります。

就労年齢の高さ

平均初婚年齢が上がっている理由の1つに、イタリア人の就労年齢が挙げられます。イタリアは日本と教育システムが異なるため、大学卒業年齢は早くて24歳か25歳。AlmaLaurea(イタリア大学共同体)の2015年の調査結果によると、イタリアの大学卒業者の平均年齢は26.5歳でした。

近年、高校卒業資格取得者の約40%が大学へ進学するようになりましたが、女性の大学進学率も上がってきています。

20代後半で大学を卒業して仕事を探し始めるとなると必然的に就労年齢も高くなるため、経済的に余裕ができて結婚を考えられるようになるのは30歳前後になってしまうのです。

経済的理由

経済的に低成長・低インフレが続いているイタリアでは、大学進学率が上がり大学卒業年齢が高くなったことが、新卒者の就職に不利であることが指摘されています。

企業は即戦力になる人材を採用したがりますが、企業が求める人材と大学教育の内容とが必ずしも一致しないため、理論重視の大学卒業者に対して消極的にならざるを得ないのが現状です。

加えて「変動する景気に対してどのような経営状況にあっても、途中解雇が許されない」という労働協約がイタリアにはある上、新卒者の人材教育に投資することはリスクが大きくなると考えられてきました。

その結果、たとえ首尾よく新卒者が就職できたとしても、キャリアを積んでいないことを理由に低い賃金報酬や不利な労働条件を受け入れざるを得なくなり、よりよい就業条件を求めて自己のキャリア形成に対応せざるを得ない状況になっていることが、結婚を先送りにする一因にもなっています。

カトリック教会の影響

イタリアはローマ法王のお膝元。国民の約7割がカトリック信者です。カトリックでは信者でないと教会で結婚式を挙げられません。

カトリックの教義には「結婚」に対して「離婚」の概念がありません。つまり、神に結んでもらった縁を当人同士の判断や都合で解くことは御法度なのです!

そのため1970年に通称「離婚法」が制定されるまで、離婚は認められていませんでした。ただし離婚法による離婚とは法律上婚姻を解消するという解釈なので、教会で挙げた婚姻そのものは存続します

イタリアでは2014年に離婚法が再改正されるまで、離婚するために非常に長い年月と費用を必要としました。「失敗は許されない」ことを考えると、結婚に対して慎重になってしまうのは致し方ないかもしれません。

多様化する価値観

ここ10年間のイタリア人の結婚の傾向として、教会で式を挙げる宗教婚ではなく、市役所で市長の立会いの下で式を挙げる民事婚が増加しています。

2016年5月には欧州で最後の主要国だったイタリアでも、同性同士のカップルにも法律婚と同様な権利を認める「パートナーシップ法」(シビル・ユニオン)が成立しました。そして昨今は民事婚ばかりではなく、事実婚あるいは同棲が増えているのも現実です。

「価値観の多様化」に基づく離婚法や家族法の度重なる改正、シビル・ユニオン法成立などにより個人の権利の幅を広げることにはなりましたが、別の視点から言えば、長引く不況やカトリックの教義、増えた個人の選択肢などによって結婚を躊躇するイタリア人像が見えてきます。

イタリアの離婚率の低さは宗教婚の影響?

2016年に発表されたイタリア国家統計局Istatのレポートには、「宗教婚を選んだ夫婦が別居に至る割合は全ての婚姻方法の中で最も少なく、経時的にみてもこの傾向は安定している」という興味深い報告があります。

イタリアの場合、別居に至ったカップルの平均婚姻年数は14~17年ですが、その間の離婚率を民事婚と宗教婚とで比較すると、宗教婚をした夫婦の離婚率は民事婚の場合の半数。また民事婚の割合はイタリアでは南部よりも北部に多いのですが、欧州全体で言えばイタリアよりも北欧の国々に多い傾向が見られます。

総務省統計局「世界の統計2017」を見ても、離婚の割合について言えば、欧州内ではイタリア0.よりも他の国々の方が高く、スウェーデン2.7、ドイツ2.1、イギリス2.0、フランス1.9。さらに世界主要7カ国の中でもイタリアが一番低くなっていて、ロシア4.5、アメリカ2.8、日本1.8となっています。

これは、イタリアが他の欧州諸国と比べて宗教婚で結婚した夫婦が多いためと、カトリックの結婚観が影響しているためと考えられます。

イタリア人とカトリックの結婚観

カトリック教会での結婚式は、神が二人を結びつけ、死が二人を分かつまで一緒でいることを、家族・親族、友人の前で新郎・新婦が(神に)誓いを立てる儀式です。そのためイタリア人にとって結婚式は、互いに大きな責任が伴うことを自覚して行う儀式なのです。

神聖で永遠たるものでなければならない

結婚によって男女はお互いに足りない部分を補い、一つになって完成します。そして夫婦の絆とは(たとえ、それを束縛という言葉に言い換えようとも)、相手に対して、自分に対して、そして二人に対して、強い責任感を持つことを意味しています。

ですからイタリア人は結婚に対して慎重ですが、一度教会で式を挙げたならば伝統的な結婚を受け入れ末永く縁を繋いでいこうとする傾向があると言えます。

長続きしないイタリア人夫婦の結婚観

離婚率の低いイタリアでも、経済的理由や子供の教育に対する考え方の相違・裏切り・共通の関心事がないなど、カップルのうち「もうたくさん!」と最初に言い出した側の何かしらの理由で、突然、愛も魔法も消えてしまうことがあります。

2017年1月にイタリアの新聞大手レプブリカ紙は、「なぜ夫婦は長続きしないのか?」というテーマRedditというオンラインのフォーラムに寄せられた1000件以上のコメントを元に、専門家も交えて結婚が長続きしない原因を分析したコラムを掲載しました。その内容から、結婚が長続きしないイタリア人夫婦の結婚観について見ていきましょう。

特別な日に結婚したい!

