我が家も機能不全家族?チェックに当てはまったら即対処しよう
頑張っているつもりなのに、気持ちに余裕がなくて夫や子供に手をかけてあげられない。なぜか子供の気持ちに共感することができない。家族と一緒に生活することや子供を育てていくことは難しいことの連続です。
そんなつらさが積み重なってしまうと、本来の家族の持つ役割を果たせない「機能不全家族」になってしまう可能性があります。
こちらでは機能不全家族の実態や家族に与える悪影響について解説しながら、「うちも機能不全家族かも」と不安になったパパやママに試して欲しい機能不全家族の状態を改善するためのヒントや傷ついた子供の治療法などについてご紹介していきます。
「機能不全家族」ってどんな家族?
家族の在り方は時代とともに大きく変化していますが、その中で最近になってクローズアップされてきたのが、家族が壊れる決定打はないものの、家族の関係が正しく機能しない「機能不全家族」の存在です。
「家族と仲良く幸せに暮らしたい」という願いは家庭を持つ大人や子供の誰もが思うことなのですが、どうしてうまくいかないのでしょう?まずは、機能不全家族としてよく挙げられる特徴を見ていきましょう。
機能不全家族の特徴
ここまで読み進める中で「うちもきっと機能不全家族だ」「機能不全家族だったらどうしよう」と不安を感じている人は多いでしょう。けれど近年のライフスタイルの多様化なども要因となり、実は機能不全家族の特徴が一つも当てはまらない家庭の方が少ないほど。
まずは機能不全家族の特徴としてよく取り上げられる例を見てみましょう。
- 親から兄弟姉妹や他人と比較される
- 親が病弱
- 親が留守にすることが多い
- 親子の立場が逆転している
- 夫婦仲が上手くいっていない
- 家族間の喧嘩が絶えない
- すぐ怒りだす
- 自分のことばかりで家族への愛情がない
- 家庭内に虐待がある
- 親の過保護や過干渉
- 母親が主導権を握り、父親が従う教育をしている
- 家にいると批判されることが多い
- お金、地位、名誉、学歴、仕事を重視している
- 人目を気にして表面上は良い家族を取り繕っている
- 家族からの期待が大き過ぎて重荷に感じる
- 子供のペット化や甘やかしがある
- 嫁姑問題がある など
これらの特徴を見て「あれ?」と思った人もいるでしょう。家族関係がうまくいっていないと親子の仲も悪いといったイメージがありますが、親が子供に対して過剰な愛情を注ぎすぎてしまう機能不全家族も多いのです。親の子供に対する依存や価値観の押し付けは正常な家族関係を崩してしまいます。
本人たちは気が付かない?
うちの隣に住む家族は、機能不全家族です。夫婦喧嘩や兄弟喧嘩はしょっちゅうで、夏場に窓を開けていると隣家の怒鳴り声が聞こえてきて困ってしまいます。
中学生の年子の兄弟がいるのですが、奥さんも旦那さんも成績の良い弟さんの方ばかり可愛がっていて、お兄ちゃんの方はいつも元気がなくて、家族全体がおかしな感じなんです。
そのくせ奥さんと話をすると旦那さんや子供の自慢話ばかりで、いかにも表面上取り繕って「良い家族なんです」のアピールをしていてびっくりします。
機能不全家族になる社会的な要因
一昔前の「家族」というと、両親や子供だけでなくおじいちゃんやおばあちゃんなどの親族とも同居して、何世代もの人間が共同で生活をする場。家族が多いと人間関係のわずらわしさはありますが、子育ての方法を経験者に身近で教えてもらえたり、家事や子育てを助け合えたりする良い面もありました。
ですがこういった古き良き家族の形態は経済成長によって崩壊し、現代では両親と子供だけの核家族が増え続けています。また、離婚により両親のどちらかがシングルで子供を育てる家庭の増加や、再婚により互いの連れ子と共に暮らすステップファミリーが増えてきていることも、家族関係を希薄にさせて機能不全家族を作る一因と考えられています。
さらに、生活の困窮や単身赴任もこの問題に拍車をかける要因。長引く不況で子供を育てる家庭のパパやママは生活のために忙しく、しかも子育てに協力してくれる身近な人はいません。ストレスによる体調不良やワンオペ育児など、多くのパパやママが不安な思いをしながら子育てをしていて、幸せな家庭を築くことが困難な状況に見舞われています。
いつの間にか家族がバラバラの機能不全家族に
私は夫婦共働きで中学1年生の息子を育てている父親です。一昨年から仕事の都合で単身赴任をしており、まとまった休みがなければなかなか家に帰れない生活をしていたのですが、ふと気がついたら子供がひどく反抗的になっていて困っています。
後になって知ったのですが、妻は私が単身赴任になったことで仕事の量を増やしたらしく、子供だけで食事を摂ることも多かったようです。不思議と妻と息子は異常なほど仲が良いのですが、いざ私と妻、私と息子と一対一になると関係がギクシャクしてしまい、ついつい口論になってしまいます。昔は家族3人で楽しく過ごしていたのですが。
単身赴任中に定期的に電話連絡は取り合っていたのですが、私は妻がしっかり家庭を守っているのだと思い込んでいました。いつの間に家族の心が離れてしまったのかと思うと、ショックです。
機能不全家族がもたらす悪影響
私達大人は仕事で疲れ、家に帰って疲れを癒す日々を過ごしています。子供がいれば賑やかで手間もかかるけれど、家族でおしゃべりをすれば楽しいし、一緒に食事を摂れば美味しさも倍増して「また明日も頑張ろう!」という気力が湧いてきますが、それが突然なくなってしまったらどうなるでしょう?
