愛着形成とは?赤ちゃんの代わりに社会的なやり取りをする人との絆
赤ちゃんの愛着形成とは、ママやパパ、家族などとの間に心のつながりが生まれることです。
赤ちゃんの愛着はママに限らず他者とのコニュニケーションがとれない自分の代わりに、社会的なやり取りをしてくれる人に対して形成されます。
ちなみに愛着という言葉は「愛着のある服」や「家に愛着がわく」というように、慣れ親しんだものに特別な思いが生まれる時の表現として一般的に浸透しています。
一方、心理学でも同じような意味で、赤ちゃんと養育者との間に生まれる心の絆のことを「愛着(アタッチメント)」といいます。
愛着形成の対象者は赤ちゃんのお世話をする人だけじゃない!
赤ちゃんの愛着形成はこれまで、自分のお世話をしてくれる養育者に対して行われると考えられてきました。
けれど疑問を感じるママやパパがいるように、例えば双子の兄弟などいつも一緒にいる相手との間でも行われますし、逆にいつも一緒に暮らすパパに対してなかなか愛着が形成されないケースもあります。
赤ちゃんの愛着形成はいつからいつまで?生後間もなくから3~4歳
多くの赤ちゃんは生後間もなくから臭いや声でママを認識し始めますが、愛着形成の面では生後しばらく母親に限定せず周囲の誰にでも手を握る把握反射などをして相手を引き付ける行動をします。
生後3ヶ月~6ヶ月くらいになると赤ちゃんはパパなどの養育者も認識し、笑うなどの行動で働きかけくるようになりますが、愛着形成も特定の養育者に対して限定して声を発するなどの行動をするようになります。
生後6~7ヶ月を過ぎた頃からは特定の養育者への愛着行動がますます増えて後追いなどをするようになり、3~4歳になり安定した愛着形成ができると養育者が心に内在するため、一人でも外に興味を持って幼稚園などに出かけられるようになります。
赤ちゃんの愛着形成に最も影響がある時期は1歳
子供への虐待は愛着形成が正常に行われない原因となりますが、その影響を最も受ける年齢が後追いが激しくなる1歳という調査結果があるので、虐待とは無関係なママやパパも赤ちゃんの後追いにイライラせずに必要な行動だと理解して対応しましょう。
赤ちゃんが養育者との愛着形成をしっかり行えないと、親になった時に子供との愛着形成が行えずに虐待してしまうなど、次の世代その次の世代へと連鎖してしまうケースが多いです。
赤ちゃんの代表的な3つの愛着行動
自分では何もできない赤ちゃんですが、他者に自分を守ってもらうための本能として生まれつき愛着を深める能力が備わっています。
赤ちゃんが愛着を深める行動には、よく知られている掌握反射の他にも新生児微笑とも呼ばれる模倣など色々とあります。
1発信行動|泣き声などで気を引く
発信行動とは、自分のお世話をしてもらうためや欲求を満たすために、ママやパパの注意を引く行動のことをいいます。
自分のところまで来てもらうために泣き声を上げる、微笑む、ク―イングや喃語など声を出すなどが発信行動にあたります。
2定位行動|追視で位置を確認する
定位行動とは、安心感を得るためにママがどこにいるのか確認する行動のことをいいます。
「ママを目で追う」「ママの声がする方を向く」などして、赤ちゃんはママがいる位置をしっかり確認しているのです。発信行動と違って、定位行動はママには気づきにくい行動ですが、赤ちゃんはいつもママのことを見ています。
3接近行動|後追いなどで側にいようとする
接近行動とは、不安を感じた時などに自分からママやパパの方に近づこうとする行動です。
しがみつく、養育者に向かってハイハイする、後追いをするなどの行動は、愛着が芽生えた相手の側にできるだけいるために、赤ちゃんが自ら起こしている愛着行動なのです。
赤ちゃんが愛着を形成する条件とは?心のコニュニケーション説
赤ちゃんがママへの愛着形成を始めると、ママと離れた時に母子分離不安を起こす時期が訪れます。いわゆる人見知りです。
イギリスの乳児心理学者T.G.R.バウアーは、母子分離不安の時期が生後6~7ヶ月に始まり、2歳ごろに半減、4歳を過ぎるさらに急激に減少して6歳頃にはほとんどなくなることから、母子分離不安は言葉の発達と関係していることを突き止めました。
赤ちゃんや幼児の愛着形成は、言葉を使わず「あうんの呼吸」で気持ちを分かってくれる相手に対して行われる非言語コニュニケーションとの関係を唱えたのが、心のコニュニケーション説です。
お世話をするだけではなく、赤ちゃんの様子から何を欲しているのかを汲み取れる言葉以外のコミュニケーション力が高い方が愛着形成を促しやすく、たいていの場合はママが赤ちゃんにとって最も強い愛着形成の対象となります。
赤ちゃんの愛着形成を促す心のコニュニケーション力の高め方
赤ちゃんとの言葉以外の心のコニュニケーション力は、その子特有の毎回決まりきったルーティーンの共有を重ねることで高められます。