メルボルン大学の経済学者達の研究によると、バレンタインデーなどの何か特別の日に結婚したカップルは、そうでない日に結婚したカップルよりも18~36%離婚率が高いという結果でした。

パートナーに過剰な期待や希望がある

祭壇の前へ向かう前に何かしらの期待や希望があってパートナーを選択したにも係わらず、関係を終わらせてしまうイタリア人カップルもいます。その過剰な期待や希望とは、実は”幸せ”の遠い彼方にあるものだろうに。

イタリアでは2015年に前年と比べて民事婚をしたカップルの割合が8%増えました。
お互いに足りない部分を補い合い助け合うというカトリックの結婚観と異なる価値観を持つカップルは、相手に対する過剰な期待や希望が叶わなかった事を、「人生のパートナーの選択を間違えた」と結論付けて関係を終りにしてしまうことがあるのです。

情熱だけで結婚した

“情熱”という波に乗って(時には性的に惹かれて)、勢いで惹かれあっているカップルは、この状態が永遠に続くと思って結婚してしまいます。ところが、好きという気持ちだけで結婚し、後で「もういい!」となってしまうパターンが長続きしないイタリア人夫婦には多いのです。

この人達にとって一体愛とは何を意味しているのでしょうか?」とローマ大学の社会心理学の教授が指摘しています。

惹かれあっている間は努力なくそのままでも上手く行きますが、惹かれあうのは恋愛の初期の段階なので、それが過ぎれば生理的にはその関係は終わってしまいます。

イタリア流の結婚を長続きさせる秘訣

同紙には、私達日本人にとっても参考になるイタリア流の結婚を長続きさせる秘訣についての専門家の意見も掲載されていました。人生という長い道のりの中で夫婦生活に転換期が訪れますが、それは関係を上手く回すためにあるものなのです。

転換期は、二人の関係を上手く回し、幸せな家庭を築いていくためのチャンスになりますので、「不満や喧嘩があっても、離婚はしたくない」と思っている人は、ぜひイタリア人の結婚観を参考に自分自身を見つめ直してみましょう。

相手を受け止め、協力して家庭を築く

相手が必要としていることは何かを考え、それを行動に自然と移す。理性的に考えることも愛なのです。愛とは相手に継続して起こる事柄を認識し、それらを受け止めること。二人の将来の計画のためにお互いが協力し合い、二人で何かを作るために一緒にいたいと思うことなのです。

こうしたイタリア人の考え方が結婚を長続きさせるための基本的な出発点であり、上手くいかせるための秘訣!これがあれば、日常の仕事や経済的な問題も乗り越えられますし、子供ができても上手くやっていけるのです。情熱に任せた関係だけでは、人生の問題の前では十分な解決策にはなりません。

自分で選んだ相手だと心得る

一方、結婚について常に理性的に考えがちな人は、自分にはない考えを補ってくれることを期待して正反対の要素を選択したがります。例えば、ハンサムだとかインテリだとかいつも尽くしてくれるなど、自分にとって理想的な特徴を持つパートナーとは往々にして自分とは正反対の要素を持つ人である場合が多いのです。

これらの正反対の要素を持つ人は自分の基準で選んだ人なのである意味魅力的ですし、期待もしている訳ですから惹かれる可能性も高いはず。けれど”正反対”な人を選んで結婚した人は、自分の目の前にいる人に対して「傍にいると居心地が良いから近くにいたい」と考えているのが、他ならぬ自分達自身であるということも理解しておかなければなりません。

なぜなら長期間上手くいく関係とは、興味の対象や文化、また実質的に似たような事柄について共有できる何かがあるからです。

自分とは“正反対”な人を選んだ場合、相手が要求に対して正反対の行動をしてしまうかもしれないですし、自分自身もまた相手の要求と正反対のことをしているかもしれないのです。

結婚相手を奉仕する相手と考える

人生とは現実。パートナーに対する理想や期待については、それが過剰でなはいかよく考えておく必要があります。

また失敗した結婚の典型的な例に、”自分独りだけとり残されたくないから、誰でもいいから結婚した”というケースもありますが、どんな人との関係をも受け入れるということは、即ち”よく知らない人も含んだ誰とでも”ということです。これは危ないことです。

“選ぶ“ということは、イコール自分が奉仕する相手、つまり“介護する相手”を選ぶことだと考えるようにするとよいでしょう

相手の変化や不変を望まない

“自分の要求通りに相手に変わってもらいたい”と考えることも現実的ではありません。これは女性によく見られる考え方です。
対して男性の場合は、”パートナーに対していつまでも変わらないでいて欲しい”と願います。

現実に夫はあなたの思い通りには変わりませんし、あなたが変化しないのもまた不可能なこと。ですから変化に直面したら、上手く対応できるような柔軟性を持つことが大切です。

この記事を書いたライター

川島レア

イタリア人研究者と結婚後、イタリア生活早20年。現在、翻訳及び被服関係、バイリンガル教育活動中の2児の母です。