家はあって帰ることはできるのに帰っても暖かい雰囲気はなく、家にいれば疲れが溜っていくばかり。
こうした状態はとても辛い状態ですが、その辛さを一人で抱え込んでしまうと精神的に不安定になってしまったり、うつ病などの心的疾患を発症する要因になったりもします。
それだけでなく、抱え込んだつらさのはけ口を求めて家族に対して暴言を吐いたり、粗暴な行動を起こしてしまったり、家族にとって取り返しのつかない事態に進展するリスクが極めて高いのです。
機能不全家族の子供が受ける影響
- 祖父母などと接してできる人格形成ができない
- 自立できない
- 社会性が育ちにくい
- 自己肯定感を獲得できない
- コニュニケーション能力に問題が生じる
- いい子症候群やうつ病など心の不調を起こす
- 学校生活や勉強に集中できない
- 非行や家庭内暴力、登校拒否、自傷行為
- 引きこもりやニート
子供の体を大きくするためにバランスの良い食事が必要なように、子供の情緒や健全な心を育てるためにはタップリの愛情と安心できる健全な環境が必要です。特に小さな子供の行動範囲は狭いため、愛情のほとんどは親や家族からしか受け取れません。
大事な幼少期を機能不全家族の一員として過ごすことで、子供は成長に必要な愛情を充分に受け取れなくなる恐れがあります。そのため他人を思いやる心や周りとコミュニケーションをとる能力が養われなかったり、自分自身を愛せず自己肯定感を得られないまま大人になったりすることなどによる弊害が指摘されています。
また機能不全家族の一員として育つことで、自らが持つ能力を伸ばして幸せな生活を送ることが困難になるだけでなく、母親の依存に娘が苦しんで心身の体調を崩したり、母親との共依存関係によって自分の家庭を壊してしまったり、家庭本来の役割が分からずパートナーや子供に向き合えなくなるリスクもあります。
そして、知らぬ間に新しい機能不全家族を作りだす負の連鎖を引き起こしてしまうこともあるのです。
自分の経験から機能不全家族になってしまった
小学校1年生の男の子と、5歳になる女の子のママです。私は専業主婦なのですが、小さな子供のいる家庭は何かと忙しく、なかなか気持ちに余裕がもてません。小学校に入った長男は宿題をしなかったり忘れ物が多かったりで、何かと手がかかり、ついつい子供をきつい言葉でしかってしまいます。そんな私を主人は「完璧を求めすぎだよ」というのですが、そもそも私は子供の接し方もよくわからないのです。
私の父はとても厳しい人で、小さな頃から家のなかで騒ごうものなら雷が落ちましたし、テストで悪い点を取ればお説教を1時間続けるなど、私は常に緊張しながら子供時代を過ごしました。自分が子供を持ったら子供には優しく接しようと思ってきたのですが、いざ自分の子供と向き合うと、どうしていいのか、何を言っていいのかわからなくなってしまうんですね。そんな私に息子は最近とても反抗的で、もうどうしたらいいのかわかりません…。
あなたの家庭は?機能不全家族チェック
子供のためを思って厳しく育てても、機能不全家族になっていたために子供の将来や孫まで苦しめてしまうのでは、本末転倒です。まずはあなたや夫が機能不全家族ではないか、20の質問項目のうちの当てはまる箇所にチェックしてみましょう。
あなたのYesの数は0個です。
これらのチェック項目は現代の生活においてはやむを得ないといった面もありますし、反抗期など子供の年齢によっては家族としての役割を果たしているからこそ当てはまる項目もあります。また親の病気や金銭的な苦境があっても、親の対応によって子供がそうした経験を人間形成に役立てることができたケースもあります。
けれど当てはまる項目が多ければ多いほど、機能不全家族に陥るリスクも高まりますので、この結果から自分たちの生活を振り返りながら、あなたや家族が本来の役割が果たしているのかを冷静に見つめ直すことが大切です。
本来の家族の役割って何だろう?
