フランスの育児スタンスは、完璧な母親はいないから私が一番良い母親
「私が一番良い母親よ」。日本の子育て中の親には、なかなかそんな自信を持ちにくいものですよね。
ところが、女性の社会進出が進むフランスのママたちは、少し違う考え方を持っているといわれます。多くの人が「自分なりに、これがわが家の一番良い子育てだ」とおおらかに受け止める傾向にあるのです。
フランスのママはさぞかし子どもに尽くしていると思われるかもしれません。しかし実際は、産後の早期復職や公的保育の充実といった社会的な背景から、フランスは母乳育児の実施率が国際的にみて低めの水準にあることが知られています。OECDの家族データベースでは、生後6か月ごろに母乳を与えられている割合は、日本の約7割に対しフランスは約3割と報告されており、多くのママが早い時期にミルクも取り入れながら仕事に復帰しています。これはどちらの授乳方法が良い悪いという話ではなく、働き方や社会背景の違いを映した数字といえます。
子どもと離れる時間があっても、「これがわが家の子育て」と受け止められる自信。その背景には、育児と仕事を両立しやすいよう整えられたフランスの子育て支援体制があります。
この記事では、フランス人ママ流の子育てのコツ5つに加えて、夜泣きや寝かしつけへの考え方、日本で取り入れるときのデメリットや注意点、そして日本との子育て支援の違いまで、良い面と気になる面の両方をあわせて紹介します。
日本とここが違う!フランス人ママ流子育てのコツ5つ
子育て支援体制がフランスのように整っていない日本ですが、親の意識を少し変えるだけで近づける部分もあります。まずはフランス人ママの子育てのコツを知って、「うらやましいけど、これなら私にもできそう」と思えるところから参考にしてみましょう。
1 自分に自信を持つ
フランスのママたちが子育てで大切にするのは、自分自身を信じることだといわれます。育児書を何冊も買いあさることは、あまりしないのだそうです。
よく語られる合言葉は「完璧な母親はいない」。多少うまくいかなくても、命に関わるような危険さえなければ許容範囲と考えるおおらかさで子どもと接すると、気持ちにゆとりが生まれ、子どもにもやさしくなれます。
あなたは初めて子どもを持ったとき、どうやって子育てを学びましたか。育児書を読みあさったり、インターネットで検索したり、自分や配偶者の親の育児論を聞いたりした人も多いでしょう。
情報があふれる今は、必要な情報を選び取るのがひと苦労です。ある本で正しいとされたことが、別の本ではしてはいけないと書かれていて、どちらが正しいのかと悩むことも少なくありません。情報の多さそのものが、かえって不安をあおる一因になっているともいえます。
育児の情報に振り回されると
- 情報が多すぎて、何を信じればいいか迷いやすい
- 「こうあるべき」に縛られ、気持ちの余裕がなくなりやすい
- 自分の関わり方に自信を持ちにくくなる
2 いつまでも自分らしくいる
フランスの子育てで大切にされているのが、子どもを産んでも「一人の個人としての自分であり続ける」という姿勢です。パートナーに自分を「ママ」ではなく名前で呼んでもらう家庭も多く、名前で呼ばれることが、自分自身を保つことにつながるといわれます。
おしゃれや身だしなみを楽しむことも大切にします。パートナー同士としての関係を大事にする彼女たちにとって、子どもをベビーシッターに預けて二人で出かけることはごく自然なこと。小さな子どもから少し離れる時間に、過度な罪悪感を抱かない傾向があるようです。
またフランスでは早い時期から子どもを別室で寝かせる家庭が多いのも特徴です。「親子は川の字で寝るもの」という日本の習慣とは異なりますが、これは子どもの自立をうながす狙いがあるといわれています。ただし就寝環境は住宅事情や文化によって向き不向きがあり、日本で川の字を選ぶことももちろん自然な選択です(この点は後半のデメリットの項でも触れます)。
こうしてフランスでは早くから自立がうながされるため、成長後に祖父母と同居する家庭は多くなく、家族間の過度な依存や摩擦が起きにくい傾向があるとも語られます。
一方、日本では配偶者どうしが「お母さん」「ママ」と呼び合ううちに、「一人の個人」としての意識が薄れていくこともあります。役割に追われて自分の楽しみが後回しになりやすい点は、意識して見直したいところですね。
自分の時間を後回しにしすぎると
- おしゃれや趣味など、自分の楽しみが減りやすい
- 気分転換の機会が少なくなりがち
- 「役割」だけになって、気持ちの余裕を失いやすい
3 赤ちゃんが泣いてもあわてすぎない
フランスのママは、赤ちゃんが泣いてもあわてすぎない、とよくいわれます。すぐに抱き上げるのではなく、少しだけ見守り、なぜ泣いているのかを観察してから対応するという考え方です。夜に泣いたときも数分ほど様子を見て、抱っこの代わりに背中をそっとなでたり、歌を歌ったりすることがあるそうです。
「泣くのは赤ちゃんにとって自然なこと。自分を責めなくていい」と受け止めているのだそうです。
ただし、これは「泣いても放っておく」という意味ではありません。愛情を土台にしつつ、少しだけ待って様子を見る、という関わり方の違いです。日本では、抱っこで安心させる関わりも大切にされています。どちらが正しいというより、赤ちゃんの様子や家庭のスタイルに合わせて選ぶものと考えるとよいでしょう。泣き方や機嫌がいつもと違って気になるときは、無理に待たず、家族や地域の子育て相談などを気軽に頼ってくださいね。
