親になるとペナルティを背負うって本当?幸福度を下げない子育て
「親ペナルティ」という言葉を初めて耳にした人の多くは、「親になることは人生のペナルティを背負うこと」と捉えるでしょう。けれど本当の意味は少し異なります。
「親になること=ペナルティ」あるいは「不幸の始まり」とは言えません。ではなぜ親ペナルティという言葉が存在し、親になることで幸福度が下がったと感じる人が実在するのでしょう。
親ペナルティの正しい意味や子育ての現実、人間の幸福について、さくさんの子育て4コマ漫画を楽しみつつ、一緒に探っていきましょう。
親ペナルティは社会学用語?本当の意味は?子供のいない親との幸福度のギャップ
2017年、親ペナルティに関してネットがざわつき、「親になること=ペナルティ」という誤解によりプチ炎上しました。火元となったのは2017年9月にプレジデントオンラインで配信された「親ペナルティを40歳で負う覚悟はあるか」というコラム。
このコラムによると親ペナルティとは社会学用語で、子供のいる夫婦といない夫婦が感じる幸福度のギャップを意味しているそうです。
この記事の裏付けとなっているのは、立命館大学教授筒井淳也氏の書いた「なぜ日本では「共働き社会」へのシフトがこんなにも進まないのか?」という講談社現代ビジネスの記事。
確認すると確かに親ペナルティについてプレジデントと同様の説明がされており、一般的に子供を持つことで親の幸福度が下がると記されています。
ちなみにネット上には、社会学用語に親ペナルティという言葉はなく母親が家族のために社会的に支払う代償を示す「母親ペナルティ(motherhood penalty)」のことだろう、という情報もあります。
昇進コースから外されたり、限られた仕事しかさせてもらえなくなったりするマミートラックも、この母親ペナルティに含まれています。
「親ペナルティ」という言葉がプチ炎上!その理由とは?
親ペナルティという言葉がプチ炎上した理由は、親になり子育てをすることで今まで楽しんでいた高級フレンチがファミレスとなり、デパートで買っていたブランド服が「しまむら」になりといった金銭面などの子育て中の環境の変化によって親の幸福度が下がるというイメージからきています。
もちろん言葉通りの「ペナルティ=罰則、罰金」というイメージにより、「親になったことで受ける罰則」のような意味だと勘違いした人が多かったこともプチ炎上となった理由の一つです。
このような局面は多かれ少なかれ親になると現実として起こり得ること。しかし物質的欲求や自己実現欲求の一部が満たされないことが親になった自分の人生のペナルティと感じるかと問われると、「ちょっと待った!」とうなずけずに異論を唱えたくなる親が多いことが、親ペナルティのプチ炎上騒動からもわかります。
親ペナルティは女性限定!男性にはないという内閣府の幸福度調査
2013年に内閣府が発表した「子どもを持つ若年層を対象とした幸福度に関する研究」によると、子育てをしていない同年代の女性に比べて子育てをしている20代~30代の女性は、現在の幸福感、生活満足度、5年後の幸福感の全てにおいて低い傾向でした。
ところが男性の場合は、子供の有無にかかわらず親ペナルティが存在せず、幸福度には大きな差がないという結果となりました。
この資料では親ペナルティが子供を持った女性だけに生じる原因として、母親への仕事と育児の両立に対する周りの理解や支援が依然として乏しいことなどが挙げられています。
確かにたった一人で育児や家事を行うワンオペ育児を経験したことがある女性は、日本国内に現在過去を問わず沢山います。
仕事が忙しいなどのやむを得ない事情があれば納得できますが、残念ながら日本国内には妻にワンオペ育児を平気でさせるブラック夫がいます。
他にも2015年にNHK「あさイチ」で特集されたガキ(子供)のように家の中で家事を何もしないガキ夫も実在します
実際に子供を保育園に預けて自己実現のために働くことに対して、舅姑やママ友などの周囲の人から「まだ小さいのに保育園なんてかわいそう」と言われた体験を持つ先輩ママもいます。
ただしこの研究の回答者は結婚期間を考慮して選ばれていませんので、多くの夫婦が新婚である可能性も高く、まだまだ夫婦間で話し合いや家族との協力体制が整っていない可能性があります。
また子供のいない回答者についても、40代以上の老いを感じ始める年代の夫婦の回答は含まれていませんので、そうした点を考慮すると、男性女性共に限定された条件内での調査結果だと冷静に捉える必要があります。
高収入なら親ペナルティはない?羨ましがれない共働きママの意外な事実
2013年の内閣府の調査では、誰もが予想するように世帯収入が高い女性の方が低い女性よりも幸福度が高いという結果になりました。ところが親ペナルティについては、世帯年収が上がるにつれ大きいという結果になったのです。
GDP上昇と幸福度の関係!幸せはお金で手に入る?