内閣府が平成25年行った「家族と地域における子育てに関する意識調査」によると、家族の役割として重要だと思うもののトップは「生活面でお互いに協力し助け合う」で51.0%でした。
この調査の興味深い点は、結果には男女差があることです。
例えば「親の世話をする」は男女でほぼ同じポイントであるのに、「経済的に支え合う」という項目は男性が女性を10ポイント以上も上回り、逆に「喜びや苦労を分かち合う」は女性が男性を10ポイント以上も上回っていて、夫婦間の家族に求める役割の違いが見えてきます。
家族の在り方は人それぞれ違い時代によって違いがありますが、「家族が帰る場所であり、心も体もくつろげる場所である」という役割はかわりません。回答項目として挙げられているものは、全て家族の役割として大切なものですので、今の自分の家族の在り方や子育てに自信が持てない人は、こうした結果をもとに夫婦や家族で話しをする機会を作り、家族一人一人への理解を深めましょう。
また子供がいる場合、家庭は成長の場の役割も果たします。子供を養い、心を育て、生きていくために必要な知識やスキルを伝えていくのも家族です。子供が自分の真似をして「大きくなったら、こんな家庭を作りたい」と思ってくれるような家族を目指しましょう。
家族の機能回復に役立つ7つの方法
もし今の自分達家族が機能不全家族だと思ったら、嘆いている暇はありません。子供は刻一刻と成長していますので、大切な一日一日を少しでも有意義に過ごせるように、次の7つの方法を実践してみましょう。
1家族の役割を決め付けない
家族はありのままの姿を受け入れてもらえる唯一の存在です。ところが家族の役割を決めつけてしまうと、相手や自分自身に不満を持ったり重荷を背負わせてしまったりすることがあります。
役割とは本来「しなければならないもの」ではなく「したいもの」であるべきです。安らげるべき家庭で嫌々しなければならないことが増えてしまうと、次第に家族に息苦しさを感じるようになってしまいます。
家族が自主的に役割を行えるように、役割を決めつけて家族や自分自身を責めることはやめ、得意なことを役割に分担したり、できる人ができることしたりと家族で協力しましょう。
2家事は家族で分担する
余裕がなくなってしまう一因には、生活のための忙しさがあります。手間も時間もかかる家事は一人で負担せず、家族みんなで共有しましょう。朝新聞をとってくる、玄関の靴を揃えるなど、小さな子供でも何らかの役割を担うことは子供の自立に不可欠な自己有用感を高め、家族であるという意識や絆を深める効果があります。
3子供を家族に縛り付けない
「子供は可愛くかけがえのない自分自身の分身」と思う親が多いのですが、子供は親とは別の個人です。子供の人権を尊重し、子供が健全な成長を遂げられる環境にあるかを見つめ直しましょう。
例えば、子供にばかり家事を負担させたり、親の病気や価値観の押し付けにより家庭に閉じ込めたり人間関係や行動を限定したりする親の過干渉や束縛がないかです。子供は親の言うことを何でも聞くべきと思っているママ、子供の友達が嫌いなママ、子供に失敗させたくないママ、子供の親離れが寂しいママは特に注意しましょう。
子供は自立するために友達付き合いなどを通して外の社会から様々なことを学ぶ必要があり、人格形成を家庭の内だけで行うことは出ません。ですから年齢と共に少しずつ外の世界に目を向け、友達付き合いなどをきっかけに自立へのトレーニングを始めるための欲求が高まります。それが自我を確立していく自然な流れです。
自分の気持ちや価値観ばかりを優先して子供の時間や行動を束縛している人は、機能不全を起こさないように家族の役割や家庭の在り方について学びましょう。
4本などを参考にしてみる
不安なことや困ったことを克服するためには、本などを参考に専門家や同じような体験をした人の話を聞いてみるのも良い手です。家族の問題は極めてプライベートで誰にも相談できないことが多いのですが、本などで情報を集めるのであれば気持ちも楽。
同じような不安を抱えるのは自分だけではないということを知ることもできれば、問題を前向きに解決していこうという勇気も湧いてきます。
機能不全家族
著者:西尾 和美
講談社
724円 + 税
日本の家庭の80%が該当するとも言われている「機能不全家族」を、実際の事例を交えながらわかりやすく解説しています。
夫婦がお互いにどう向き合うか、子供へはどんな接し方をすればいいのかも詳しく解説していますので、家族関係がうまくいかずに悩んでいるときに参考になる本です。
http://bookclub.kodansha.co.jp/
5挨拶はかかさない
家族と上手くコミュニケーションがとれない状態であれば、まずは日々の挨拶を交わすことから始めましょう。挨拶は会話を始めるきっかけにもなりますし、自分の近況を伝えて相手のことを思いやる良い訓練にもなります。