フランスの育児哲学に基づいて語られる子どもの傾向
- 過度な甘えん坊になりにくいといわれる
- して良いこと・悪いことの区別が早めにつきやすいといわれる
- 人見知りが少なく、預け先になじみやすいといわれる
4 大人も生活の主役でいる
フランスでは、子どもだけでなく大人も生活の主役だと考えられています。保育・教育制度はその典型で、親が働きやすいよう、子どもを家庭の外で長い時間預かる仕組みが整っています。
そして、子どもが同年代の集団の中で社会性を学ぶことは、子どもに与えられた大切な機会だととらえられています。
集団生活の中でコミュニケーション力を育み、さまざまな大人と接する経験を重ねることで、社会性や他者を尊重する姿勢が身についていくと考えられています。
大人も主役でいる暮らしで期待されること
- 善悪の判断を自分でつけられるようになる
- 自分で責任をとることの大切さを知る
- 集団生活の中で折り合いをつける力が育つ
- 社会的なマナーが身につく
5 良い制度は120%活用する
フランスのママの特徴は、使える制度をしっかり活用して育児の負担を軽くする姿勢です。親に気持ちのゆとりがあることは、子どもにとっても良い環境につながります。
フランスは女性の就業が進んでいる国として知られます。OECDの統計によると、フランスの25〜54歳女性の就業率はおよそ8割(労働力率でみると約86%)と、OECD諸国の中でも高い水準です。働くことへの理解が社会に根づいていることがうかがえます。
子どもを持っても仕事を続けられるよう、さまざまな公的支援が整えられているのも、その表れといえますね。無理を一人で抱え込まず、頼れる制度は堂々と頼る。その考え方は、日本でも取り入れたいところです。
フランスの子育て支援の例
- 就業の有無にかかわらず、乳児期から利用できる保育施設(クレッシュ)がある
- 集団保育のほか、認定を受けた保育ママ(保育アシスタント)や在宅の保育サービスなど、預け先の選択肢が幅広い
- 乳幼児の受け入れ手当(PAJEなど)があり、保育費用の負担が軽くなる仕組みがある
- 3歳から無償の幼児学校(エコール・マテルネル)に通え、2019年9月からは3歳からの就学が義務化された
- 放課後や休暇中の子どもに対応する預かりの仕組みがある
制度の名称や条件は改正されることがあるため、実際に利用する際はフランス政府(service-public)などの最新情報を確認するのが確実です。
フランス式子育ての夜泣き・寝かしつけへの考え方
フランス式というと「夜泣きが少ない」というイメージを持つ人もいます。これは体質の違いというより、寝かしつけの習慣の違いから語られることが多いようです。フランスでは、赤ちゃんが夜に少しぐずっても、すぐに抱き上げず数分ほど様子を見て、自分で再び眠りに入るのを見守る家庭が多いといわれます。
また、早い時期から寝る時間のリズムを整え、就寝の流れをある程度決めておくことも特徴です。決まった時間に、決まった手順で寝室へ、という枠組みが、子どもが安心して眠るのを助けると考えられています。
一方で、これは万能の方法ではありません。赤ちゃんによって個性は大きく違い、住環境や家庭の考え方によって合う合わないもあります。日本では、抱っこや添い寝でしっかり安心させる関わりも大切にされてきました。フランス式の「少し待つ」考え方を参考にしつつ、赤ちゃんの様子を見ながら、わが家に合うやり方を選ぶのが現実的です。いつもと様子が違って心配なときは、待つことにこだわらず、周囲や地域の子育て相談を頼ってくださいね。
フランス式子育てのデメリットと日本で取り入れるときの注意点
魅力の多いフランス式ですが、そのまま日本に持ち込むと合わない部分もあります。良い面だけでなく、次のような点も知っておきましょう。
- 前提となる社会制度が違う:フランスの「制度をフル活用する」暮らしは、手厚い公的支援があってこそ成り立っています。支援の仕組みが異なる日本では、同じようにはいかない面があります。
- 住環境や文化が違う:早い時期からの別室就寝は、住宅事情や生活スタイルの違いから、日本では取り入れにくい家庭も多いです。川の字で寝ることも自然な選択で、無理に合わせる必要はありません。
- 「大人が主役」を極端に受け取らない:親の時間を大切にする考え方は魅力的ですが、行きすぎると放任と受け取られかねません。あくまで愛情が土台にあることを忘れないようにしたいですね。
- 「泣いても少し待つ」は全員に合うわけではない:赤ちゃんの個性や体調によって向き不向きがあります。気になるときはすぐ対応し、周囲を頼ることが大切です。
- 「自由」に見えて実は枠がある:フランス式は甘やかしではなく、食事のマナーや「待つこと」など、守るべき枠をはっきり示す点で、ある意味では厳しさもあります。良いとこ取りをするなら、この「枠を示す」姿勢もセットで参考にしたいところです。
大事なのは、まるごとまねることではなく、自分の暮らしに合うエッセンスだけを取り入れることです。
フランスと日本の子育て支援はどう違う?