一般的に「収入が高ければ幸福度も高い」と考えられがちですが、実は経済的な豊かさを表すGDP(国内総生産)の上昇と主観的幸福度は必ずしも比例するとは言えません。
人を幸福にする要因は1つではなく、例えば家族関係、経済状況、雇用状況、友人や属するコニュニティ、健康、自由、個人の価値観などがあり、お金だけが幸福を決定する要素ではありません。
つまり高収入世帯となる共働きママやセレブママを「お金があって幸せだろうな」と羨ましがっても、実際には世帯収入の少ない専業主婦ママより幸せを実感できていな高収入のワーママが多いのです。
親ペナルティは母親の子育て支援への満足度と比例している
母親に幸福感や生活満足度に関して質問をしたところ、満足のいく子育て支援を受けている母親は、子供がいない女性と同じぐらいの幸福感や生活満足感が得られていました。つまり親ペナルティはなく、逆に子育て支援に満足していない母親の幸福度は低いという結果が明らかになったのです。
子育て支援に母親が満足できない具体的な例としては、保育園になかなか入れられず働きに行けない、保育園に入れても出産前のようには働けない、子供の病気で仕事を休むと同僚や上司から辛い仕打ちをされるなど。
つまり子育て支援体制の充実が母親の幸福度に大きく関係しているのに、多くの働く母親は子育て支援に対して満足できず、これが親ペナルティの一因になっているのです。
子育て支援の充実こそが親ペナルティをなくすカギの一つだということを夫婦で理解し、使える子育て支援は積極的に受けることで母親の親ペナルティを軽減していきましょう。
親ペナルティはアメリカが最も高い!?
政府の子育て支援が乏しいためアメリカは親ペナルティが高く、日本もこれに近い状況と言われています。一方子育て支援が充実しているスウェーデンでは、母親の就業の有無に関わらず子供が保育園にはいることができ、12歳未満の子供1人につき60日の介護休暇がもらえ、90%の父親が育児休業を取得します。
国連の世界幸福度ランキング2018で日本は54位でしたが、スウェーデンは9位。23位だったフランスも日本に比べて共働きの母親が働きやすい環境が国によって整えられています。
40代高齢育児は親ペナルティが大きい?精神的には余裕あり
「親になる=ペナルティ」「共働きママ=幸福度が低い」と言い切れないように、「40代高齢育児=親ペナルティが大きい」とは言えません。
確かに国内で20~30代の限られた人を対象に行った調査では共働き女性の幸福度が下がっていましたが、同じ親でも人それぞれに異なりますし、そもそもこの調査に高齢育児を行っている40代以上の夫婦は含まれていません。
もちろん子育てが遅くなることで40代の女性が体力的に大きな負担を抱えるのは事実ですが、マーミーで独自に集めた高齢ママの体験談でも、高齢ママ達が高齢出産だからこそのメリットについて語ってくれています。
本人の性格や価値観、これまでの人生での経験値など親となって感じる幸福度に関係してきますし、子供に手のかかる時期と思春期や子供が自立してからでは同じ人でも親ペナルティは変わります。
子育ては確かに心身共に親になる前よりも大変なことが多いです。けれど子供と社会に向き合い続けることで、親にならなければ恐らく知ることのかなった様々なことに気づけるチャンスがたっぷりあり、親ペナルティを感じない40代高齢育児経験者も多いのです。
子育て4コマ漫画:親ペナルティ!?子供を産むと幸福度が下がるって本当?
さくさんの4コマ漫画にもあるように、子供は大好きなママの幸福度が下がっている親ペナルティ状態が続くようだと、不安になり子供時代を幸せに過ごすことが困難になります。
もちろん母親側にとっても子供の不安そうな様子や不安定な様子を目の当たりにすることで、「これって愛情不足が原因で子供が出しているサイン?」と子育てへの不安を感じやすくなり、さらに幸福度が下がる恐れがあります。
子供の言葉に耳を傾けて!親ペナルティ解消に役立つ「共育」
国による子育て支援制度の改善は私達が直ぐにどうこうできることではありませんが、考え方を変えることで子育ての負担を喜びや感謝に変えて幸福度を高めることは可能です。
共育とは親と子が共に学び合うという意味。親が一方的に与えるばかりという従来の考え方から離れ、親も子供から学ばせてもらうという共育の考え方を取り入れることで、親ペナルティを軽減している人達はいます。
「子育ては親育て」という言葉がありますが、苦しみに立ち向かいつつ子供に寄り添うことで、親も沢山の失敗や後悔を重ねながら、自分の浅はかさや視野の狭さ、思いやりのなさや頑固さなどに気づくことができます。共育の意識をもって子供の言葉を軽視しなければ、子供心が親に気づかせてくれること、人生の収穫はとても多いのです。
「子供にはしがらみや常識がないからこそ、幸福になるために本当に大切なことが見えているのかもしれない」という謙虚さを持って子供に向き合ってみてください。
例えば赤ちゃんや小さな子供は不快な時に大声で泣き叫びますが、あなたは自分が不幸だと思うほど今の生活に追い詰められた時、子供のように全身全霊で苦痛を解消するための具体的な行動をしていますか?
身動きがとれなくなって追い詰められてしまった時は、「助けて!」と周囲に子供のように助けを求めることも大切です。
親ペナルティの大きさは固定観念に捕らわれず、今自分自身が幸せになれる行動をするか否かでも変わってきますが、このような基本的だけれど大人になると意外とできない大切なことを、泣いて助けを求めながら身をもって親に教えてくれている存在が子供です。
頭ではわかっていても我慢ばかりしてしまう人は、親ペナルティの本来の意味を思い出し、時には子供に習って助けを求める共育に取り組むことで、自分の人生の幸福度を下げずに笑って暮らせる子育てライフに役立てましょう。