例えば、その泣き方は甘えたいだけとか、グズった後は熱を出しやすいとか。「生みの親より育ての親」という言葉があるように、心のコニュニケーション力は毎日お世話をしたり側で見守ったりすることで自然に身に付きます。
そのため側にいてもスマホやゲームに夢中で赤ちゃんの様子を見ようとしない親は、心のコニュニケーション力がなかなか高まりません。逆に出産直後で子育てに不慣れな親でも、毎日のお世話や触れ合いで心のコニュニケーション力を高められます。
赤ちゃんとの愛着形成につながる4つの方法
赤ちゃんの愛着の安定は、赤ちゃんが成長していく上で人間関係の構築などに大きな影響を与えることから、ママは、赤ちゃんが示す愛着行動にきちんと答えてあげることによって、赤ちゃんとの間に愛着を深めることが大切です。
赤ちゃんの愛着を深める方法には、次のような4つの方法があります。
1声掛けや語りかけ
ぐずって泣いている時は、とりあえず「どうしたの?」「ちょっと待ってね」など声をかけるようにしましょう。
赤ちゃんへの語りかけ育児の仕方は特に難しく泣く誰にでもできます。
どうしても分からない場合は、赤ちゃんが「あー」とか「うー」などの喃語を話している時におなじ音を目を見てオウム返ししたり、「上手にできたね」「気持ちがいいね」「おいしいね」などと声に出して褒めたり共感したりしましょう。
2笑い返し
赤ちゃんが微笑んだら、赤ちゃんに分かるように笑い返してあげるようにしましょう。
赤ちゃんは、生後3ヶ月を過ぎると視力も発達してくるので、ママの笑顔を真似することで、生理的微笑から「あやし笑い」と呼ばれる社会的微笑ができるようになります。
3アイコンタクト
赤ちゃんはつねにママの姿を目で追っていることから、しっかりと見つめ合いアイコンタクトで答えてあげるといいですね。
ママの姿が見えなくなって不安に感じているような場合は、「ここにいるよ!」と声をかけてあげると、赤ちゃんも安心します。感情を表現するのが苦手なママでも、アイコンタクトならできるのではないでしょうか。
4スキンシップ
赤ちゃんが「ママにくっ付きたい」「抱っこしてほしい」という愛着行動を見せた場合は、ぎゅっと抱きしめてあげるといいでしょう。
家事や上の子の世話などで忙しく、一日中赤ちゃんにべったりというわけにもいかないでしょうが、短時間でもいいので、ママとスキンシップをとることで、赤ちゃんの不安やストレスを取り除くことができます。
子供の愛着システムの4つのタイプ
子供の愛着行動は、不安やストレスを感じた際に「愛着システム」が発動されることによって起こります。
子供は個々に独自の愛着システムを持っており、愛着行動に対するママの「受け入れる」「拒絶する」「無視する」などの行動に応じて、徐々にシステムを身につけていきます。
子供が持つ愛着システムには、次のような4タイプがあります。
1安定型
愛着システムが安定して作動しているタイプで、ママから引き離された時は不安になって泣いたり、ママの姿を探したりします。
ママが戻ってくると、素直に喜んでママに抱きつく、そばに近づこうとするなどの愛着行動が見られ、子供の6割はこのタイプだと言われています。
2回避型
回避型とは、ストレスや不安を感じても、ママに対して愛着行動を起こさないタイプです。
ママから引き離されそうになっても、泣く・しがみつくなど行動がなく、基本的に無反応です。親の世話が不足していた子供や、放任されていた子供に多く見られます。
3抵抗/両価型
抵抗/両価型は、親に対して安心感を持てないことで、過剰な愛着行動が引き起こされているタイプです。
「両価」とは相反する感情を持つという意味で、ママから引き離されると不安になって激しく泣くのに、ママが戻ってくると、抱かれるのを嫌がるなどの拒否反応を見せることがあります。
親が神経質で過干渉な場合や、構い過ぎる時と無関心で放置している時の差が大きい場合など、子供に対しての愛着行動に一貫性がない場合に多く見られます。
4混乱型
混乱型は、回避型と抵抗型の混合タイプです。
ママから引き離された際に激しく混乱して、ママが戻った際に無反応になったり、激しく怒って叩くなどの拒絶反応を見せることがあります。
親から虐待を受けているなど、親の子供への関わり方に問題がある場合に多く見られています。
愛着形成のポイントは愛着行動を意識し過ぎないこと
赤ちゃんの愛着形成を意識するあまり、「赤ちゃんに常に答えてあげなければいけない」と思いつめると、ママにとってストレスになってしまいます。
赤ちゃんに対する愛着行動は、「授乳の際に抱っこする」「赤ちゃんの顔を見る」など、日常のお世話の中で当たり前のように行っていることから、ママは無理に愛着を形成しようとする必要はありません。
赤ちゃんに愛情を持って接していれば愛着は形成されていくので、自然体で赤ちゃんと向き合っていくことが大切です。