「フランスと日本で、子育て支援は何が違うの」という疑問に応えて、主な違いを整理しました。制度は改正されるため、大まかな傾向としてご覧ください。
| 項目 | フランスの傾向 | 日本の傾向 |
|---|---|---|
| 預け先の選択肢 | 保育施設に加え、認定を受けた保育ママや在宅保育など幅が広い | 保育園・認定こども園などが中心で、地域により空き状況に差がある |
| 就学前教育 | 3歳から無償の幼児学校に通え、2019年から就学が義務化 | 幼稚園・保育園などを各家庭が選択、義務ではない |
| 費用の負担 | 乳幼児向けの手当や補助があり、負担が軽くなる仕組みがある | 無償化が進む一方、地域や年齢で条件が異なる |
| 働き方の意識 | 子どもを持って働くことへの理解が社会に根づいている | 両立支援は拡充中だが、意識や環境に差がある |
日本でも、自治体の子育て支援や一時預かり、地域の子育て拠点など、使える仕組みは少しずつ広がっています。「知らずに使っていない」ことも多いので、住んでいる自治体の窓口で確認してみるのがおすすめです。
フランスのママは育児ノイローゼにならない?ストレスをためない考え方
「フランスのママは育児ノイローゼと無縁なの」と思うかもしれませんが、そんなことはありません。フランスでも子育ての悩みや疲れはあります。違うのは、支援制度が整っていることと、一人で抱え込まず周囲を頼るのが当たり前という文化がある点だといわれます。
日本では「良い母親でいなければ」という思いから、頑張りすぎて気持ちの余裕を失ってしまうことがあります。フランス式の学ぶべき点は、テクニックよりもむしろ「完璧を目指さない」「頼れるものは頼る」という肩の力の抜き方かもしれません。
もし気持ちがつらいと感じたら、我慢せず、パートナーや家族、友人に話してみましょう。自治体の子育て相談窓口や地域の子育て支援拠点など、気軽に頼れる場所もあります。一人で抱え込まないことが、自分にとっても子どもにとっても良い環境づくりの第一歩です。
フランス式子育てをもっと知りたいときは
フランス式の子育ては、書籍でも数多く紹介されています。考え方を体系的に知りたい人は、関連書籍を手に取ってみるのも一つの方法です。読むときは、「これが正解」と鵜呑みにするのではなく、わが家に合いそうな部分をつまみ食いする感覚で参考にすると、気持ちがラクになりますよ。
フランス式子育てのよくある質問
フランス式は厳しいのですか?
自由でおおらかに見えますが、食事のマナーや「待つこと」など、守るべき枠ははっきり示します。甘やかしとは違うという意味で、芯のある関わり方といえます。
泣いてもすぐ抱っこしないのは放置では?
放置とは異なり、愛情を土台に「少し観察してから対応する」という考え方です。赤ちゃんによって合う合わないがあるので、様子が気になるときはすぐ対応してください。
別室就寝は日本でも取り入れるべき?
住環境や文化によって向き不向きがあります。川の字で寝ることも自然な選択で、無理に合わせる必要はありません。
日本でも取り入れやすいのはどれ?
「完璧を目指さない」「自分の時間を大切にする」「使える支援を頼る」という考え方は、制度に関係なく今日から取り入れやすい部分です。
フランスの育児ルールに学ぶストレスフリーな育児とは
少子化が進む日本では、子どもはまさに宝物です。大切に思うあまり過保護になったり、子どもとの関係に依存しやすくなったりと、今の日本の子育てが抱える課題も指摘されています。
また、誰にも頼れずにストレスをため込み、つらい状況に追い込まれてしまう親も少なくありません。だからこそ、早い段階で頼れる先を持っておくことが大切です。
日本の子育てには「主役は子ども」「親は世話をする人」という意識が根強く残り、「良い親でいなければ」という思いが重くのしかかりがちです。
その点フランスでは、親自身も生活の主役ととらえ、頑張りすぎず、公的な支援を積極的に使うことで負担を軽くしています。
大人の都合を優先するのか、子どもを優先するのかは、賛否の分かれるテーマです。それでも、一緒にいる時間の長さより、一緒にいる時間の質を大切にするというフランスの考え方には、日本の子育てにも生かせるヒントがたくさんあります。良い面と気になる面の両方を知ったうえで、わが家に合う形で取り入れていきましょう。