初めのうちは挨拶が上手く返ってこなくても、毎日の習慣にしていくことで、次第に会話が増えてくる効果がありますので、結果を焦らずに継続しましょう。
6頑張っている自分を褒める
頑張ってもなかなか家族の関係がよくならず「子供のことを考えてあげられないダメな母親」と自分を責めてしまう自信のないママは多いのですが、自分を追い詰めてしまっても誰も幸せにはなれません。
既に努力しているのですから結果だけを見るのではなくて、家族を良くしようと悩み努力している自分自身をもっと認めて心の負担を軽くしていきましょう。
7迷ったら未来のことを考える
家族の関係が機能不全に陥るのは、家族の置かれた環境や親の育ち方などさまざまなものが影響を与えていますので「何とかしよう」と思ってもすぐに改善できるものではありません。近くばかりを見ていると「まだ改善されない」と失望してやる気まで失ってしまうので、将来的に改善できることをイメージし、気長にとらえていきましょう。
子供の心の傷を回復させる方法
機能不全家族の関係は努力によって改善することができますが、機能不全家族の一員として育った子供には心の傷は残ってしまうことがあります。家族仲を修復することだけでなく、子供自身が将来自分の家族を作って幸せになることを願えるように、子供の心の傷を回復させるケアもあわせて考えていきましょう。
1子供のありのままを受け入れる
機能不全家族の一員として育った子供は必要な時に家族の愛情を実感できずに育っているため、コミュニケーションが苦手で周りにうまく溶け込むことができなくなりがちです。自分の意思を尊重されないことや否定されることに特に敏感になっていませんか?そのような子供にはありのままの姿を受け入れることで心の傷を回復させてあげましょう。
子供は心の内を家族に話すことが難しい状態になっているかもしれませんが、もし話し出したらしっかり耳を傾けてとことんまで子供の話を聞いき、子供の気持ちに寄り添ってあげましょう。
2子供の居場所を作る
家庭は本来、家族の誰もが安らげる場所です。ところがコミュニケーションが十分に取れない機能不全家族の仲で育った子供は、自分の居場所を家庭に見出すことができない状態になってしまうことがあります。
子供に家庭での居場所を作るためには、積極的に子供に家族としての役割を持たせてあげるのが効果的です。些細なことでもお手伝いをさせ「ありがとう。助かったわ」と感謝の気持ちを伝えることで、「家族の役に立っている」と自分が家族の一員であることをしっかり自覚させることができますし、将来的に自立するためのスキルも養うこともできます。
3子供の自立を認める
健やかに成長した子供はいずれ親元を離れて一人で生活をするようになりますが、機能不全家庭で育った子供は生きるための能力が欠けてしまったり、親に依存したりして自立ができない傾向があります。
将来的に子供と良い関係を気付いていきたいのなら、子供の巣立ちを妨害する過干渉・過保護・依存の言動はやめましょう。
4子供に理想を押し付けるのはやめる
家族の役割を正しく理解していないと親は子供を自分の所有物と誤解してしまいがちですが、子供は親とは別の意思のある人間です。正常な家族同士の信頼は、お互いの意思を尊重することで生まれます。子供に自分の理想をしつけたり、自分の思い通りに動かしたりするのは止め、子供が自由に将来を選ぶチャンスを与えてあげましょう。
5ストレスのコントロール方法を教える
機能不全家族の中で育ち周りとのコミュニケーションが上手くとれずに自信が持てなくなってしまった子供は、とても不安な思いをして生活をしています。時にはストレスが溜って家庭内で爆発してしまうこともありますので、ストレスの解消方法を見つけてあげましょう。
スポーツでもカラオケでも子供に負担がかからない範囲で子供を家庭の外に連れ出し、自分でストレスをコントロールする方法を教えていけるといいですね。
ゲームやスマホばかりはストレス発散!?
子供のゲームやスマホ依存は親にとってとても心配なことですが、実はゲームやスマホが子供のストレス発散手段になっていることも少なくありません。「少しは勉強しなさい!」などと頭ごなしに否定して力ずくで没収するのではなく、子供の気持ちに寄り添うことで子供との距離を少しずつ縮め、徐々に別の方法でストレスを発散できるように促すなど本人の意思を無視しない対応が大切です。
6必要であれば専門家の治療も検討する
機能不全家族で育ったことで子供の心が大きな傷を負っている場合には、児童心理に詳しい専門家の治療を受けた方が回復は早いケースもあります。子供のことを第一に考えて必要に応じて受診も前向きに検討していきたいですね。